新たな仲間
「私の迷いを解決してくれました。謝礼金なら受け取って下さいますか」
「はい、頂戴します」
ただ働きが嫌な彼は貰える金を貰う主義だ。
「勝手に……」
口を塞がれた。結構強く力ずくで、言葉なき圧を感じる。
「う、ううう!」
息苦しい。引っ張っても無駄だ。
「お二人を見ていると退屈しませんね。では、失礼します」
助けてという願いは通じず、翳りがすっかり消えた賢治は帰って行った。
やっと手を離した。十分な息が吸える。
「久慈、勝手に決めないで」
「うるさい」
悪びれておらず平然とする。
「よくやったぞ。家来」
突如、人形の五尾は現れ、驚いて心臓が跳ねた。
「いたの。羽前、家来って誰?」
「そちは優れた働きをした。気に入った故、家来にしてやろう。喜べ」
彼の中での決定事項らしい。
「喜べって言われても」
これは喜ぶべき事なのか。違う気がする。
「俺は最初からクソ狐の気配を知っていた」
最初から羽前がいて姿を隠し、成り行きを見守っていたようだ。
「教えてよ」
「教えるなんて面倒だ」
本心を漏らす。
「貴様、クソ狐だと」
「文句あるのか」
空気が殺伐としている。一戦やり兼ねない。
「喧嘩はダメ」
頭に触れてむっと視線を送る。
同時に顔を背けた。
「仲良くして」
「断る」
「我の台詞だ」
頑固な彼等は似た者同士。揃って眉を寄せる。
「虹のお陰で賢治は前に踏み出せた。同じく我も踏み出せたぞ」
耳元に口を寄せ、「謝意を表する」と鮮やかに微笑む。
我を忘れて見入る。とても綺麗だった。
「どう致しまして」
とびきりの笑顔で答えた。
自分なりに解決ができた事にしていいかな。
いいよね。自問自答した。
「我は決めたぞ」
「何を決めたの」
「ここを住処に定める。よいだろ、家来。台所付近の部屋が空いている事を確認した。そういえば座敷に毛玉二匹と座敷童子を見た」
五尾は孤独を味わい、由真がそれを癒してあげた。彼女が亡くなりまた孤独になった。虹と出会い、温かみを期待し求める。
「羽前がいたら、もっと楽しくなりそう」
ザッシー、ほわとわんを紹介しよう。あの子達なら新しい仲間を快く受け入れる。
「なりそうではなく、楽しくなるだ」
後ろから抱き竦められ、少女は固まり動揺が広がった。
「ちょっと……!?」
「中々の反応だ」
覗き込んで反応を面白がる。感情が表れやすい顔は確実に真っ赤である。
「俺は反対だ。今すぐ出て行け」
「虹の許可は貰った」
余裕な雰囲気を漂わせた。
睨み合いの火花がバチバチ散る。
「落ち着いて久慈」
「お前の所為で、落ち着けねぇんだよ」
謎の言葉は謎のまま。争い声が騒がしく詞蔵陰陽屋に響き渡った。




