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キミは友達

作者: 川路 利義
掲載日:2015/01/29

少年は泣いていた。薄暗く、光の届かないジメジメとした部屋にうずくまっていた。畳にはカビが生え、窓は何年も開けていない。

教科書・ノート、ランドセルにホコリが充満としており、余計に空気を重くする。孤独に打ちひしがられていた少年は、明日への光が見えないでいた。


「くすくす。」


ふと、近くで声がした。少年は顔をバッとあげ、辺りをキョロキョロと見渡す。なんだ、今のは。殺風景な部屋には誰かがいる気配がない。


「こっちだよ。よく見てごらん。」


聞き間違いではなかった。次第に心臓の鼓動が速くなる。はっきりと、この押入れから声がした。もう、何年も開けていないものだ。恐る恐る、少年は押入れを開けた。


「やあ、僕はキミの友達だよ。初めましてだね。」


押入れから現れたのは、ボロボロの熊のぬいぐるみだった。

コイツ、喋った?少年は、戸惑いを隠せないまま、ぬいぐるみの身体を触る。もしかしたら、マイクが入ってるのかもしれない。あるいは、カメラで見られているのか?360度、目を凝らしあちこちを探した。


「そんなにジロジロ見られたら、恥ずかしいよ。それに、とてもくすぐったい。僕は決して怪しい者じゃないよ、友達。」


いや、見るからに怪しい。それに友達ってなんなんだ?少年は更に戸惑う。


「ちょっとちょっと。僕を疑ってるのかい?まぁ、しょうがないよね。ずーっとお家に引きこもってれば、心は暗くなるもんね。キミは今、僕が喋ってることはウソだと思ってるかい?違うよ。今、キミと僕がこの部屋にいる。ほら、時計の針も動いてる。これは、現実なんだよ。」


時計を見る。カチカチと、秒針が動いている。それに、このぬいぐるみからは機械的なものは入ってなかった。でも、口は全く動いていない。気になった少年は、ぬいぐるみに尋ねることにした。


「キミは何者なの?なんで話すことができるの?」


ぬいぐるみは、嬉しそうに言葉を話した。


「わぁ、やっと話してくれた。よかったよかった。このままキミが石のようになるんじゃないかと思ってたよ。嬉しいな。僕はね、キミの友達だよ。キミを守るためにやってきた、って言えばわかるかな?あと、どうやって話してるかって?それは内緒。ヒントはね、キミにしか聞こえない声で話してるってことだよ。」


余計ややこしくなってきた。最近、頭を使って無かったからか、だいぶ馬鹿になってしまった。少年は容量の少なくなった頭を抱え込む。ようやく、絞り出した言葉をぬいぐるみにぶつけた。


