俺、赤らめます。
-15話 俺、赤らめます。-
「・・・やらかした・・・!」
大々的にあんな事を言ってしまったけど、よく考えたら俺、非難の対象に自らなりにいったようなものじゃねぇかよ!
ごろつきはきっと今ものびてるだろう。だが、起きたときにどうなるか・・・。
考えただけでもぞっとする。家燃やされたりしないよな・・・。
あーもーどうしよう!どうすればいいんだろう!
ミルに酷いことを言ったごろつきのせいで俺は憤慨して我を忘れていた。が、家に帰り冷静になると俺はとんでもないことをしていたことに気がつき、前述のようにあたふたしている訳だ。
でもあのままミルが・・・なんて考えたらいてもたっても居られなくなったのは致し方ない。
そして、そのミルはと言うと。
「っ・・・」
顔を真っ赤に染め上げ、俺がミルを見やると慌てたようにそっぽを向いてしまうのだが、どうしたものか。
「おいミル、お前どうしたんだ?」
この現状に更にミルが状態異常となると厳しいんだが?
「な、何でもないのっ」
頭から幻覚で湯気が見えるほど更に顔真っ赤に熱くし、俯きながら手で覆っているミル。
「何でもないってことは無いだろそれ・・・てかどうしよ!」
† † † †
「そ、その、シュウ、さっきはたすけてくれて、ありがとうっ」
あれから数分たった今、尚も顔を赤く染めているミルがそう口にする。お前、そろそろ顔の血管切れるぞ。
「ん?あぁ、ごろつきのやつか。いいんだよ。俺も腹が立ったし、ミルに気安く触るのも腹が立った。さらには名前を呼ぶなんて言語道断!腹が立った。だからミルの代わりに俺がぶん殴っただけなんだよ、感謝なんていらないぞ。ストレス発散にもなった。でも今はそのせいで悩まされてる・・・!」
あああー!と頭を抱える俺。
「そ、それのことだけど、そのことじゃなくてっ、えと、そのっ・・・うぅ」
人差し指を遊ばせながら何か困ってる様子のミル。どうしたってんだほんと。
「こ、このことはいつかちゃんと言葉にして伝えるっ。だ、だから、その時まで待っててっ」
そう言って話を半ば強引に終わらせようとするミル。これは何かあるな?
「なんだよ、なんか逆に気になるな」
「い、いいから、その時まで待ってっ」
「ますます気になるじゃねーか。ほら、教え」
「い・い・か・らっ」
頬を朱に染めながらも可愛らしく睨まれる。
「わ、わかったよ」
頬を膨らませてふいっとそっぽを向くミル。そっぽ向くの好きだなお前は。
「ってかどうしよー!」
† † † †
やってきた翌日。きて欲しく無かった翌日。寝ている間に殺されないかと心配になりすぎて全然眠れなかった。幸い誰も来なかったから安心だ・・・。
寝よ。
もう朝だから殺しに来るなんて大胆な真似する奴なんか居ないだろうしな。
安心して寝れるって思えたらなんだか眠たくなってきたな。よし、寝る。
あー、寝る。
段々と意識が・・・。あぁ・・・。
・・・。
「シュウ、起きてっ」
忌々しい。
「何だってんだよ、今から寝ようと思ってたのによ・・・」
いい感じに気持ち良くなってきた時に起こされるほど不快なものはないぞこの。あー忌々しい。
「お腹減ったの」
「・・・なんか勝手に食べろよ・・・ふわぁ」
「いいから起きるっ」
「まだ朝も早いだろうが・・・。さっきようやく日が昇ったくらいだったろ。まだ朝じゃん。寝かせろ」
そう言うとミルは驚いた顔で一言。
「昼じゃん」
「・・・嘘だ。もうその手には乗らないぞ」
「むぅ、本当だもん。私が部屋に入った時シュウ、いびきかいてた」
「まじで?」
「まじ」
「・・・ごめんなさい」
気持ちよくなってた時既に寝てたようです。
「それで、どうしようか」
「何が」
「これからだよ!」
「どういうこと」
「俺とお前の今後!このままだとダメだろ!」
昨日ごろつきをぶん殴ったから外には出づらい。一週間くらいは引きこもりたいがそれでは意味がない。うーむ、どうしたものか。
俺はそういう意味でミルに持ち掛けたのだが、ミルは顔を真っ赤にして
「こ、こんごっ!?へ、へと、わ、わた、私はシュウと一緒ならそれで・・・で、でも欲張った方がいいのかなっ、でも、わたしは、うーん、うーん・・・」
プスプスと頭から湯気を出している。なんだか噛み合ってない気がする・・・?
「どうしようか・・・。いっそのこと引っ越すか・・・?」
どっちにしろここには居づらくなるだろうしな・・・。引っ越すのが得策か?でも、逃げたように思われるのは頂けないな。どうしたものか・・・。
そういう意味で言ったのだが・・・。
「ひ、ひっこし・・・っ!わ、私はどこでも付いていくけどっ、できれば静かなばしょで、3人で・・・っ」
いつになくキャッキャと興奮してるミル。やっぱり噛み合ってないな。
「さっきからなに照れたりはしゃいだりしてるんだよ?」
「い、言わせないでっ。いじわるっ」
尚も顔を染めとろけ顔である。昨日もこんな感じだったな。なんなんだよ本当に。
「何が楽しいんだよ。今から殺されるかもしれないから逃げるか、それとも普通にここで暮らして、周りが俺らを認めてくれるまで待つか、どうしようか悩んでるのによ」
・・・ん?時がとまったような静けさが突如として訪れたんだが、どうした?
「おいどうした、お前は静かな場所に逃げたいって話だったか?でも、3人って誰だよ。セインは頭数に入れないでくれよ?あいつはあれで騎士団の団長だからな」
いつの間にミルがセインと仲良くなったのかは知らないけど、頭数に入れる仲良いやつなんてセインくらいしか居ないしな。他に思いつかないだけでミルが仲良くなった奴がいるのか?まぁ、それはともかく・・・。ん?ミルの目が死んでる?
「・・・バカ」
そう言ってミルは部屋へ帰って行った。
さっきまでの楽しそうな雰囲気は一点、ゴミを見るような顔をしていた。
うーん、女の子って難しいな。
急に罵られた俺はそこで立ち尽くし、どうしたものかと頭を悩ませた。
コンコン。
その、扉を叩く音が聞こえるまでは。