俺、ハブられます。
今まで多少書いてはいましたが投稿するのは今回が初です。読まれた方、感想頂けると有り難いです。出来るだけ毎日投稿するつもりではいますが、一身上の都合で上げれない事があるやもです、ご了承ください。
「いや、まぁ分かってるんだけどね」
「じゃあ働けよ!」
・・・はい。
-1話 俺、ハブられます。-
ガコン!ガコン!ガコン!
朝から騒々しく鉄を殴ってる音が家に響き、頭がいたくなる。
ガコン!ガコン!ガコン!
あぁ、うるせぇうるせぇ。こちとら徹夜しとんじゃ。暫しの休息くらいさせてくれよ。
願い虚しく、その後も鈍く鋭い耳をつんざくような甲高い加工音が響き渡り、それから少しして。
「おい、いつまで寝てんだ、はやく起きないとバールで頭かち割って脳汁出てきた所にハンカチ詰めて家畜を捕る時の匂い袋として活用すんぞ!」
扉の外から父親であるハンスの声が聞こえる。声音からしてかなり憤慨してるなこりゃ。
てか表現がえげつねぇよ。脳汁とかご丁寧に具体例まであげられるとやりかねないとか思うだろ。
「・・・今いく」
我が聖域の部屋からでるとRPGの宿屋みたいな木造の廊下があり、突き当たりにU字階段がある。そこを降りると地面は石造りで、石造りの窯があり、石造りのキッチンがある、言わばダイニングキッチンが待ちかまえている。その奥には親父の作業場がある。これもまた石造りだ。
「おはよう、シュウ」
優しく微笑みながら声を掛けてきたのが母親のミレイユだ。
「・・・ん」
母はキッチンに立ち、なにやら作業している。きっと朝ご飯でも作ってるのだろう。
母の容姿といえば髪の毛は腰上まであり、端正な顔立ちをしており、ここらへんでは美人妻で通っているらしい。髪の色は明るい茶で、小窓から差す日で煌びやかに照らされている。キッチンにて作業している姿はかなり様になっている。
・・・親父はいいや。
「いただきます」
朝から仕事があるという親父の為に簡易的なメニューで済まされてはいるが、美味しいので文句はない。
パンにベーコンに玉子にマーガリン。これだけで他よりも美味くなる。簡易的な料理って素晴らしい。ジャンクフード万歳。
これもまた牛乳と合うから反則だよなぁ。まぁ、朝ご飯は基本的に牛乳が主流だからそれに合うようにはしてるんだろうけど。
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とまあ、俺の身の回りの話だけではなく、俺自身、そしてこの世界の大まかなお話でもしようか。
俺はシュウ、17才で、絶賛ニート。両親共働きで親父はそろそろ還暦を迎える。身長は170くらいだった気がする。誕生日は2月14日。どっかの国じゃあこの日には何か黒い物体を送り、一ヶ月後にもらった人はそれの5倍ほど良いものを与えないと社会的に殺されるという恐ろしい祭典があると聞いた。ここにその文化が無かったことをうれしく思う。彼女はいない。絶賛募集中だよっ!キャピ!
自己紹介で心を苦しくしたから次。世界の紹介。
この世界には[能力]があり、それは産まれてくると同時に発動する。その能力を持って産まれた子供を[能力者]と、そう呼ばれる。男の場合、『攻撃力アップ(大)』や『防御力アップ(大)』になり、女の場合、『スピードアップ(大)』や『魔力アップ(大)』になるのが基本だ。
基本なだけで、他も多くいる。例えば『家事スキルアップ(大)』や『舵スキルアップ(大)』、『鍛治スキルアップ(大)』などがある。
親父も鍛治スキルアップの能力を持っている。
そして街郊外にはファントムと呼ばれる魔物、モンスターがいる。それを討伐するのがレガリアの仕事。しかし、前述したように鍛治スキルや舵スキルなどは戦闘には向かない。そのため、それらの能力を持っている人間は武器を作ったり、海を渡り素材を集めてきたり、宿屋を営んだりと、それぞれで活躍できるように分担されている。
そして攻撃が高いもの、防御が堅いもの、魔力が多いもの、スピードが早いものはファントムを狩る、[魔物狩人]と呼ばれたりする仕事につき、日々平和を守ってるとか言う建前でファントムをストレス発散材にしている。ちゃんとやってる奴もいるけどね、うん。
男の大半は攻撃力と防御力、女の大半は魔力とスピード。これが普通。そして時々鍛治スキルだったり舵スキルだったりするが、それはそれで使える。
だが、これはどうだろう。
『運動神経アップ(大)煌+++ 』
『動体視力アップ(大)狂+++ 』
気付いたかと思うがこれは俺の能力だ。
一見強そうには見える。煌とかついてるし。何かかっこいい。しかし、だ。
ファントムを狩る時は基本4~6人パーティーで倒す。防御力高いヤツがタンクになって魔力高い奴がタンクにバフ。攻撃力高いヤツが相手を殴って魔力高いヤツがスレイヤーにバフ。これ基本。そしてスピード早い奴がファントムのヘイト稼ぎ。これ最高。
では。
さぁ、そこに運動神経がいい奴混じりました!さぁ、どうする!
答.する事がない。
別に攻撃力が高い訳じゃないしタンクになって味方を守ることも出来ない。魔力もねぇからバフ出来ないし足早い訳じゃないからヘイト稼ぎして狙われた途端御臨終ですわ。
一時期俺もファントムを倒したくなった時があった。年齢でいえば14才。アレを発症する時期だ。
よく親父に「み、右手がぁっ!くっ・・・!だ、だめだ、落ち着くんだ我よ!我はその程度では無いはずだっ!くっ、がぁぁ!」とか言ってたわぁ。
まぁそんなときに仲間を募集している、言わば掲示板に行き、パーティーを探した。
しかし、どれも振られた。何故なら、
「この能力って、どこで使うのさ」
そう。使い道が無かったのだ。
前述したが、攻撃力も無ければ防御力も無い。パーティーにいても使えないどころか足手纏いになるだろう。
それでも他に入れてくれるパーティーがあるかもしれないと探したが、既に俺の噂は広がっており、「一般人以下、レガリア紛い」と言う屈辱的なあだ名を付けられ、街からは「いらない子」扱いをうけてしまった。
そして完全に自信を無くし、部屋にこもり、少しの間塞ぎ込んでいた。
少しして外に出るようにはなったが、もう、パーティーを探すことはなかった。
俺は、夢を見る事は出来なくなっていた。
続きものです。次回も見ていただければとおもいます。