三
捜査会議終了後合田警部は四葉学院を訪問した。四葉学院は都内の女子高で、進学校でもある。生徒数300人。
東京ドーム三個分くらいの敷地内に木製で3階建ての校舎が建っている。
事務室で岡本宇多の関係者を呼んでもらうよう説明すると、事務員は合田を校舎内にある会議室に通した。その会議室に関係者を集めて話をするらしい。
5分後会議室のドアが開き三人の男女が会議室に入ってきた。一人目は青いジャージを着たスキンヘッドの男。二人目は紋付き袴を着た短い髪の男。三人目は四葉学院の制服である黒いセーラー服を着た黒いショートカットの少女。
その3人は合田の正面に用意されている椅子に座った。青いジャージを着たスキンヘッドの男と紋付き袴を着た短い髪の男は椅子に座ると名刺を取り出し、合田に差し出した。
「岡本宇多が所属する剣道部の監督をしている野島創です。彼女が所属する2年1組の体育の授業も担当しています」
青いジャージを着たスキンヘッドの男の名前は野島創。その隣に座っている紋付き袴を着た短髪の男は野島と同じように自己紹介をする。
「剣道部でコーチを務める勝京介と申す。職業は剣道選手。よろしくおねがいいたしまする」
紋付き袴を着た短い髪の男、勝京介は見た目20代後半にしか見えないのに古風な話し方をする。
「ところでその話し方は癖なのか」
勝京介は自分の話し方を突っ込まれたと思い顔を赤くする。
「すみませぬ。剣道の師匠の言葉づかいが映りけり」
勝京介は剣道の師匠の影響を受けているから変な話し方をするのであると合田は理解できた。
最後に黒いセーラー服という四葉学院の制服を着た黒いショートカットの少女が自己紹介をする。
「私は剣道部1年の岸尾恵です。岡本先輩とは仲が良くて、剣道の相手をしていただいていました」
自己紹介が終わり岡本宇多の話を聞こうと思った時、突然会議室のドアが開いた。そして合田の前に意外な人物が姿を現す。その人物の名前は望月裕子。組織犯罪対策課の警部だ。望月は警察手帳を野島たちに見せる。
「組織犯罪対策課の望月です。四葉学院女子生徒麻薬中毒死事件について少々お伺いしたいと思いますが」
「その捜査は4か月前に終わったはずだろう。こっちは岡本宇多が暴行された事件の対応で忙しい。再捜査なら止めてもらいたいね」
この野島創の一声を聞き望月は反論する。
「事件はこの学院内に存在する麻薬取引ルートという闇を暴かないと終わらない」
「再捜査であるといいけるなら、岡本宇多暴行事件の捜査に来た刑事さんの話を聞くのが先」
勝京介の一言で場が和み、合田は関係者たちに話を聞いた。