雀の恩返し
カップから皿に出す。蒼は喜びゼリーの虜になった。
「柔らかいものなら食べそう。プリンとかヨーグルトとか」
栄養は成長源になるはずだ。精気を吸わなくても蛹にしてみせる。重大な責任感に燃えた。
その時。
コンコン。コンコン――。
どこからか音が聞こえてくる。
「何の音だろう」
玄関の引き戸が鳴っている。開けてみた。
「雀さん!?」
昨日、助けた雀が嘴でつつき、音を鳴らしていたようだ。
「チュン」
「会いに来てくれたんだ」
「チュン」
手を広げると上に止まった。羽をばたばたさせて喜びを表現する。
「チュチュン」
伝えたいようだが、こればかり意味は分からなかった。
「下を見ろと言っている」
羽前が通訳した。
下には数十匹の蚯蚓が、うねうね動き回っていた。
虫嫌いな人なら顔を青くして喚く状況だ。
「チュン、チュン」
「家来にあげるそうだ」
「私に……」
困惑で言葉が詰まる。
「お前の助けた行為に、恩返しのつもりだろう」
この状況を久慈が解説した。
「嬉しいか、聞いているぞ」
「気持ちは嬉しいけど、蚯蚓は食べられないよ」
「チュウン……」
善かれと思いやった事が失敗し、悄げて落ち込む。
「落ち込まないで」
鳴き声のトーンで悟った。
「次は食べ物を持ってこい」
「図々しいよ。羽前」
数日共に暮らして羽前の性格は、だいたい把握できた。
「此奴に名前を付けてやったらどうだ」
付喪神の提案に、
「そうだね。う~ん」
黒い目を見つめ、雀も虹を凝視する。考えて閃いた。
「君の名前は今日から仔遊。どう?」
「チュンチュ」
嬉しそうに歌うように囀り始めた。音色みたいだ。
「気に入ったのね」
「此方の名を教えてやれ」
「私は虹。久慈でしょう。それに羽前」
「分かった。有り難うと名付けてくれた、事に感謝している」
「どう致しまして」
頭を撫でる。気持ちよさげに鳴く。
「仔遊、可愛い」
突如、空に波を描き、飛び去ってしまった。
「どうかしたのかな」
「照れたらしい」
理由を察して羽前が答えた。
台所へ戻り、蒼が夢中になってゼリーを吸う。順調にいけばなくなりそうだ。
「皆に紹介しよう」
座敷のドアを開けた。座布団の上で小さいもの同士固まる。
座敷童子を片腕に毛玉の妖達を手にのせる。
「ザッシー、ほわとわん。この子は蒼だよ」
「そう?」
「きゅ」
「きゅー」
「蒼いから蒼。今は幼虫だけど蛹になって蝶になるんだよ」
バニラの時と同じように観察を開始する。
ほわ、わんがクッキーの周りで跳ねる。欲しがっていた。
「食べていいよ」
一枚ずつ与えた。かじりあとが小さい。
「虹、煮干し、欲しい」
何かを食べたくなったようだ。
「何本」
「二本」
ザッシーは渋いお茶、酸っぱい梅干し、漬け物、煮物が大好きだ。年寄りみたいである。
頭からばりっと食べる。




