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詞蔵陰陽屋  作者: 蓮華
25/33

夜蒼虫

「家来はどっちに行きたい」


「虹が決めろ」


「ええと」


 凄みを利かせた睨みに少女は逃げたくなる。


「左と右で意見が割れたから、間をとってこの辺りにしよう」


 揃って無言だったが、異を唱えなかった。


 どの木も色は正常。病気になっていると考えにくい。


 枯れ木が生える所は疎らで、共通点は精気を失った所。自然の条件、寿命で植物は枯れ、精気が大事な役割を担う。理由は生命活動の根源だからだ。


 一向に原因不明のまま。ただ謎が深まる。


 葉、枝、幹をひたすら見続けるのは、根気が必要で大変だった。


「何か見つけた?」


 二人は首を振った。


 落胆して肩を下ろす。簡単には見つからないか。


「木以外に原因があるはずだ。お前の過去見を使えば、何かしらの原因が発覚するだろ」


「やってみる」


 久慈に返答してから集中力を高め、一番初めに枯れた木と向かい合う。


 やがて見えてきた。


 日が昇って周囲が次第に明るくなる。朝だ。


 虹は木の過去を目にしている。


 太陽の位置が変わり昼になった。葉が一枚枯れ、少しずつその枚数が増えていく。


 夕方になる頃には半分精気を失った。


 夜になり、次の朝――。なんと全て枯れていた。


 原因は何?


 過去が薄れ消えていく。焦燥感に駆られた。


 どこにあるの。



 諦めず目線を至る箇所へ走らせる。草むらにいた。よく確かめると青い芋虫だ。


 完全に消え去った。


 邸の一件以来、上手く使えるようになった。


「収穫はあったか」


 久慈の声に深く頷いた。


夜蒼虫やそうちゅうが原因だと思う」


「夜蒼蝶の幼虫か」


 実際見たのは初めてだ。印西から話を聞き存在を知った。


 植物の精気を幼虫の時に吸い、蛹を経て成虫となる。


 真夜中に蛹から成虫が出て、羽は蒼く輝きを放ち美しいらしい。


 幼少期、虹が見てみたいと言い、祖父を困らせた。何故なら夜蒼蝶は簡単に出会える、妖でなく珍しいからだ。


 生命活動の根源を奪われた。故に木は枯れてしまった。


「精気を吸う事は致し方あるまい。蛹になるまで吸い続ける。夜蒼蝶の成長に必要だ」


「分かっているけど、このままだと高岸さんの森が――」


「退治するのか」


 少女は羽前に首を振った。


「一先ず発見したら保護したい」


「保護した後は?」


「まだ考えは特に……」


 悪意が無くても夜蒼虫は、どんどん木を枯らしてしまう。それを避ける必要がある。


「しっかり考えるつもりだよ」


 先は不明瞭だが早急な発見を迫られている。


「家来、あちら側の方向から妖の気配を感じるぞ」


「夜蒼虫かな」


「まだ分からん」


 足を踏み出す。少女と付喪神もついて行く。


 暫く進み、鳥の鳴き声が響いて静かになった。


 木漏れ日が差し込む。名を知らぬ白い花木は美しい。


 突然、立ち止まる。


「気配が近い」


「いたぞ」


 久慈の指差す先に夜蒼虫がいた。


 虹が過去見で見た時は、小指二本くらいだった。現在は片手にのるくらいの大きさ。精気を吸い、成長したのだ。


「どうやって捕まえよう」


「素手しかないだろ。俺は嫌だぞ」


「同じく我もだ」


 二人の意見が初めて合った。どんなに仲が悪くても意見は合う。


「私、頑張って捕まえるよ」


「おなごであるのに、かような妖を触れるのか」


「小さい頃、虫と触れ合っていたから割と平気」


 幸い此方の存在には気づいていない。


 そっと近づく。気を抜かず足音に注意を払う。


 大丈夫。このままいけば……。


 バッキと音が鳴った。枝を踏み存在に気づかれる。


 自分の失敗を悔やんでも遅い。


 物凄い速さで夜蒼虫が逃げた。


「待って!」

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