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詞蔵陰陽屋  作者: 蓮華
22/33

仲を取り持つ

 不可解な表現の意味を考えた。結局答えに近づけず疑問が残る。


「家来の手にのる雀は死骸か」


 冗談に聞こえなかった。内心苦笑しつつ教える。


「眠ってる生きた雀だよ」


「何故、手の中にいる」


「空を危うげに飛んでて、枝にぶつかったから、とっさに手を出して受け止めた。怪我も治したの。家に帰ったら、ドライヤーで乾かすつもり」


「そちがやらなくとも、自然に翼が乾けばまた飛べるようになる」


 確かに彼の言う通りだ。


「でも、放っておけないでしょ」


「それが虹のいい所なのだな」


「誉めてくれるんだ」


「もっと誉めてやろうか」


 やたら色気のある眼差しを送られ、即座に逸らす。正体は五尾だが異性を惹きつける魅力を持つ。


 恋愛をせず生きてきた少女は、魅力には免疫がなく弱い。


 雀が目を覚ました。歩く揺れで起きてしまったのだろうか。


「今私の家に帰っている途中よ。君の体を乾かして、ちゃんと外にかえすね」


「チュン」


 鳴き声に反応を示し、バニラがじっと見る。あれは獲物を捉えた目だ。


「雀を食べたがっている。あげていいか」


「絶対ダメだから!」


 おなかを空かせたバニラの為に食べ物が必要だ。買わなかったら恐ろしい事が起きる。


 久慈に一旦雀を預け、スーパーで煮干しを買った。戻って来るなり「遅い」と文句を言う。


「急いだ家来に向かって、その言葉は許せん」


「俺が何を言おうが俺の勝手だ」


「羽前、私は気にしていないからいいよ」


「そちは此奴に対し厳しさに欠ける」


 雰囲気がぴりつき荒々しい。透かさず二人の間に入って背中を押す。


「早く帰ろう」


「押すな」


「急かすな」


 仲を取り持つのは大変だ。ちょっぴり泣きそうになった。



 陰陽屋に着いた。すっかりここが我が家である。


「羽前、バニラに煮干しをあげて」


「我は心が広い主だ。家来の頼みを叶えてやるぞ」


 餌をやる為、五尾は台所へ向かった。


バニラを発見した、いい報告は後、佐里に電話で伝えよう。


 洗面所に入り、ドライヤーを手に取った。


「これは濡れた髪を乾かすドライヤーっていうの。これで君の翼も乾くよ」


「チュン?」


「怖くないからね」


 オンにして暖かい風が起こる。不安そうだったが、次第に雀は慣れ羽毛は乾ききった。


「飛んでみて」


 翼をばたつかせ飛び、狭かった為ドアにぶつかる。大きな音が鳴った。


「大丈夫!?」


「チュン……」


 この子は他の雀より鈍くさいようだ。


 玄関の引き戸を開け、空は青くなっていた。


「雨が降った日は気をつけてね」


 せっかく仲良くなれたのに別れが名残惜しい。


「チュチュン」


 雀も虹と同じ気持ちみたいだ。


「いつでもいいから遊びに来てよ。またね」


 向かいの屋根に止まり此方を見つめる。


 笑顔で手を振った。暫く動かず、そして飛び去ってしまう。


「お前、まだ着替えていないのか」


 久慈がタオルを投げ渡した。黒いティーシャツにジーンズ。シンプルだが似合っている。


 未だ少し湿った髪を拭く。


「自分の事は後回しだったから。わざわざごめん。気遣わせちゃった」


「そんな事はどうでもいい」


 顎で二階を示す。早く行けと彼の声が聞こえてきそうだ。


 黙って従い自室に入り、引き箪笥から水色の狩衣を選ぶ。指貫も足袋もはき替えた。


 時刻は四時を回っていた。小学校が終わった頃である。


 電話をかけ繋がった。


「もしもし、宇川さんのお宅ですか」


『陰陽屋さんの声だ!ひょっとしてバニラが見つかったの』


 電話に出た者はちょうど佐里である。陰陽屋と認識している。が、妖専門なのは知らない。


「そうだよ。佐里ちゃん、今から来られるかな」


『うん。すぐお母さんと行くね』


 ここにいなくても彼女の喜びを強く感じる。偶然でも羽前が見つけてくれてよかった。


 台所には煮干しを食べるバニラ、羽前、ザッシー、ほわとわんまでいた。


「白猫、可愛い」


 座敷童子が頭を撫で撫でする。

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