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俺、再戦します。前編

-13話 俺、再戦します。前編-


-メイフィスト・南口-

朝、トランジション・ストーンでメイフィストまで帰ってきた俺とミル、そして変装した騎士団御一行。

なぜ変装しているかというと、セインは王都でも名の通った細剣使いで、俺達と同行していることがわかれば今回の仕返し大作戦は失敗してしまうためとのことだ。

セインたちは見事に村人Aのように街へ溶け込んでいる。

「それではシュウ、私達はここらで見守っている。そこらへんのファントムブレイカーへ声を掛け、パーティーを組もうと持ちかけるんだ。その際、“能力名”は必ず言うことだ」

セインはやはり深くは語らず、そのままの成り行きを見届けるようだ。

十中八九断られるだろうが、というよりも・・・。いや、今はセインを信じよう。

「・・・分かった。行ってくる。行くぞ、ミル」

「うん」


    †    †    †    †    †


道具屋の前に鎧やローブを着たファントムブレイカーらしき人影を見つける。人数にして3人だ。ちょうどいい、こいつらにしよう。

「すまない、ちょっといいか?」

そういって話しかけたのは、皮の鎧を纏い、腰にはオノを下げている強面のリーダーっぽい人だ。

「何のようだ?」

「あぁ、俺達、今パーティーを探していてな。できれば入れて欲しいんだ」

そう言うと目が険しくなり、俺、ミルを舐め回すように見る。

そして

「なるほど。見た所装備もしっかりしているし、既にファントムも狩っているのが分かる。よし、良いだろう。入れてやる」

「本当か、それは助かる」

「お前らは攻撃力アップと魔力アップで間違いないな?」

装備を見てそう思ったのだろう、強面リーダーがそう問う。

「いいや?俺の能力は運動神経アップと動体視力アップだ。そしてこっちは一人のみ対象のバフだ。他は何も使えない」

「・・・は?」

口を空けポカンとしている。

「おい、その能力聞いたことあるぞ、確か・・・あ!」

もう一人の男が何か頭の中を探ぐるように、そして素っ頓狂な声を上げる。

「運動神経・・・あぁ!思い出したぞ!『レガリア紛いのシュウ』か!」

強面リーダーが大きな声でそう叫ぶ。

「おいおい、お前、まだ生きてたのか?・・・ふ、聞いたぞ?家も追い出されたらしいな。親に「ゴミのいる場所はない」っていわれて捨てられたんだろ?」

ガハハハと馬鹿笑いする集団。

「なぁリーダー、こいつ無駄にいい装備つけてるっすよ?・・・なぁ、そんなのてめぇには必要ねぇだろ?寄越せよ!ぶぅあっはっはっは!」

何がそんな楽しいのか、馬鹿笑いが止まらないようだ。

「おーい!みんな聞けよ!まだ「ゴミ」がこんな所にいるぞー!」

強面リーダーが大声で周りに呼びかける。すると、なんだなんだと周りに人集りができる。

「おい、あいつ半年以上消えてたレガリア紛いじゃねぇか?」

「ほんとだ!まだ生きてたのかよ。顔もみたくねぇ早く死ねよ」

「顔忘れてたけど、あんなんだったなそういや。アレ、俺のとこにもパーティーにしてくれーって頼みに来たんだぜ?誰があんなゴミいるかってのな」

といった具合に嘲笑され、侮蔑され、軽蔑される。

「なぁ、今更何しにここにきたんだよ?お前の居場所なんてねぇだろ?街に入って来たらゴミが移るだろ?早く消えろよ。てか死ねよ」

強面リーダーの取り巻きの一人がそう辛辣な言葉を並べる。

やはりこうなったか。予想は出来ていた。最近は目立った行動もしていなかったから町を歩いていても気付かれなかったが、パーティーを集めるとこうなってしまうか。

ミルを横目で見やると、涙目で肩をふるふると震わせ、歯を食いしばっている。既に、我慢の限界のようだ。

「ん?おいおい、そこのねぇちゃんはえらいべっぴんじゃねぇかよ」

その言葉に嫌な予感がして、背中がゾクゾクとする。

「ほんとだなぁ、なぁ、そこのねぇちゃんならパーティーに入れてやってもいいぜ?まぁ戦闘では使えねぇんなら、俺達の下のお世話でもしてもらうかな!ガハハハ!」

