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詞蔵陰陽屋  作者: 蓮華
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人の役に立つ為

 叫ぶが当然待ってくれない。虹は追いかけ急いだ。


 異常に速い。見失ってしまう前に追いつきたい。


「結界を張って閉じ込めろ」


 すぐ実行に移す。


「陽陰力よ。我に力を貸し給え。強固な結界を張れ」


 目に見えぬ結界にぶつかり、夜蒼虫の動きが止まった。全然ぴくりとも動かない。


「死んだのか」


「そんな訳ないよ」


 久慈の言葉を否定して、結界を解き突っつく。


「嘘」


 手の平にのせて心配になる。


「気絶しているだけだ」


 泰然と羽前が言った。


 小さな黒い目が開いた。逃げようとした為、反射的にぎゅっと掴む。


「君に危害は加えないから」


「実際加えているだろ」


「これは違うよ。緩めたら逃げちゃう」


 体を左右に動かして暴れる。


「お願い。大人しくして」


 まだ暴れ続ける。やがて力尽きた。


「強く掴みすぎたんじゃないか」


「そうかも……」


 反省しつつじっと見つける。蒼色は晴天や海の色みたいに鮮やかだ。


「可愛い」


「お前、感覚がおかしくなったか」


「我の方が断然可愛いぞ」


「この子、可愛いよ。羽前は綺麗だと思う」


 夜蒼虫を撫でる。くすぐったそうにした。


「私が精気に代わるものを見つける。だから、啓太さんが大切に育てる、木の精気を吸う事をやめて欲しいの」


 責任を持って見つけ出す。かなり難しい気がした。


「じいさんに木が枯れた、理由をどうやって話すんだ」


「蒼夜虫の事は内緒にする。枯れ木は私がどうにかしたい」


「方法があるのか」


「自分なりにやってみる」


 陰陽師は自分流の術をつくり出す。長年の経験を役立て印西は、オリジナルを数々つくった。


 用途は不明だが種もなく花を咲かせる、花術かじゅつが好きだ。


 祖父は庭に花を咲かせてみせた。術を教えてくれる時は必ず手帳にメモをした。全て大切にとってある。


 無知な虹が術をつくる事は難儀だ。しかし、陽力なら癒せる。可能性にかけてみよう。


 啓太と一旦別れた場所に戻った。


「この子を預かってて」


「嫌だ」


「断る」


 二人が一言で返す。


「少しだけ」


「嫌だ」


「断る」


 そんなに拒むのか。虹は地に下ろして「ここで待っててね」と指先で摩った。


 幹に両手を置き、息を吸って吐く。


「陽力よ。我に力を貸し給え。枯れ木に癒しを齎せ」


 未だ変化がなく、陽力を注ぎ続けた。癒しの力がまだ不足している。


 頑張ればいい。心中で励まし諦めなかった。


 葉が一枚茶色から緑に変わった瞬間、次々と色を取り戻していく。


 まさに奇跡が起こったようだ。


 霊力の消耗は通常より激しい。


 次、二本目。三本目。あと最後――。


 癒しは疲れる。想像以上の消耗に頭がぼんやりする。


「やめておけ」


「大丈夫だよ」


 久慈に微笑み、意識を枯れ木に向ける。


 私は人の役に立つ為、詞蔵陰陽屋を始めた。


 枯れたはずの木が全部、元通りに戻っていたら、啓太は気味悪がるだろう。


 それでも。


 緑に戻っていった。満足感に浸りしゃがみ込む。


「帰りは久慈に瞬間移動を任せるね」


 瞬移の数珠を使って家に帰る、霊力もなくへとへとだ。


「面倒くさい」


「面倒くさくてもやるの」


「あの数珠で瞬間移動するなら、我にもできそうだ」


「難しいよ」


「できる」


 どこから湧くのか、羽前は自信に満ち溢れる。逆に自信が不安だ。


 なんと夜蒼虫は動かず待っていた。

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