キミは友達
少年は泣いていた。薄暗く、光の届かないジメジメとした部屋にうずくまっていた。畳にはカビが生え、窓は何年も開けていない。
教科書・ノート、ランドセルにホコリが充満としており、余計に空気を重くする。孤独に打ちひしがられていた少年は、明日への光が見えないでいた。
「くすくす。」
ふと、近くで声がした。少年は顔をバッとあげ、辺りをキョロキョロと見渡す。なんだ、今のは。殺風景な部屋には誰かがいる気配がない。
「こっちだよ。よく見てごらん。」
聞き間違いではなかった。次第に心臓の鼓動が速くなる。はっきりと、この押入れから声がした。もう、何年も開けていないものだ。恐る恐る、少年は押入れを開けた。
「やあ、僕はキミの友達だよ。初めましてだね。」
押入れから現れたのは、ボロボロの熊のぬいぐるみだった。
コイツ、喋った?少年は、戸惑いを隠せないまま、ぬいぐるみの身体を触る。もしかしたら、マイクが入ってるのかもしれない。あるいは、カメラで見られているのか?360度、目を凝らしあちこちを探した。
「そんなにジロジロ見られたら、恥ずかしいよ。それに、とてもくすぐったい。僕は決して怪しい者じゃないよ、友達。」
いや、見るからに怪しい。それに友達ってなんなんだ?少年は更に戸惑う。
「ちょっとちょっと。僕を疑ってるのかい?まぁ、しょうがないよね。ずーっとお家に引きこもってれば、心は暗くなるもんね。キミは今、僕が喋ってることはウソだと思ってるかい?違うよ。今、キミと僕がこの部屋にいる。ほら、時計の針も動いてる。これは、現実なんだよ。」
時計を見る。カチカチと、秒針が動いている。それに、このぬいぐるみからは機械的なものは入ってなかった。でも、口は全く動いていない。気になった少年は、ぬいぐるみに尋ねることにした。
「キミは何者なの?なんで話すことができるの?」
ぬいぐるみは、嬉しそうに言葉を話した。
「わぁ、やっと話してくれた。よかったよかった。このままキミが石のようになるんじゃないかと思ってたよ。嬉しいな。僕はね、キミの友達だよ。キミを守るためにやってきた、って言えばわかるかな?あと、どうやって話してるかって?それは内緒。ヒントはね、キミにしか聞こえない声で話してるってことだよ。」
余計ややこしくなってきた。最近、頭を使って無かったからか、だいぶ馬鹿になってしまった。少年は容量の少なくなった頭を抱え込む。ようやく、絞り出した言葉をぬいぐるみにぶつけた。
「その、さっきからキミが言ってる友達ってなに?僕はキミを、誰かから貰った覚えはないよ。」
「くすくす。」
またぬいぐるみが笑った。何がおかしいのだろう?少々、馬鹿にされた気がしたことを少年は感じた。
「何がおかしいんだよ⁉︎」
「ゴメンゴメン。」
言葉では謝ったものの、声は笑ったままだった。
「友達は友達だよ。僕は、キミの、友達。昔からキミを知ってる友達だよ。ずっとずっと、遥かからね。」
もう、聞くことを辞めた。余計頭が痛くなるだけだ。少年はフゥと溜め息をつく。ちょっと休もうと思ってた、その時だ。
「ねぇ。」
ぬいぐるみがまた話かけた。
「なに?」
しつこいなぁ。少年の声が荒くなる。対して、ぬいぐるみは一定のペースで話す。
「キミの名前を教えてよ。僕の友達の名前を、ぜひ知りたいな。」
「名前?」
思わず言葉を返す。名前なら幾らでも言ってやる。少年はぬいぐるみと向き合い、名前を告げた。
「ユージ。僕の名前はユージ。キミの友達のユージだよ。」
しばらく、静かになる。ユージは首を傾げる。壊れたのだろうか?じぃっと見つめると、ぬいぐるみがやっと、喋りだした。
「ユージ。いい名前だね。ありがとう、僕の友達。これからもよろしくね。」
