メイク
メイクとは魅せる対象によって柔軟に対応してこそ真価を発揮する、それを分かっていない人が多すぎる。
なぜ分かっていないかと言うと、皆んなは万人受けするメイクをしようとするからだ、だが万人にウケるメイクなど存在しない。
ギャルメイクはギャルが好きな人にウケる。
清楚系メイクは清楚系が好きな人にウケる。
だからこそ対象を絞るのだ。
だが私は今戸惑っている、なぜならその対象の男性が「スッピンの君がいい」と言うからだ。
私はずっと自分の素顔を隠して様々な自分になってきた、メイクをすると新しい自分になれるのだ。そのおかげもあって今の地位を築けたし、多くの男性とも付き合えた。
つまり裏を返せば、その多くの男性と失敗したということ、その理由が一様に『イメージと違う』。
もはや私はメイクなしでは生きていけない、メイクこそが私の正体なのだ。
「そんなことないよ、素顔は素敵だよ?」
嘘、あなたは私の仮面しか見たことないからそんなことを言えるのよ。あなただって私の素顔を見たら『イメージと違う』って幻滅するに決まってる。
「イメージと違う?僕が君に対して持ってるイメージは『優しくて温かい大切な女性』だよ?これはメイクで隠せる?」
隠せるわ、だってそうゆうメイクをしているんだもの。
「なら、本当の君はどんな女性なんだい?」
本当の私?………分からない…分からないわ……だけど少なくともあなたのイメージとは違うはずよ。
「どうしてイメージと違うって分かるんだい?」
だって、私はメイクをして素顔を隠してるのよ?イメージはメイクでどうにでもなるわ。
「人の心はメイクだけじゃ動かないよ、君は自分の見た目のおかげで今があると思っているのかい?いくらメイクに合わせて自分を偽っても、近くにいれば君の心は見えてくるよ」
嘘つかないで、そんなセリフもううんざり、結局は見た目なのよ、素顔なんて醜いだけよ。
「…そんなに力んで疲れないかい?」
疲れなんて……ない。
「どうして僕が素顔が素敵だと思うか教えてあげるよ、それは心が露わになるからなんだ、僕は君の心が見たいんだ」
変態、あなたって変態ね。
「変態かもしれない、でもこれが僕の素顔だよ。君の心を見て君を支えて行きたいんだ」
…なら見せてあげる……これが私の素顔よ、どう?幻滅したでしょ、こんな目が小さくて、シミの多い女、分かったらサッサと帰って。
「君はやっぱり『優しくて温かい大切な女性』だ、全く僕の気持ちは変わらない」
嘘よ嘘よ嘘よ、早くどっか行ってよ、私の顔を見ないでよ。
「どこにも行かないよ、だって君が好きだから」
……そんな上辺だけの言葉…信じられない。
「なら信じられるようになるまで待つ、君は勇気を出して素顔を見せてくれた、僕は君を信じているから」
……馬鹿。
あの時、なぜか私の心は虚無から満たされた、彼の真っ直ぐな言葉に負けてしまったのだ。
あれから私は無理に自分を取り繕うことを止めた、メイクも一々変えていない。
やはり万人にウケるメイクというものはないが、ただ一人のためのメイクはあるのだ。私はそのメイクに誇りを持つし、難癖つけるやつはぶっ飛ばす。
だから世の中の女性には自分に正直になってほしい、文句を言われようが気にしないでほしい、メイクで自分を隠したって構わない、だって必ず自分を分かってくれる運命の人に出会えるのだから。
最後に一言、素顔が好きだからって表でもメイクをさせない男はぶっ飛ばす!いいか、女は綺麗でありたい生き物なんだよ!男と一緒にすんな!