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詞蔵陰陽屋  作者: 蓮華
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無意味な戦い

 苛立つ久慈の念が伝わった。


 立ち上がって虹はダッシュした。普段から優しさを愛嬌みたいに振り撒いて欲しい。


 無理な願いかな。瞳が潤んだ。



 時が経過して到頭夜になった。


 黒い夜空。街灯がぽつぽつ道を照らす。人々は我が家の中だ。


 商店街の賑わいは当然なく、ひっそりと物寂しい。


「しくじるなよ」


 あらかじめ念を押す久慈。


「大丈夫。安心して」


 疑いの目を向ける。少しは信用を得たいものだ。


 数珠には一つ五芒星が彫ってある。瞬移しゅんいの数珠と呼ばれ、瞬きの間に遠隔地でも移動できる。


 詞蔵家の陰陽師が何年にも渡り、試行錯誤を重ねて完成させた。


 印西は先祖が残した書物や巻物を虹に読み聞かせてくれ、忘れた事より覚えている事の方が多い。


 実際試して失敗も成功も経験し、現段階では後者の確率が高かった。


「瞬移の数珠よ。我が思い浮かべる地へと運び給え」


 行き先の景色を強く思い浮かべて無心を保つ。雑念は失敗を招く為払う。


 二人の姿が瞬間的に消えて邸の目前にいた。無事移動は完了し、周囲が闇一色で塗り潰され不気味だ。


「大丈夫だったでしょ」


「まぐれだな」


「実力なのに」


 祖父なら誉める。人は誉められると嬉しい。何事にもやる気が出て成長にも繋がっていく。


「そろそろ五尾も俺達の存在に気づく頃だ」


 戦いは回避して話し合いでの解決が最も望ましい。


「ねえ、久慈。霜松さんが邸を取り壊したい本当の理由、薄々悟っているよね」


「ああ、何となくな。虹――」


 空気に緊張が滲み、一点を睨みつける。


 名に籠もる意味、様子で存在を了した。


「現れろ!」


 白い五尾は姿を現す。双眸の奥底で怒りが燃えた。


「再びこの地に足を踏み入れたな。宣言通り容赦はしない。我は易々と退治されんぞ」


 五本の尾が天を差し気は荒ぶる。


「聞いて。私達はあなたを退治しに来た訳じゃないの」


「陰陽師の戯言など信じられるか」


 激しい風が吹き、怒りに呼応する。


 髪と袂は揺れ動いて踏ん張り、飛ばされそうな風だ。


「お願い。信じて」


 頑なに心を閉ざし、由真に見せた優しい目とは程遠い。


 近寄ると袖が切れて血が流れた。


 近づけばどうなるかを教えた。


 五尾は神通力だ。霊妙摩訶不思議な何事でも成し得る力を持つ。


「此奴に話を聞く能力はゼロに等しい。お前が何て言おうが退治するぞ」


「退治なんかダメ、絶対ダメだよ!」


 虹にできた傷の所為で、火に油を注ぐ結果となる。


 手の平から妖刀を出して久慈は斬りかかった。


 俊敏に飛んで避ける。


「やはり陰陽師の言葉は信用できない。妖刀を振り回す生意気な付喪神だ」


 白い光が五尾を覆い隠し、霧散して人形をとった。


 髪は銀色で青紫色の瞳。精巧な人形みたいに綺麗すぎる顔の青年。


 羽前の正体が五尾だった。


「かかってこい。貴様なんぞが我の身に、掠り傷をつけられるか疑問だが」


「その言葉、後悔させてやる」


 低い体勢で踏み込む。腹の鋭い一撃を危うげなく躱す。


 刀先が下から上にきた二撃。


 太股があった場所の空を突いた三撃。


「当たらなければ無意義だ」


 足払いには引っかからず軌道を読み、余裕綽々な様子である。


 羽前は無傷で狐火を放ち、久慈に纏わりつく。


「いくら妖刀でも火は切れないだろ」


忌々しげに眉をしかめた。


陰力いんりょくよ。我に力を貸し給え。清き水で消滅を齎せ」


 渦巻く水が幾つもの狐火を消滅させた。


 陰力は攻撃、浄化を司る。月、闇、水の性質を引き出す事が可能だ。


「黒水晶を手に納めて」


 聞こえているのに虹を無視した。


 最初より動きと刀捌きは速度を増し羽前が押される。間合いを空けても詰めた。


 彼は一人でも鍛練に励み、祖父を相手によく勝負を行った。刀の使い方は自己流だが十分強い。剣術に長ける。


 攻めが優勢だ。刃が肩に到達してしまう。


「虹!」


 腹立ちの訳は結界を張って妨げたから。陽力と陰力が合わさり陽陰力よういんりょくが生まれ防御できる。


 五尾は助けられた事に驚き戸惑う。


「邪魔するな」


「貴方がやめるまでやめない」


 揺るがぬ心で激情を受け止めた。ここで引いたら無用な血が流れる。


 暫く持ったが妖刀によって結界は破られた。

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