いや、よろしくねと言われても。なんか強引に締められた気がする。
「ねぇ、ユージ。頼みがあるんだけどいいかい?」
「なんだよ?」
「僕、久しぶりに外の景色を見たいんだ。そこの窓開けてくれる?この部屋カビ臭いし、ホコリも充満してる。このままだと、喘息になりそうだよ。」
「余計なお世話だ。あと、口塞がってるくせに、なに言ってんだよ。しょうがないなぁ。」
ぬいぐるみを腕に抱き、窓を開ける。カラカラと乾いた音がして、光が部屋に差し込む。ホコリがブワッと舞い上がる。まるでダンスしているようだ。
久しぶりに見た夕焼けだった。こんなに綺麗だったかな。ユージは光の暖かさを肌に感じ、ぼうっと立っていた。若干、眠気が入り睡魔が襲いかかってきた。
「綺麗だね、ユージ。もっと近くで見たいな。そうだ、ユージ。外に出ようよ。見晴らしのいい、人がいないところにさ。」
ぬいぐるみが声をかけた。一瞬で現実に戻る。どうやら、夢ではなかったらしい。
外か…ユージは外に出ることを躊躇っていた。気配を察知したぬいぐるみは、ユージの心境を尋ねた。
「どうしたの、ユージ。外に出るのが怖いの?」
「いや…別に怖くないけど…」
外に出るのは怖くない。ユージは一歩前に踏み出せないでいた。
「人と会うのが怖いからでしょ?人見知りが原因で、友達とろくに話したこともない。それを、6年間引きずったまま。せっかくお母さんが買ってくれたランドセルも、ほとんど新品のままだ。もう学校生活残り少ないのに、思い出もないまま、みんなと離れ離れになってしまうよ?それでもいいの?」
何カ所か心にグサリと貫く。自分でもわかっていたことだ。でも、それを受け止められない自分がいた。
「おっ…お前に…僕の、気持ちがわかるのかよッ‼︎ 汚いぬいぐるみの癖にッ‼︎」
思わず言ってしまった。だが、後悔しても遅かった。
「わかるよ。」
バッサリとユージの言葉を断ち切る。部屋の空気が変わり、外から冷たい空気が流れてくる。心がヒンヤリと冷たくなるのを感じた。
「わかるよ、ユージ。人を自分の言葉で傷つけたくないんだよね。幼稚園の時に、友達と喧嘩して泣かせたことがずっと、心に残ってるんだよね。優しいユージだから、距離を置いて自分の殻に篭ってしまったんだよね。そんなユージも、このままだといけないと思ってんだけど、プライドが邪魔して素直になれないってこと。僕は知ってるよ。だって友達だもの。」
まるで自分自身が話しているかのようだ。違和感をユージは感じていた。なんで自分の抱えていることを、このぬいぐるみはわかっているのだろう。気味悪さを通り越し、不思議な感覚が徐々に募ってきた。
「なんで、僕の気持ちがわかるの?」
ぬいぐるみは語りだした。意外にも答えはシンプルだった。
「くすくす。なんで、わかるかって?それはね。昔からキミのことを、知ってるからだよ。ずっとずっと。」
ユージはぬいぐるみを抱え、外に出た。風が吹き、肌に冷たく刺さる。厚着をしたにも関わらず、外気に当たってブルブルと震える。自分の体力が落ちてるんだなと、ユージは感じた。
「夕焼けが、綺麗だね。見晴らしがいいし、人も少ない。僕が行きたかった場所だ。ありがとう、ユージ。」
「いいよ。僕もちょうどココに来たかったから。」
辺りは建物もない、川原の土手にユージは歩いていた。地面の影がコンクリートを背景に長く、うっすらと伸びている。緑色の芝生も夕焼けでオレンジに染まっていた。
「でもね、ユージ。僕は少し納得できないことがあるんだ。」
「どうしたの?」
ぬいぐるみは少し、機嫌が悪そうだった。
「キミはさっき、僕に対して『汚いぬいぐるみ』だと言った。それに僕は怒ってるんだ。確かにそうだけど、さすがに酷いよ、ユージ。こう見えても、僕だって悲しいんだよ。」
