かしこい人の、おくりもの
「冬の童話祭2020」参加作品です。
「ねえ、『けんじゃのおくりもの』っておはなし、知ってる?」
「もちろん! きょねん、お姉ちゃんとおしばいでみたんだ」
「わたしは、きのう、お父さんにきいたんだ。ねえ……」
ごそごそ
「これ、うけとってくれる? クリスマスプレゼントだよ」
「これって……やきゅうボール? ありがとう。でも、ぼく……」
「うん、しってる。いま、ゆびをけがしてるんだよね。だけど、これ、ずっとまえに、かってあったんだ。その……」
「おこづかいを、もらった日?」
「……えへへ。しっぱいしちゃった」
「ううん、けがはすぐなおるから、気にしないで。でも、そっか、だから……」
「わたし、かしこい?」
「えー? そういうおはなしじゃ、なかったとおもうよ。それよりも……」
がさがさ
「はい。きみへの、クリスマスプレゼント」
「わあ……! これって、『シュシュ』っていうんだよね」
「あ、しってたんだ。お姉ちゃんにおしえてもらって、いっしょに作ったんだ」
「これ、てづくりなの!? すごいすごい! あれ、でも、ゆびのけが……」
「……だいじょうぶ、だったから」
「プレゼント、ありがとう。でも、わたし、かしこくなかった……」
「そんなことないよ。ねえ、いま、つけてみる?」
「うん!」
くるくるっ
ピタッ
「ぴったりだよ! ほんとうに……ありが、とう……」
ぐすっ
「わあああ、なかないで!」
「でも、わたし……」
「……えっとね、ぼくも、しっぱいしてるんだ。その、おこづかい、はやくつかっちゃって……」
「だから、てづくり?」
「……えへへ」
「なーんだ、かしこくないね!」
「だから、そういうおはなしじゃ……。でも、ぼくはプレゼント、うれしかったよ!」
「わたしも!」
すたすた
「ふたりとも、そろそろケーキを食べましょう。あら、もうプレゼントを交換したの?」
「うん。でも、しっぱい、しちゃって」
「失敗?」
かくかくしかじか
「あら、失敗なんてしていないわ。ふたりとも、嬉しかったのでしょう?」
「「うん!!」」
「それが一番なのよ。さ、手を洗ってらっしゃい。おいしいケーキが待ってるわよ」
「「はーい!!」」