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詞蔵陰陽屋  作者: 蓮華
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お気に召すもの

「君はいい子だね」


 手の平を近づけ、上にのってくれた。


「名前を付けてあげる。色から一文字とってそう


「単純な名前だな」


「単純でもぴったりでしょう。久慈も羽前も蒼と仲良くしてね」


「夜蒼虫と仲良くする役は、お前だけで十分だ」


 大層冷めた返答だった。


「羽前はそんな事、言わないよね」


「一応努力はしよう」


 眉を寄せて当惑の表情になる。


 肩を落とし、とぼとぼ歩く啓太が戻って来た。


「残念ながら原因は見つからなかった」


 枯れた木が一本も見当たらない事実に気づき、信じ難い光景に仰天する。


「これは一体?」


「ええと、それは……」


 言い淀み覚悟を決めた。


「陽力で木を癒したんです」


「陽力で木を癒す?」


 反芻して難しい顔つきで黙った。


 やがて――。


「世の中には不思議な出来事が起こるんじゃな。虹ちゃんのお陰でよく分かった」


 深く追及せず自分なりに解釈し、満面な笑みを浮かべた。


 内心では気味悪がられてもいい。そう思っていたが、啓太の笑顔につっかえた塊は消えた。


「ずっと気になってたんじゃが、肩についているのは芋虫か」


 男は蒼が目に見えていた。普通の人より霊力が強いらしい。


「蒼いなんて珍しいのう」


「色が綺麗で可愛いから飼ってみようと」


 とっさに考え、辛うじて理由っぽくなった。さすがに行き成り妖だと正体は、明かせず秘密にした。


 今日を境に木が枯れる事はない。依頼主には原因を伏せたまま終わった。



 帰宅してから早速、精気に代わるもの探しが始まった。テーブルの上に食べ物が様々並ぶ。


「これが林檎、これはバナナ、クッキー、煎餅、三色団子、食パン、ゼリーだよ」


 少女は手で示して蒼に教えた。興味を持っている。


「どれが食べたい?」


 最初、煎餅に近づき、今度はクッキーの方を向く。


「そもそも此奴、食べられるのか」


 久慈が疑問を発した。


「試したら何か食べるかもしれないでしょ」


「ここにある物が全部、お前の好みだな」


「偶々だよ」


 適当に選んだ物が虹の好みになっていた。


「この三色団子はなかなか美味だ」


 羽前が口をもぐもぐさせ、許可なく食べている。


「自由を絵に描いたみたい」


「勝手を絵に描いただろ」


 置きっぱなしになっていた煎餅の袋を取り、バリバリ噛む。


「久慈まで」


 他の強制を受けず思い通りに振る舞う。


 クッキーに興味を失い、林檎へ上がった。たぶんのっただけだ。


「二人は似ている所があるよね」


「どこがだ」


 声と言葉が揃って数秒間、睨み合う。互いに目を背けた。


「気ままな所とプライドが高い所」


「同じにするな」


「不愉快だ」


「俺の方が倍、不愉快だ」


「我の方が倍、倍、不愉快だ」


「倍、倍、倍」


「倍、倍、倍、倍」


 どんどん倍を増やして言い争う。


 何だこのやりとりは……。呆れ入る。二人の気が済むまで放っておく。


「のり心地が気に入ったの?」


 蒼は林檎で静止して目をぱちくりさせた。


 精気を吸っても、食べ物は食べないのかな。


 食器棚の引き出しからスプーンを取った。苺味のゼリーを掬う。試しに近づけた。


「とっても美味しいよ」


 じっと蒼が見つめる。食べてくれたら嬉しい。


 ゼリーに口元がくっつく。


 虹は期待に胸が高鳴る。


「食べてる!?」


 分かりにくいが減っている。


 ちまちまと吸い、半分に到達しなくなった。


「まだあるよ」

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