先ほどの言葉をまだ引きずっていたようだ。心が傷口が広がる気を感じた。
「ごっ…ごめん…少し僕も、言い過ぎたよ…悲しませて、ごめんね…」
ぬいぐるみは黙ったままだ。まだ怒っているのだろうか。しばらくその時間が続いた。
ぬいぐるみはやっと喋りだした。
「くすくす。いいよ。気にしないで。僕は全然気にしてないから。」
声は元の明るい声だった。機嫌の悪さのカケラもなかった。僕の中の雫がポタリと垂れた。
「本当に優しいんだね、ユージは。僕まで困ってしまうよ。だからさ、キミの顔を見せて。キミの泣いてる姿を、僕に見せて欲しいんだ。」
嗚咽が止まらない。ユージはぬいぐるみと顔を合わせる。見た目はただの、ぬいぐるみなのに。何故か、笑ってるようにも見えた。
「ほら、ごめんって言えた。悪いと思えると、心が修復されるんだよ。涙が潤してくれるからね。やっと、素直になれたんだ。もっと、笑わないと。あと、ユージの涙で僕の身体が濡れてしまったよ、もう。」
そんなこと知るもんか。ユージはぬいぐるみを抱きしめ、声を出して泣いた。周りに人がいなくてよかった。恥ずかしがらないで済む。川原の土手に、ユージの声がやまびこのように飛んで行った。
「僕は側にいるよ。キミを守るためにやって来たんだもの。だから、いっぱい友達と喧嘩して、辛いことがあったら、僕がキミを慰めてあげる。今日からキミは、新しく一歩前へ進むことが出来たんだ。自信持っていいんだよ。僕がキミを見てるから。だって僕は、キミの友達だもの。」
月日が経ち、ぬいぐるみと会ってから6年が経とうとしていた。あれからユージは生まれ変わり、多くの友達と触れ合えた。何回か友達と喧嘩して、泣くことがあった。その度にあのぬいぐるみに慰めてもらい、ユージは強くなることが出来た。
中学生でユージは初めて部活に入った。サッカー部に入り、落ちた体力を上げ、更にスタミナも付いた。3年生になると、キャプテンという立場についた。
陰から悪口を言われ、悲しみに更けていったこともある。だがぬいぐるみに、嫌われるのも人間の魅力の一つだと喝を言われ、素直に受け取ることが出来た。
県大会で優勝出来なくて、涙を流して引退してしまった時はぬいぐるみだけでなく、メンバー全員から慰めの言葉を貰い、勇気を貰った。
高校に入学し、ユージは美術部の1つ年上の先輩に一目惚れをした。これが、初めての恋だった。絵は書いたことなかったが、興味本位だったこともあるため、入ってみることにした。
先輩は絵が上手で、何回か全国のコンクールで優勝していた。ど素人のユージにはコンクールなんて、夢のまた夢のような存在だった。ユージは先輩から、色々と絵の書き方について教わった。
最初は怒られてばかりだったが、次第に絵の才能が芽生えることを感じた。優勝はいかなくても、地区の入選には何回か上がることが出来た。先輩からマンツーマンで接することにより、ユージの恋心もうなぎ登りに上がっていった。
「先輩、もし俺が全国のコンクールに優勝することができたら、俺と付き合って貰えませんか。」
当初、先輩は冗談半分だと思っていた。優勝するためには、高い倍率をすり抜けていかないといけない。地区の入選に数回上がるだけでも、素人にとっては有難いものだった。
しかし、ユージは本気で取り組んだ。絵を研究し、自分の感性を高めていった。徐々に全国でも名前が上がるようになった。だが、上を掴むことは出来ない。それでも、ユージは諦めなかった。
時間があっという間に過ぎ去り、先輩はとある有名な大学に進んだ。卒業式、涙を浮かべたユージの肩に、先輩は手を当てた。
「先輩…卒業、おめでとうございます…俺…俺…先輩のことが」