「その、さっきからキミが言ってる友達ってなに?僕はキミを、誰かから貰った覚えはないよ。」


「くすくす。」

またぬいぐるみが笑った。何がおかしいのだろう?少々、馬鹿にされた気がしたことを少年は感じた。


「何がおかしいんだよ⁉︎」


「ゴメンゴメン。」

言葉では謝ったものの、声は笑ったままだった。


「友達は友達だよ。僕は、キミの、友達。昔からキミを知ってる友達だよ。ずっとずっと、遥かからね。」


もう、聞くことを辞めた。余計頭が痛くなるだけだ。少年はフゥと溜め息をつく。ちょっと休もうと思ってた、その時だ。


「ねぇ。」


ぬいぐるみがまた話かけた。

「なに?」

しつこいなぁ。少年の声が荒くなる。対して、ぬいぐるみは一定のペースで話す。


「キミの名前を教えてよ。僕の友達の名前を、ぜひ知りたいな。」

「名前?」


思わず言葉を返す。名前なら幾らでも言ってやる。少年はぬいぐるみと向き合い、名前を告げた。


「ユージ。僕の名前はユージ。キミの友達のユージだよ。」


しばらく、静かになる。ユージは首を傾げる。壊れたのだろうか?じぃっと見つめると、ぬいぐるみがやっと、喋りだした。


「ユージ。いい名前だね。ありがとう、僕の友達。これからもよろしくね。」


いや、よろしくねと言われても。なんか強引に締められた気がする。


「ねぇ、ユージ。頼みがあるんだけどいいかい?」

「なんだよ?」

「僕、久しぶりに外の景色を見たいんだ。そこの窓開けてくれる?この部屋カビ臭いし、ホコリも充満してる。このままだと、喘息になりそうだよ。」

「余計なお世話だ。あと、口塞がってるくせに、なに言ってんだよ。しょうがないなぁ。」


ぬいぐるみを腕に抱き、窓を開ける。カラカラと乾いた音がして、光が部屋に差し込む。ホコリがブワッと舞い上がる。まるでダンスしているようだ。

久しぶりに見た夕焼けだった。こんなに綺麗だったかな。ユージは光の暖かさを肌に感じ、ぼうっと立っていた。若干、眠気が入り睡魔が襲いかかってきた。


「綺麗だね、ユージ。もっと近くで見たいな。そうだ、ユージ。外に出ようよ。見晴らしのいい、人がいないところにさ。」


ぬいぐるみが声をかけた。一瞬で現実に戻る。どうやら、夢ではなかったらしい。

外か…ユージは外に出ることを躊躇っていた。気配を察知したぬいぐるみは、ユージの心境を尋ねた。


「どうしたの、ユージ。外に出るのが怖いの?」

「いや…別に怖くないけど…」

外に出るのは怖くない。ユージは一歩前に踏み出せないでいた。


「人と会うのが怖いからでしょ?人見知りが原因で、友達とろくに話したこともない。それを、6年間引きずったまま。せっかくお母さんが買ってくれたランドセルも、ほとんど新品のままだ。もう学校生活残り少ないのに、思い出もないまま、みんなと離れ離れになってしまうよ?それでもいいの?」


何カ所か心にグサリと貫く。自分でもわかっていたことだ。でも、それを受け止められない自分がいた。


「おっ…お前に…僕の、気持ちがわかるのかよッ‼︎ 汚いぬいぐるみの癖にッ‼︎」

思わず言ってしまった。だが、後悔しても遅かった。

「わかるよ。」


バッサリとユージの言葉を断ち切る。部屋の空気が変わり、外から冷たい空気が流れてくる。心がヒンヤリと冷たくなるのを感じた。


「わかるよ、ユージ。人を自分の言葉で傷つけたくないんだよね。幼稚園の時に、友達と喧嘩して泣かせたことがずっと、心に残ってるんだよね。優しいユージだから、距離を置いて自分の殻に篭ってしまったんだよね。そんなユージも、このままだといけないと思ってんだけど、プライドが邪魔して素直になれないってこと。僕は知ってるよ。だって友達だもの。」


まるで自分自身が話しているかのようだ。違和感をユージは感じていた。なんで自分の抱えていることを、このぬいぐるみはわかっているのだろう。気味悪さを通り越し、不思議な感覚が徐々に募ってきた。


「なんで、僕の気持ちがわかるの?」


ぬいぐるみは語りだした。意外にも答えはシンプルだった。


「くすくす。なんで、わかるかって?それはね。昔からキミのことを、知ってるからだよ。ずっとずっと。」






ユージはぬいぐるみを抱え、外に出た。風が吹き、肌に冷たく刺さる。厚着をしたにも関わらず、外気に当たってブルブルと震える。自分の体力が落ちてるんだなと、ユージは感じた。


