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ライアー=ギルティ

 新しい仲間、バシュムと共にとりあえず次に向かう場所を考えていた。

 もしメリナならこのまま巡礼を続けるなんて事はしないだろう。一旦町に戻って助けを求めるだろう。ベルベットも騎士団に戻り報告やら何やらをしなくてはいけないだろうしな。

 向かう所は決まったようだな。


「一旦町に戻るぞ」


「町、かぁ……まぁよいじゃろう」


「わかりました。少し準備をしてくるので少々お待ちを」


 そう言い一礼すると奥の部屋へと入って行ってしまった。

 二人きりになったティアマトと少し喋っていると以外にも話が弾み自然と笑顔になっていたのだろうかからかわれた。だが、契約は結婚の様なモノなのか。重婚になるのではないか?


「これってもしかして浮気か?」


「かっかっか! 不可抗力じゃからのぉ。じゃが、我がこの世に顕現するにはこうするしかないでの。嫌じゃと思おうが我慢してくれ」


「別に嫌じゃねぇよ。それにお前は命の恩人だ。多少の無理は通して見せるさ」


 俺はメリナと接するように自然に、無意識に目の前の女の頭を撫でていた。

 少し恥ずかしそうにするティアマトを見てはっと我に返りすぐに手を引っ込めた。


「その……なんだ、すまん」


「い、いや、構わんぞ。ゴツゴツした手で撫でられるのはあまりないからの、なかなか気持ちの良い手じゃ」


 そんな事を言われたの初めてだ。メリナにも言われたことは無い。

 しかし、ティアマトの髪の毛は意外にさらさらでキチンと手入れされた良い髪だ。この艶、この長さ、撫でるには丁度良い手触りだが、それでいて張りがある。櫛も安いモノを使っている訳ではないだろう。


「……主よ、髪を見つめる顔がマジになっておるぞ」


「おおっとスマン」


「会ってまだ数時間じゃが、主のフェチに気が付いてしまったわい」


「アンタら何してんの」


 気が付くとお互い近い位置で居た為、改めて言われると照れるモノだ。それより口調がだいぶ砕けたモノなっているバシュムの服装を見るとまるで聖職者のようなローブに刀を数本、腰にぶら下げていた。


「おっ、人斬り蛇神 バシュムをまた見られるのかえ?」


「っはっは、その名前懐かしすぎだっての」


 こいつ、もしかして服装によって性格が変わるとか、そんな感じの奴じゃないだろうな。それを確かめる為にフードのようになっている布を取るとその場に蹲りシクシクと泣き始めた。


「うぅぅ……うえぇーん!!! 返してよーーーー!!!」


 OK こいつには色んな服を着てもらいたくなってきたぞ。

 だがすぐに布を返すこととなってしまった。泣きじゃくっていたバシュムの目に光が無くなりこちらをじーっと見ており刀の柄に手をかけていたからだ。


「ねぇ……返しなさいよ……返しなさい」


「さ、さーせん」


「かっかっかっか!! こやつの性格を理解出来た所で、さっそく行くぞい!」


 今思うと中々恐ろしいパーティーだな。

 蛇神、災厄の竜、半竜。もし俺がこんな奴らを相手にするなら勝てる気がしなくて泣いちまいそうだ。


 俺達はまず町へ向かった。だが家になんか帰らなければよかった。あんな光景を見るのならば──


「あはははっ」


 家のドアを開け中に入るとそこには楽しそうに笑うメリナと、騎士の恰好をした男が抱き合いながらベッドに寝転んでいた。俺はその光景を見た時点でこの女への愛情なんてモノはどこかに消えてしまった。

 幸運な事にティアマトとバシュムには外で待ってもらっている。


「おい」


「!? アプス!?」


 俺がこの場所に居る事に相当驚いているようだ。それもそうだろうな。死んだと思っていた夫が帰ってきているのだからな。相手の男に関しては知った顔だ。いや、この宗教国家ドラコ公国に住むモノならば誰であろうと知っている。

 騎士団長様だ。ベルベットが所属するドラコ騎士団のトップだ。そんな男が人の女に手を出すなんてな。ましてや、この騎士団長はベルベットの婚約者でもあった。


「……はぁぁ……まったく……宗教国家の騎士団長様が女を裏切り……ましてやその友人の女と浮気か」


「何だ貴様」


「……エア、この人は……私の、夫」


「な、死んだって言ってたじゃないか」


 騎士団長はメリナの肩を揺さぶるようにそう言った。


「……アプス、ごめん……アプスが死んだと思って悲しくて……」


 俺は無言で短銃を手に取ると二人に向けた。

 俺は基本的に人の恋路には手を出さない主義なのだか、それが自分の妻なら黙ってはいない。これが無理矢理なら俺もこの騎士団長様を断罪、有無を言わさずギルティだ。しかし今回に限っては二人共が悪い。ならばどうするか。


「メリナ、俺が嘘を大嫌いなのは良く知っているだろ。だがお前は俺に嘘を吐いた。これは許さん、そして騎士団長、お前は俺の女に手を出した。これも許さん。よって、だ。二人共死ね」


「アプス!!!」


「そうだ。一つだけ聞いておこう。ベルベットはどうした」


 この事をベルベットが知れば、間違いなく同じ事をするであろう。だが町に帰って来てベルベットの事を巡回中の騎士に聞いたがまだ帰って来ていないのだと言う。それはもう一つしか理由はないだろう。

 メリナは無言で何も答えなかった。それが答えだ。

 俺のQにメリナは無言のAを出した。


「お前がやったのか?」


「違う!! 私は悪くない!! 私は何も悪くないの!!」


「無様だな」


 俺は黙っている騎士団長の足を撃ち抜いた。


「おい何黙ってんだ。てめぇも無関係じゃんねぇだろうが」


「ぐぁぁぁ!! 貴様……この私にこんな事をしてただで済むと思うな……!!」


 這いつくばる相手の後頭部に銃口を突き付けて俺は笑顔でこう言った。


「死人に口なしっていい言葉だよな」


 そのまま引き金をもう一度引くと騎士団長様は動かなくなりメリナを見るとびくびくと怯えるように部屋の隅に隠れるように蹲っていた。可哀想だな。同情してやるよ。女。すると音を聞いたティアマトとバシュムが急いで家の中に入って来てこちらを見た。


「何をしておった?」


「浮気現場を押さえていた所だ。邪魔すんなよ」


「邪魔はしないさ。そいつが妻か?」


「あぁ、バカな女だ。俺が死んだと思って騎士団長様に乗り換えたらしい」


「違う……私はアプスを……アプスが好き……こんな男の事なんて」


「黙れよ。殺すぞ。いや殺すんだった」


 自分の妻だろうが何だろうが、嘘を吐いてさらに嘘を重ねるような奴なんざ神様の元に送ってやるよ。

 俺は妻を容赦なくこの手で撃ち殺してしまった。そして撃ち殺した後に気付いた。


「おっと、メリナは無神論者だったな」

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