予感は的中した。俺の事をボロクソ言われるのはもう慣れている。しかしミルに白羽の矢が立つのは許せない。俺はソイツの一言で既に頭の血管は切れていた。

「てめぇふざ」

「これは思った以上だな、シュウ」

我慢の限界に達し、チェーンソーに手をかけようとしていたその時、聞き覚えのある声に振り向く。

「あぁ?誰だテメェ」

強面リーダー、もといごろつきが彼へとガンをつける。

「あぁ、おれは王都マール騎士団のセインだ。シュウの親友であり兄弟だ」

セインが放ったその言葉で回りは一層ざわめく。

「お、王都・・・?な、なんでそんな奴がこんな所に・・・。てかなんでこんなゴミと知り合い何だよ!?」

「おいおい、私の『兄弟』に言ってくれるではないか」

「お、おいセイン、お前いいのかよ」

言うとセインはふっと笑って

「仲間がピンチなんだ、助けないでどうする?」

なんの気負いもせずすらっと言ってのけるセイン。

「・・・くそ、助かったよ」


「ははーん、装備も良くなっていいねぇちゃん連れて歩いてると思ったら、そう言うことか」

ごろつきは尚も俺をからかいたいようだ。

「騎士さまと仲良くなったから権力でも手に入れたのか。ふんっ。ゴミの分際で生意気だなぁ?ただのゴミが権力もったらこうなるのか。はっ!ふざけろ、自分の力で何も出来ないからって騎士団の団長とお仲間ごっこか!いいご身分だな!ゴミがよぉ!」

こいつらはゴミという言葉が好きすぎるんだろうな。それとも語彙がないのか?まあどちらにせよゴミゴミうるさい奴だ。

「ははは、君は本当にそう思っているのか」

セインは相手を小馬鹿にするように言葉を返す。

「あぁ?事実を言って何が悪い!ほらみろ、さっきからこいつら一言も話しちゃいねぇ!俺らに脅えてるんだろうがよ!」

所々でクスクスっと馬鹿にする笑いが聞こえ、凄く居づらい。

「君達と話すほど彼も彼女も暇じゃないだけさ。そして先程から彼らをゴミなどと言っているが、君は彼に勝てるのかい?」

さらに挑発するようにセインは続ける。

「私には君達の方がよほど“ゴミ”に見えるのだがな」

セインは言い放った。

その言葉にごろつきは頭に血を上らせ、今にも殴りかかりそうなほど鼻息を荒くする。

「言ってくれるじゃねぇか王都だかの騎士さまよぉ!あぁ、なら試してやるか?ここでよぉ!」

そういって俺の胸ぐらを荒く掴む。

「君は脳が緩いのかい?こんな所で殴り合いでもしてみろ、すぐに警護の者がやってきて手縄物だぞ?」

「なんだ、逃げてるんだろ?そうなんだろ!ヴゥアッハッハ!これだからゴミはいやなんだよなぁ!」

ごろつきが言った言葉にどっと周りは笑う。

それを黙って聞いた後、そこかしこで嘲笑している野次馬にも聞こえる声でセインは

「彼は明日、闘技場にて『ガルドグリズリー』を一人で倒す!それを見てからゴミだのカスだのと蔑めばいい!彼が負けたのならすぐにでもこの街から去ることを誓おうではないか!しかし、彼が一人でガルドグリズリーを倒したのなら、これまでの扱いを深く反省し、彼に謝罪をするんだ。わかったな!」

そう、宣言した。

「・・・っ」

暫しの沈黙が道具屋前の一角を支配する。そして

「なに馬鹿な事を言ってるんだこの騎士さまはよぉ!ガルドグリズリーを一人で倒す?ふざけろ!そんなことができたなら裸で土下座して街を一周はしってやるぞ!」

ごろつきが言ったその言葉にふざけの顔色一つ見せず

「約束は守るんだ。いいな?」

セインはごろつきへと突きつけた。

その様子に少し怯みながらもごろつきは未だヘラヘラしながらも承諾した。

なるほど。そう言うことか。

セインの言う“仕返し”とは、物理的にやり返すのではなく、精神的に勝てないことを知らしめるということだったのか。

よし、ならやるまでだ。


以前負けた相手、ガルドグリズリーを今度は皆の前で倒すのか。くそ、セインもそんなことならそう伝えてくれれば良かったのに。心の準備がまだできていないじゃないか。


・・・しかしまぁ、こういっちゃあなんだが・・・。


負ける気は、してない。

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