「夕焼けが、綺麗だね。見晴らしがいいし、人も少ない。僕が行きたかった場所だ。ありがとう、ユージ。」

「いいよ。僕もちょうどココに来たかったから。」


辺りは建物もない、川原の土手にユージは歩いていた。地面の影がコンクリートを背景に長く、うっすらと伸びている。緑色の芝生も夕焼けでオレンジに染まっていた。


「でもね、ユージ。僕は少し納得できないことがあるんだ。」

「どうしたの?」


ぬいぐるみは少し、機嫌が悪そうだった。


「キミはさっき、僕に対して『汚いぬいぐるみ』だと言った。それに僕は怒ってるんだ。確かにそうだけど、さすがに酷いよ、ユージ。こう見えても、僕だって悲しいんだよ。」


先ほどの言葉をまだ引きずっていたようだ。心が傷口が広がる気を感じた。

「ごっ…ごめん…少し僕も、言い過ぎたよ…悲しませて、ごめんね…」


ぬいぐるみは黙ったままだ。まだ怒っているのだろうか。しばらくその時間が続いた。


ぬいぐるみはやっと喋りだした。

「くすくす。いいよ。気にしないで。僕は全然気にしてないから。」


声は元の明るい声だった。機嫌の悪さのカケラもなかった。僕の中の雫がポタリと垂れた。


「本当に優しいんだね、ユージは。僕まで困ってしまうよ。だからさ、キミの顔を見せて。キミの泣いてる姿を、僕に見せて欲しいんだ。」


嗚咽が止まらない。ユージはぬいぐるみと顔を合わせる。見た目はただの、ぬいぐるみなのに。何故か、笑ってるようにも見えた。


「ほら、ごめんって言えた。悪いと思えると、心が修復されるんだよ。涙が潤してくれるからね。やっと、素直になれたんだ。もっと、笑わないと。あと、ユージの涙で僕の身体が濡れてしまったよ、もう。」


そんなこと知るもんか。ユージはぬいぐるみを抱きしめ、声を出して泣いた。周りに人がいなくてよかった。恥ずかしがらないで済む。川原の土手に、ユージの声がやまびこのように飛んで行った。


「僕は側にいるよ。キミを守るためにやって来たんだもの。だから、いっぱい友達と喧嘩して、辛いことがあったら、僕がキミを慰めてあげる。今日からキミは、新しく一歩前へ進むことが出来たんだ。自信持っていいんだよ。僕がキミを見てるから。だって僕は、キミの友達だもの。」









月日が経ち、ぬいぐるみと会ってから6年が経とうとしていた。あれからユージは生まれ変わり、多くの友達と触れ合えた。何回か友達と喧嘩して、泣くことがあった。その度にあのぬいぐるみに慰めてもらい、ユージは強くなることが出来た。


中学生でユージは初めて部活に入った。サッカー部に入り、落ちた体力を上げ、更にスタミナも付いた。3年生になると、キャプテンという立場についた。

陰から悪口を言われ、悲しみに更けていったこともある。だがぬいぐるみに、嫌われるのも人間の魅力の一つだと喝を言われ、素直に受け取ることが出来た。

県大会で優勝出来なくて、涙を流して引退してしまった時はぬいぐるみだけでなく、メンバー全員から慰めの言葉を貰い、勇気を貰った。


高校に入学し、ユージは美術部の1つ年上の先輩に一目惚れをした。これが、初めての恋だった。絵は書いたことなかったが、興味本位だったこともあるため、入ってみることにした。

先輩は絵が上手で、何回か全国のコンクールで優勝していた。ど素人のユージにはコンクールなんて、夢のまた夢のような存在だった。ユージは先輩から、色々と絵の書き方について教わった。

最初は怒られてばかりだったが、次第に絵の才能が芽生えることを感じた。優勝はいかなくても、地区の入選には何回か上がることが出来た。先輩からマンツーマンで接することにより、ユージの恋心もうなぎ登りに上がっていった。


「先輩、もし俺が全国のコンクールに優勝することができたら、俺と付き合って貰えませんか。」


当初、先輩は冗談半分だと思っていた。優勝するためには、高い倍率をすり抜けていかないといけない。地区の入選に数回上がるだけでも、素人にとっては有難いものだった。

しかし、ユージは本気で取り組んだ。絵を研究し、自分の感性を高めていった。徐々に全国でも名前が上がるようになった。だが、上を掴むことは出来ない。それでも、ユージは諦めなかった。

時間があっという間に過ぎ去り、先輩はとある有名な大学に進んだ。卒業式、涙を浮かべたユージの肩に、先輩は手を当てた。


「先輩…卒業、おめでとうございます…俺…俺…先輩のことが」

「待って。その言葉はまだ聞きたくない。忘れたの?優勝したら、私に告白するんでしょ?私より身体が大きい人が、メソメソと女の前で泣いてんじゃないよ。」

「先輩…」

嗚咽が止まらない。先輩は最後に、ユージを抱きしめた。先輩の大きな胸がユージの胸元に当たり、ユージの心臓の鼓動が速くなる。先輩もそれを気づいたのか、頬がほのかに赤く染まっていた。


