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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第四章 輪郭編
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第63話 返却と男前

 事件から一週間が経過した。店の仕事は休んだままでいる。

 毎日夕方近くになるとメイさんから「送迎は?」とメッセージが届く。

 その都度、ごめんなさいと返信をしているが、あまりにも毎日確認してくるのでドライバーに意地悪されていないか確認したら、すごく大人しいよと返信が来た。

 あの夜の脅しは功を奏しているようで一安心だった。


 金曜日、クスメギが街にやってきた。本来なら月末の検査までこちらに来る予定はなかったはずなのに、おれが事件を起こしたせいで迷惑をかける。

 部屋に上げると近況を尋ねられたので、とにかく反省していると伝える。


「そのまま大人しくしてくれていればこっちも楽なんだけどな。例の2人組、いや3人組か、あいつらの後ろに国家安全部が出てきたぞ。お手柄だよ、結果的にな」


「えっ…それじゃあやっぱりあの話は罠だったってこと?」


「だろうな。店に来て女を紹介した男がいたんだろ?そいつも仲間だ。というかそいつが中国に雇われて、女と男はさらに下請けって格好だな」


「そうだったんだ… よかった本物のお客さんじゃなくて」


 罠だとわかった瞬間にじわっと安堵した感覚に包まれた。

 騙されておいてそれはどうなんだと思ったが、最悪のシナリオではなかったのだから、やっぱり罠でよかったと改めて思った。


「さっき警察署に行って事情を説明してきた。聴取の同行は免除されたからな」


「そうなんだ。すまないな、いろいろと手間かけさせて」


 そうでもない、ママに会えるしな。そう言ってクスメギは笑った。


 これ返すよ、と言ってスタンガンを渡そうとすると、本隊が出てきたら危ないから持っていろと受け取りを拒否された。だがおれの意思は固い。


「いや、いらない。こんなもん持っているから倒そうとするんだ。逃げるの一択の方が逆に安全だとおもう。どんな奴が出てきても逃げ切るよ」


「今回の件で、あんたの警戒心が必要十分だってことはわかったけど、本当に大丈夫か?万が一のときにあるとないとじゃ致命的な差になるぞ」


「本当にいいんだ。おれの目の前に悪意を持った奴が現れたとしても相手をしない。逃げるだけ。これまで必死におれを守ってきてくれた人たちには申し訳ないけど、武器は持たない。誰かを傷つけたいわけじゃないんだ。おれは襲ってくる奴らからただ逃げたいだけだから」


 取り上げるのならまだ押し問答は続くのだろうが、持たないと言っているものを持たせるのは不可能だと諦めてクスメギはスタンガンを受け取ってくれた。


「17時から飯食いながらママと事情の擦り合わせするから、あんたも同席してくれ。その後の予定はないけどあんたはどうする?今夜から働くのか?」


「店長に聞いてみる。どっちみち車足りてないから出てくれって言われるのはわかっているけどな。休んでよければ…そうだな、やることもないし送迎行こうかな」


 クスメギとはいったん解散した。すぐに店長に連絡をして事の顛末の説明をした。

 自分がとある事件の当事者であり、それが原因で身柄を狙われていること、今回の件は不確定なまま対応したが結果的には正しかったこと、今後も店で働かせて欲しいと思っていること、それらを伝えると、身柄を狙われているという部分に強く反応があったので、攫いに店へ直接乗り込んで来ることはないと思うがなんらかの形で迷惑をかけるかもしれないと正直に言った。

 店長は、話はわかったが処遇はママに決めてもらうと言っていた。


―――――


「ごめんねハナちゃん、私があの人の言っていることを真に受けたばっかりに」


 指示された店に着くなりアヤママに謝られた。ママは何も悪くない。


「ぜんぜんママのせいじゃないですよ。怪しいってだけで暴れたのはおれなんで」


「でも、大変だったでしょう。きょうまで留置所に入れられてたんでしょ?」


「はい?留置場?それ誰が言っていたんですか?」


「え?違うの?事件に巻き込まれて警察のやっかいになったってクスメギさんが」


 クスメギを睨むと目を逸らしやがった。もうちょっとマシな説明をしろよ。まあ、どうして狙われているのか説明できないから中途半端になったのは想像できるけど。

 店長に話をした内容をそのまま伝えて、雇用継続か解雇かどうするか尋ねた。


「私ね、人の考えていることがわかるようになってずっと一人だったの。だって誰にも言えないじゃない?それでもお店を任されてお客さんが喜んでくれているからいいと思ってたの。誰にだって秘密はあるもの。それがちょっと特別なだけよって。

 でも、ハナちゃんやクスメギさんに会って、私はもう孤独じゃなくなったのよ。私が頭の中を見れないハナちゃんも、見られても平気だって言うクスメギさんも、二人がいるとすごく安心するの。だけど二人を囲うわけにはいかないじゃない。

 だからね、私は二人が来てくれる私の居場所を守るわ。私のためにね。だからハナちゃんは安心して働いてちょうだい。クスメギさんもいつでも来てね、お金はいいからね」


 アヤママの男前発言が炸裂して、おれもクスメギも見惚れてしまった。

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