1/1
1
ここらじゃ珍しい人だと思う。
少し男っぽくて、優しくて、甘えたくなる雰囲気で、女にしては声低くて、一緒にいるのがとても心地よかった。
高校で初めて会った、別のクラスの女子___梅原悠に恋をしてしまった。
「どうしたん?ねむたいと?」
「まあなー。」
ふわふわ笑う悠。俺はぼーっとしていたみたいだ。
今はデート中だ。正直、外には出たくなかったが、悠と言い争いして負けて出てきた。
珍しく、楽しそうな悠を見れたから、これはこれでいいかも。
とても不思議なやつだった。
情緒不安定のくせに、意地っ張りだった。
あいつは俺に心を開いてなかったと思う。
悲しそうに、寂しそうに笑う姿。たまに見せる、ひどく澄んだ目で探るように見つめる姿。ふわふわとしている姿。眠たそうにしている姿。そんな姿ばかりしか見なかった。
必死に疲れてるのを隠そうとしてたし、泣いた姿も弱音を吐く姿も甘えてくる姿も見ることは無かった。