「待ってるから。」


先輩は腕をほどかなかった。ぎゅっと、胸元に力を込められ、ユージには気持ちのいい締め付け具合だった。


「ユージがコンクールに優勝するまで、私、待ってるから。大丈夫。あなたはだいぶ、絵が上手くなった。あと、もうちょっと。ほんのわずかな差だけど。絶対に私が保証する。だから、優勝したら私の前に来て。自分の限界を感じないで。私が、あなたを応援してるから。」


先輩は顔を上げ、ユージの顔を見つめる。目には涙が込められていた。しかし、片目を瞑り、嬉しそうに舌を出すその姿は、天使そのものだった。


「だって、あなたは私の友達でもあるし。将来の旦那さんでもあるんだから。」






ユージは部屋を整理していた。無事大学に進学し、これからの生活を送るために実家の片付けをしていた。6年前のランドセルはボロボロに折り曲がっていた。相当、遊んでいた証なのだろう。ユージは、昔を懐かしがっていた。

ふと、あのぬいぐるみの姿が見えないことに気付いた。そういえば中学以来、見ていない。もしかしたら。心当たりを思い出し、ユージは押入れを開けた。


「やあ、久しぶりだね。僕の友達。見違えたよ、元気にしてた?ユージ。」


久しぶりに話したぬいぐるみは、何も変わっていなかった。小学生の時を思い出し、クスリと笑う。


「久しぶり。元気にしてたよ。キミのおかげで、俺はここまでやってこれた。本当に感謝してるよ、友達。」

「くすくす、嬉しいな。僕の友達が、そんなこと言ってくれて。それに、僕は何もしてないよ。ユージの、自分自身の力で、登りつめたことじゃないか。ユージが嬉しいと、僕も嬉しいし。自信を持てて良かったよ。」


思えば、このぬいぐるみがいなければ、ユージはこの空間にいることは無かっただろう。

押入れから、ぬいぐるみを抱きしめる。掃除した部屋には、ホコリ一つ見当たらない。開いた窓から、光が差し込んでいた。


「実はね、ユージ。一つ、残念なお知らせがあるんだ。」

「…どうした?」


残念なお知らせ、せっかく久しぶりに会えたのに。思わず飛び出しそうな言葉を、ぐっと堪えた。


「ユージと、お別れすることになったんだ。長い付き合いだったけど、楽しかったよ。ありがとう、僕の友達。」


別れの言葉だった。幻聴かと思えた。夢なのかと思えた。時間が止まっているのかと思った。ぬいぐるみが壊れたのかと、幾つか考えた。

だが、現実は違った。時間は確実に動いている。スーッと、ユージの目から雫が垂れた。


「嫌だ…」


絞り出した言葉は、徐々に大きくなる。

「嫌だ…嫌だ…嫌だ…‼︎ なんでだよ‼︎ なんで俺の前から、いなくなるんだよ‼︎ もっと、もっと、俺の側にいてくれよ‼︎」


ボタボタと涙がぬいぐるみを濡らす。ぬいぐるみは複雑そうな感じだった。


「ちょっとちょっと。涙で僕の身体が濡れてしまったじゃないか。乾かすの大変なんだぞ、もう。」


知るもんか。ユージは声を上げ、泣いた。ぬいぐるみは更に、話を続けた。


「キミはもう、僕がいなくてもやっていけるよ。それは、ユージが証明してくれた。これからキミは、新しい人生が待ってる。あの頃みたいに、暗闇にいたユージは、もういない。今キミは、光に満ち溢れ、暖かい物に包まれてるようだよ。」


ユージは涙で溢れた顔を上げた。ぬいぐるみの表情は変わっていなかった。


「言ったろ。僕は、キミの友達だって。ユージを守るためにやって来たって。僕がずっと側にいるよってね。ユージが喜んだ時も、ユージが怒った時も、ユージが哀しんだ時も、ユージが楽しそうにしてた時も。僕は、ユージの側を離れなかったよ。ほら、キミの周りにもユージを必要としてくれる仲間がいる。友達がいる。恋人だっている。キミはもう、決して独りの少年じゃなくなったんだよ。キミの涙が、それの証拠さ。」