「待って。その言葉はまだ聞きたくない。忘れたの?優勝したら、私に告白するんでしょ?私より身体が大きい人が、メソメソと女の前で泣いてんじゃないよ。」
「先輩…」
嗚咽が止まらない。先輩は最後に、ユージを抱きしめた。先輩の大きな胸がユージの胸元に当たり、ユージの心臓の鼓動が速くなる。先輩もそれを気づいたのか、頬がほのかに赤く染まっていた。
「待ってるから。」
先輩は腕をほどかなかった。ぎゅっと、胸元に力を込められ、ユージには気持ちのいい締め付け具合だった。
「ユージがコンクールに優勝するまで、私、待ってるから。大丈夫。あなたはだいぶ、絵が上手くなった。あと、もうちょっと。ほんのわずかな差だけど。絶対に私が保証する。だから、優勝したら私の前に来て。自分の限界を感じないで。私が、あなたを応援してるから。」
先輩は顔を上げ、ユージの顔を見つめる。目には涙が込められていた。しかし、片目を瞑り、嬉しそうに舌を出すその姿は、天使そのものだった。
「だって、あなたは私の友達でもあるし。将来の旦那さんでもあるんだから。」
ユージは部屋を整理していた。無事大学に進学し、これからの生活を送るために実家の片付けをしていた。6年前のランドセルはボロボロに折り曲がっていた。相当、遊んでいた証なのだろう。ユージは、昔を懐かしがっていた。
ふと、あのぬいぐるみの姿が見えないことに気付いた。そういえば中学以来、見ていない。もしかしたら。心当たりを思い出し、ユージは押入れを開けた。
「やあ、久しぶりだね。僕の友達。見違えたよ、元気にしてた?ユージ。」
久しぶりに話したぬいぐるみは、何も変わっていなかった。小学生の時を思い出し、クスリと笑う。
「久しぶり。元気にしてたよ。キミのおかげで、俺はここまでやってこれた。本当に感謝してるよ、友達。」
「くすくす、嬉しいな。僕の友達が、そんなこと言ってくれて。それに、僕は何もしてないよ。ユージの、自分自身の力で、登りつめたことじゃないか。ユージが嬉しいと、僕も嬉しいし。自信を持てて良かったよ。」
思えば、このぬいぐるみがいなければ、ユージはこの空間にいることは無かっただろう。
押入れから、ぬいぐるみを抱きしめる。掃除した部屋には、ホコリ一つ見当たらない。開いた窓から、光が差し込んでいた。
「実はね、ユージ。一つ、残念なお知らせがあるんだ。」
「…どうした?」
残念なお知らせ、せっかく久しぶりに会えたのに。思わず飛び出しそうな言葉を、ぐっと堪えた。
「ユージと、お別れすることになったんだ。長い付き合いだったけど、楽しかったよ。ありがとう、僕の友達。」
別れの言葉だった。幻聴かと思えた。夢なのかと思えた。時間が止まっているのかと思った。ぬいぐるみが壊れたのかと、幾つか考えた。
だが、現実は違った。時間は確実に動いている。スーッと、ユージの目から雫が垂れた。
「嫌だ…」
絞り出した言葉は、徐々に大きくなる。
「嫌だ…嫌だ…嫌だ…‼︎ なんでだよ‼︎ なんで俺の前から、いなくなるんだよ‼︎ もっと、もっと、俺の側にいてくれよ‼︎」
ボタボタと涙がぬいぐるみを濡らす。ぬいぐるみは複雑そうな感じだった。
「ちょっとちょっと。涙で僕の身体が濡れてしまったじゃないか。乾かすの大変なんだぞ、もう。」
知るもんか。ユージは声を上げ、泣いた。ぬいぐるみは更に、話を続けた。
「キミはもう、僕がいなくてもやっていけるよ。それは、ユージが証明してくれた。これからキミは、新しい人生が待ってる。あの頃みたいに、暗闇にいたユージは、もういない。今キミは、光に満ち溢れ、暖かい物に包まれてるようだよ。」
ユージは涙で溢れた顔を上げた。ぬいぐるみの表情は変わっていなかった。
