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君を連れて  作者: 水無月水月
3人目
13/13

空中都市②

「さてと、じゃあ問題はどうやって行くかだな」

「それについてなんだが、俺に任せてくれ。良い方法を考えてあるぜ」

おお。一番やる気なさそうだったおっさんが考えていたとは、意外だ。

「なんだその顔は、俺だってやるときはやるんだよ」

「正直期待してなかったです……」

「お前らなあ」

呆れるようにして煙草ニクをくわえて、火を付けずに片づけた。

「吸わないのか? 」

「ガキには悪影響だ」

んじゃ、お前らのためにやることやってくるわ、と言い残してシロの頭にポンと触れてから行ってしまった。

「いい人ですよね」

「違いない」

「じゃああの人が頑張ってくれてる間に私たちもやりますか」

「そろそろ真面目にしないとな……食う手を止めろ」

恐ろしいほどの視線で抗議されたが知らんぷりだ。

「で、まず聞きたいんだが、お前は戦力になるのか? 」

「なりません。いまは探知されずに済んでますが、私が魔力を使った瞬間に探知されます。それ以前にほぼ前魔力を呪いの軽減に回しているので戦力になるほどの魔法は使えません」

「戦闘は俺一人でしかもお前を守りながらか、骨が折れそうだ」

「私は姿を隠します。なので少しは楽になるかと」

「そうか……探知されない理由は? 向こうもお前を探しているんだろう? 」

「外では羽衣が、ここでは結界がありますし」

肩に重みを感じた、本を読んでいたシロが眠ったみたいだ。構わずに話は続く。

「結界? 俺は何もしていないぞ? 」

「はい? そうだと思ってますが……シロちゃんですし」

「は? 」

今、なんと言った。こいつが、結界?

「気付いてなかったのですか、シロちゃん、結界を張っていますよ。しかも高レベルの」

なんと言ったら良いのか、どんな反応をすれば良いのか。

「最初見たときは驚きましたが、なにせ人を、他人を媒介にここまで強力な結界を張れるなんて」

結界、たしかにその程度なら余裕だろう――正常・・ならば。

「ど……どんな、結界なんだ、詳しく教えてくれ」

「ほんとに分かってなかったんですね。彼女の結界は、敵味方を完全認識して、媒介を中心に取り続けるものです。敵からは攻撃はおろか結界の認識すら許可しない物です。神の領域を作り出すと言われている《神聖結界サクリファイス》の一種だと思われますが……私も実際目にするのは初めてなのでハッキリとは」

「媒介って、誰のことなんだ」

「誰って……貴方でしょう――まさか気付いていなかったのですか? 」

「あ、ああ」

「本人が媒介にされていることも気付かないなんて、どうなっているのでしょう……」

ふむ、とソラが考え始めてしまった。

「考えるのは後にしよう。どちらにせよこいつは動けないし連れて行くわけには行かない」

「そうですね、話が大分逸れました。とりあえず私にはあまり期待しないでください、呪いが落ちた後ならば力になれると思いますが全て終わった後かと思いますし」

「なるほど、なら向こうに着いたとして、どうする? 」

「着いていくと邪魔になると思いますので、私がクロさんの捜し物をしようと思います。どんな物かは分かりませんが、それらしき物を見つければ保護しましょう。クロさんよりは土地勘もあります」

「よし、じゃあそれで行くとしよう。俺はできる限り、ソラの兄と母の場所まで最短で行きたい。地図書けるか」

「半日もあれば、最短の道だけで良いのですよね」

「ああ」

「わかりました。書いておきます」

驚くほど順調に進んでいく。おっさいが居ない方が進むって気の毒だな。

「ならあとは、戦う相手の情報だけだな。全部教えてくれ」

「分かりました」

「よし、なら休憩を挟もう。続きは夕方だ。おっさんが居た方がいいかもしれないし」

「じゃあ、それまで自由時間ですね」

「好きな事して来いよ。シロを一人にするわけにもいかないから俺は留守番してるよ」

「いいんですか?! ありがとうございます! 」

さっと手が出てきた。なんだこの手は。

「なにこれ」

「遊ぶにはお小遣いが欲しいのです」

あれ、たかられてる?目が輝いてるし。

「一緒に来てくれるならいいですが……お留守番なら仕方ありません。お土産を買ってきてやりますよ」

俺の金でな。

「分かった分かった。ったく――」

「おーす。ただいま」

ちょうどおっさんが帰って来た。ナイスタイミング。

「良いところで帰って来た、留守番頼んだ」

「よろしくっす」

ソラも把握したらしい、乗ってきた。

ポカンとしているおっさんをほおってソラと二人で立ち上がる。

「土産くらい買ってきてやるから」

「行ってきまーす」

小遣いをやるくらいなら行った方がましだ。

なんだか騒いでいた気がするが気のせいだろう。聞こえない聞こえない。


「申し訳なかったですかね」

「そんなこと思うんだな」

「むっ! 失敬な! 」

はは、と彼が笑う。

私の頭ほどの高さの筋肉質な肩、分かりにくいですがかなり鍛えられているようです。この体であの子を守ってきたのでしょう……ちょっぴり羨ましいです。

羽衣は使っていませんが、シロちゃんの結界のおかげで楽にさせてもらってます。ありがたや。

それにしてもこの結界、凄いですね。日常生活に支障が出ないように調整されているみたいですね。探知を弾いて、視認は通しています。どうやっているのでしょう?

「どうしましょうか。お昼前ですし、さっきお菓子も食べましたからランチにでもしますか」

「頭おかしいのかお前。矛盾してんぞ」

言われちゃいました。だってお腹空きませんか?

「まあまあー良いじゃないですか――ほらっ! ちょうど人気の喫茶が空いてますよ! 」

「なんで人気とか知ってんだよ……」

背中を押して喫茶の中に押し込みます。

「いらしゃいませー」

丁度空いている時間だったみたいです、お昼や夕方は結構混むのでラッキーでした。

どうしたんでしょう、彼がそわそわしているように見えます。

「どうかしました? 」

このジュース美味しいです。

「どっかのお嬢様と違って一般人だったものでな、こんな所は落ち着かないんだよ」

嫌みを言う元気はあるみたいですね。

「ふーん……」

ちょっと嫌がらせをしてみましょう。

席を立って、彼の隣に座りました。肩が触れる距離です。

ちょっと私も、恥ずかしいですね。乙女としてこれはいけないかもしれませんが……

「なにも、飲まないのですか? 」

声、震えていなかったでしょうか?

「ん? そうだな……折角だから同じ物にするよ」

あっれぇ? 動揺していない?

「すいませーん……これと同じ物を、あと――」

スムーズに注文する姿を見ていると自分だけが動揺しているようで恥ずかしくなってきました。あと腹立ってきました。

開き直って更に密着してすこし体重を預けてみます。

「あっ、お客様、恋人様と同じ物を注文するのでしたら割引をさせていただきます」

私の姿を見たからだろう。女性店員らしく、こんな話題が好きみたいだ。

「はいっ!お願いします」

腕まで組んで、彼がなにか言う前に言ってやった。驚いている彼の表情が楽しい。

「恋人になった覚えはないぞ? 」

「まあまあ堅いこと言わずに、安くなって特じゃないですか」

彼はなんとも言えない顔をしていたが、顔を逸らしたときにちょっと赤くなっていたのを見れただけで充分でした。

相変わらず心臓はうるさかったですが。

次回はちょっとした設定説明回です。

デート回はまた今度

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