ぬいぐるみが光に満ち溢れていく。まるで幻となるかのように、消えそうな光だった。


「ウソだろ…おい、ウソだと言ってくれよ‼︎ おい‼︎」

「時間がなくなってきたね。僕もユージと同じ気持ちだよ。まるで、自分自身のようだ。


時間がない中、ユージはあることを尋ねた。最後に知っておきたい、だが、聞くことを躊躇った質問を投げかけた。


「なあ…教えてくれよ…お前は、いったい、何者なんだ?お前の名前を、教えてくれよ‼︎ 小さい俺を救ってくれた、俺の唯一の、最高の友達のことを知りたいんだよ‼︎」


光が更に輝く。手が透けて、見えるようになった。ぬいぐるみは、はっきりとその名前を

告げた。




「ユージ。僕の名前はユージ。キミの友達のユージだよ。『友治(ユージ)』はキミのお母さんが、いつまでも友達を大事にしてくれますようにと、つけた名前だ。それは、キミ自身の名前。そう、僕は、キミの心の姿なんだ、ユージ。」


「俺の…名前…お前が、俺?」


衝撃が身体に走る。幻かと思った。夢かと思った。時間が止まっているのかと思った。だが、全て違う。現実だ。ユージの目の前に、もう一人のユージが間もなく、消えそうだった。


「キミが孤独だったとき、助けを必要としていた。泣いてる時は慰め、時には怒ったけど、許した。暗い雰囲気の時は、冗談も言ってみた。嬉しい時は、一緒に喜んだ。だって、そうだろ?友達に何か起こったら、すぐに手を差し伸べるのが、当たり前じゃないか。」


ユージが光に満ち溢れた。光が上に上がってゆく。

「行くな‼︎ ユージ、行くな‼︎」


「ありがとう、ユージ。僕もキミにお礼が言いたかった。僕のことを友達と認めてくれて、僕は、すごくすごく、嬉しかった。だから、僕はずっと側にいるよ。ユージの心の中に、いつまでも友達でいるからね。」


涙で周りが見えなかった。だが、目の前にもう一人の自分が現れた気配を感じた。


「くすくす。」


ユージが笑った。それが最後の、友達の言葉だった。


「やっぱ、ユージは昔から泣き虫だな。僕も人のこと、言えないけどね。…ユージ、大好きだよ。自分自身を好きになって、本当に感謝している。」


「ユージ、僕達は一心同体だ。これからも、ずっと、いつまでも。永遠に、キミは友達なんだ。」







それから数日後、ユージは家を飛び出した。両親は駅まで、見送ってくれた。大学のキャンパス内で、1つ年上の彼女が手を振って、待っていた。これからは、彼女と一緒だ。心が踊るってこのことを言うのだろう。


ユージは涙を拭いた。自分自身のユージに負けないよう、精一杯努力していくつもりだ。自分に光を与えてくれたように、ユージも人のために、光を照らす存在になりたいと思ったのだ。太陽が、ユージの身体を暖かく包む。それはまるで、あの頃の夕焼けのようだった。




実家の部屋は片付けられ、押入れの上に物が置かれていた。全国の美術コンクールの優勝した賞状。

その隣の額縁に、卒業証書と賞状を両手に持ったユージと、その隣に優しい笑顔でピースをする美術部の先輩が写っていた。


壁には、絵が飾られていた。心を閉ざし泣いている少年に、少年と瓜二つな少年がハグをして、優しい光に満ち溢れた姿である。


優勝した絵の名前は「キミは友達」

ユージの名前が堂々と書かれてあった。


前回より、話が長くなりました。今回は友情という物に焦点を。たまには、こんなのでもいいでしょう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 繊細な描写が鮮やかで奇麗でした。
[一言] 小さなきっかけで、人は変わることができるんだなあと、前向きな気分になれるお話でした。 人間関係を複雑に描きすぎず、ユージとぬいぐるみのやりとりを通してふんわりと変化が表現されているところも好…
[良い点] 熊のぬいぐるみに心が宿ったのかな? と思ったのですが、良い意味で裏切られました。 本当にずっと一緒にいる友達ですね。誰でも持っているはずの友人です。大事にしていきたいものですね。 [一言]…
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