プロローグ
宮原旭という女子高生が、甲子園目指して色々面倒ごとをクリアして野球を頑張るお話です。
「嫌だね、面倒だ」
宮原旭は、頭を下げたまま相手の言葉を聞き、そして耳を疑った。
まさか、仮にも教職についている人間からこんな言葉を聞くとは思っていなかったからだ。
輝かしい高校入学初日に女子野球部の新設を担任に願い出て、監督候補の教師を紹介してもらうまでは良かった。
本当にそこまでは良かったのだ、ただただ相手が悪かったのだ。
返答した教師、神谷真は戸惑う旭を少々不愉快そうに見つめた。そして
「用事は済んだか?では早々に帰るといいんじゃないか」
静かに告げる。
旭は監督就任をお願いするためのお辞儀をしたまま、顔を上げることが出来なかった。
今まで明るく、前向きを信条に困難な事もあったが必ず元気なふりをして生きてきたつもりだ。
その態度は周囲は好意的に受け止められ、良い結果に繋がることが多かった。
だが目の前の男性教師は違う。
「野球部を作り甲子園に行きたいんです。ぜひ顧問になってください、お願いします!」
と、頭を下げた結果がこうなったのだ。
しばらく動けなかった旭だが、いつまでも頭を下げていても仕方がないと思った。
時間を空けてくれたことに対する礼でも言って立ち去るしかないだろうとようやく考えをまとめる。
顔を上げ、口を開こうとした旭は驚いた。
相手は旭をまっすぐに見つめていたのだ。
自分への関心をすでになくし既に目の前の仕事にとりかかっているか、形式上こっちを向いているか・・・・・・まぁそんな態度であろうと思っていた。
対応はひどいものではあったが、これが教師、大人というものだろうか・・・・・・・。
「いや、違う」そう思った。
なぜそう思ったのかは自分でもわからない。
不愉快そうなその視線を好意的に取れるほど、旭は馬鹿ではない。
ただの初対面の人間への違和感でしかないのかもしれない。
その視線の違和感に引っ掛かりを感じたまま、旭は話を聞いてもらった礼を告げ、職員室を後にした。