「言ったろ。僕は、キミの友達だって。ユージを守るためにやって来たって。僕がずっと側にいるよってね。ユージが喜んだ時も、ユージが怒った時も、ユージが哀しんだ時も、ユージが楽しそうにしてた時も。僕は、ユージの側を離れなかったよ。ほら、キミの周りにもユージを必要としてくれる仲間がいる。友達がいる。恋人だっている。キミはもう、決して独りの少年じゃなくなったんだよ。キミの涙が、それの証拠さ。」
ぬいぐるみが光に満ち溢れていく。まるで幻となるかのように、消えそうな光だった。
「ウソだろ…おい、ウソだと言ってくれよ‼︎ おい‼︎」
「時間がなくなってきたね。僕もユージと同じ気持ちだよ。まるで、自分自身のようだ。
」
時間がない中、ユージはあることを尋ねた。最後に知っておきたい、だが、聞くことを躊躇った質問を投げかけた。
「なあ…教えてくれよ…お前は、いったい、何者なんだ?お前の名前を、教えてくれよ‼︎ 小さい俺を救ってくれた、俺の唯一の、最高の友達のことを知りたいんだよ‼︎」
光が更に輝く。手が透けて、見えるようになった。ぬいぐるみは、はっきりとその名前を
告げた。
「ユージ。僕の名前はユージ。キミの友達のユージだよ。『友治』はキミのお母さんが、いつまでも友達を大事にしてくれますようにと、つけた名前だ。それは、キミ自身の名前。そう、僕は、キミの心の姿なんだ、ユージ。」
「俺の…名前…お前が、俺?」
衝撃が身体に走る。幻かと思った。夢かと思った。時間が止まっているのかと思った。だが、全て違う。現実だ。ユージの目の前に、もう一人のユージが間もなく、消えそうだった。
「キミが孤独だったとき、助けを必要としていた。泣いてる時は慰め、時には怒ったけど、許した。暗い雰囲気の時は、冗談も言ってみた。嬉しい時は、一緒に喜んだ。だって、そうだろ?友達に何か起こったら、すぐに手を差し伸べるのが、当たり前じゃないか。」
ユージが光に満ち溢れた。光が上に上がってゆく。
「行くな‼︎ ユージ、行くな‼︎」
「ありがとう、ユージ。僕もキミにお礼が言いたかった。僕のことを友達と認めてくれて、僕は、すごくすごく、嬉しかった。だから、僕はずっと側にいるよ。ユージの心の中に、いつまでも友達でいるからね。」
涙で周りが見えなかった。だが、目の前にもう一人の自分が現れた気配を感じた。
「くすくす。」
ユージが笑った。それが最後の、友達の言葉だった。
「やっぱ、ユージは昔から泣き虫だな。僕も人のこと、言えないけどね。…ユージ、大好きだよ。自分自身を好きになって、本当に感謝している。」
「ユージ、僕達は一心同体だ。これからも、ずっと、いつまでも。永遠に、キミは友達なんだ。」
それから数日後、ユージは家を飛び出した。両親は駅まで、見送ってくれた。大学のキャンパス内で、1つ年上の彼女が手を振って、待っていた。これからは、彼女と一緒だ。心が踊るってこのことを言うのだろう。
ユージは涙を拭いた。自分自身のユージに負けないよう、精一杯努力していくつもりだ。自分に光を与えてくれたように、ユージも人のために、光を照らす存在になりたいと思ったのだ。太陽が、ユージの身体を暖かく包む。それはまるで、あの頃の夕焼けのようだった。
実家の部屋は片付けられ、押入れの上に物が置かれていた。全国の美術コンクールの優勝した賞状。
その隣の額縁に、卒業証書と賞状を両手に持ったユージと、その隣に優しい笑顔でピースをする美術部の先輩が写っていた。
壁には、絵が飾られていた。心を閉ざし泣いている少年に、少年と瓜二つな少年がハグをして、優しい光に満ち溢れた姿である。
優勝した絵の名前は「キミは友達」
ユージの名前が堂々と書かれてあった。
前回より、話が長くなりました。今回は友情という物に焦点を。たまには、こんなのでもいいでしょう。




