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グループ  作者: 山本正純
前編 沈黙の暴行犯
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「岡本宇多にはストーカーがいたのかを聞こうか。暴行事件という性質上ストーカーによる犯行の可能性が高いからな」


 その質問に対して岸尾恵と野島創と勝京介の3人は首を横に振る。

「ストーカーなんていません。この学院は女子高ですから、男の人と知り合うことは滅多にないでしょう。まあ帯刀師範代の道場には男の人も通っていますけど、ストーカーになりそうな人はいません。それでもSNSで知り合った男の人がいたならば話は別ですが」


 岸尾恵の話に続くように勝京介は口を開く。

「帯刀師範代は私の師匠なり。岡本宇多と私は3年前に道場で手合せしてから知り合いける。彼女は道場で自分を負かせる剣士じゃないと口を利かないようにしているから、それでトラブルになりけると思う。さながら沈黙の剣士なり」

「ああ。あの癖か。あの癖があるから彼女は友達が少ないと思うね。つまり彼女を恨んでいる人間ならいると思う」


 野島創たちの証言を聞き合田の脳裏にある疑問が浮かんだ。

「その証言はおかしいと思うが。岡本宇多は剣道の都大会優勝者と聞いている。そんな奴を負かせる奴がいるのか。彼女を負かせないと口を利いてもらえないのだろう。剣道選手の勝京介はともかく、他の2人は口を利いてもらえないと思うが」

「大丈夫。俺は高校時代剣道の全国大会に出場したことがあるから口を利く。全国大会は一回戦落ちだったけどな。そしてその岸尾は四葉学院剣道部で唯一岡本宇多に一本取った実力者。一応都大会に出場できたが、風邪をひいて大会には欠場した。欠場しなかったら決勝戦で戦えたと宇多は嘆いていたな」

「つまり岡本宇多先輩は手合せしたら敗北する実力者以外にも、それに見合った功績がある人や一本取ることができた人でも口を利かれます。敷居は意外に広いでしょう。まあ事件の捜査のためなら口を利いてもらえると思いますが」

「彼女が勝てなかったのは帯刀師範代のみ。敷居が狭かったら、帯刀師範代のみ口を利くことになると思いまする」

「つまり犯人は帯刀師範代とこの場にいる被害者の関係者。合わせて4人の中にいるということか。被害者の所持品の中に木刀があった。被害者は木刀を使って犯人を返り討ちにすることができたはず。だが被害者はそれをしなかった。襲われた時に自分以上の実力を犯人から感じたからだ。いくら金属バットで襲われたとしても、隙があったら返り討ちに遭う可能性が高いからな。都大会優勝者から一本を取ることができなかった奴を容疑者から外すと、風邪をひかなかったら都大会の決勝戦で戦うことになっていた岸尾恵。剣道の選手で実力が彼女より上を思われる勝京介。都大会よりレベルが上の全国大会に参加することができる実力がある野島創。そして被害者が唯一勝てないほどの実力を持つ帯刀師範代。この4人の中に岡本宇多を暴行した犯人がいる可能性が高い」


 容疑者が浮上した頃、学校のチャイムが鳴り響く。チャイムを聞いた野島創と岸尾恵は立ち上がる。

「そろそろ授業に行ってもいいか。さすがに自習にする訳にはいかないしな」

「授業に参加しないと単位が貰えませんから」

 野島創と岸尾恵の2人は一言伝え会議室から退室した。一人残った勝京介も帰り支度を始める。

「私もそろそろ帰りまする」

 勝京介も野島たちに続くように会議室を出て行った。会議室に残った合田警部と望月警部は四葉学院を後にする。

 そして望月は歩きながら事情を合田警部に説明した。


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