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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第三章 地元編
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第51話 夜食と愚痴

 コンビニに着くと「なんか食べる?」とメイさんが訊いてきた。

 確かに小腹も空いているしなんか食べておこうと思い「おれも行く」と言ってエンジンを切ってコンビニに入る。

 深夜のコンビニでドレスのオンナのコと黒服みたいなのを見かけると店に内緒で付き合ってんのかな?と下世話なことを思ったけど、彼らもこんな感じだったのかも。

 そんなことを考えながら、サンドイッチと無糖のラテを買う。

 本当は甘いラテの方が腹が膨れていいのだけど、浮き輪肉が育ってビバンダム化してしまうので、せめてもの気遣いで無糖にしておいた。


 車に戻ろうとすると、メイさんに「一緒に食べよ?」と呼び止められた。

 彼女のグラタンが温まるのを待って一緒に店を出ると「あそこの公園で食べようよ」と言って、道の向かいにある児童公園に誘われた。

 芝生の公園の隅のあたりに東屋があり、そこで深夜の食事会が催された。


 ラテを一口飲んで、彼女の愚痴を聞くべく水を向ける。


「もう一人のドライバーさんとなんかあった?」


「え、なんで?噂になってるの?」


「いや、彼の車に乗りたくないオーラが半端なかったから」


「そんなに?バレバレ?」


「他の人は知らないけれど、おれにはモロバレだったよ。車いつくるの?とか」


「なんだ、じゃあもっと早く言えばよかった」


 北方面担当のドライバーさんが送迎中にメイさんを口説いていたらしい。やんわり躱していたのだが、あるとき人気のない道に入って車を停められて唇を奪われそうになったそうだ。彼女はこうして最後の1人になるから狙われたのかもしれない。

 そんな彼女は、別にチューぐらいいいけどさ!と言ってグラタンをフォークでがしがし突いている。全然よくない、めちゃくちゃ怒っている。

 怖かったが抵抗してその日の乱暴はそこで止まったが、それ以降も好きだの付き合ってくれだの彼の口説きは続いたらしい。こいつの鋼のメンタルすげえな。


 ある日また変な道に入られそうになりメイさんは、元カレがDV男でおまけに性病を移されていまも苦しんでいる。ストーカー化もしていてたまに帰宅を見張られている、と告白したそうだ。もちろん嘘だそうで。

 それを聞いた彼の口説きは止まったが、送迎の際に一番最初に降ろされるようになり、近いコたちはなぜ遠回りをさせられるのかと訴えたが、彼は開き直って「おれこいつのこと嫌いだから早く降ろしたい」と言ってルートを変えず、他のコたちに申し訳ない気持ちで送迎してもらっていたそうだ。なかなか苦しい立場だな。


「その、性病云々は自分で考えたの?お客さんに伝わったら詰むじゃん」


「一番仲のいい友達に相談したらそう言えっていうから。あと、あいつ喋ってないし」


「そうなんだ。口説かれてることママとか店長には相談しなかったの?」


「だってそうしたら送迎いなくなってみんな困るじゃん。一台しかないのに」


 だから遠回りさせられているコたちも店にクレーム入れられなかったのか。


「ハナちゃんがドライバーになるって聞いてほんとうに安心したもん」


「わかんねえぞ?おれも暗がりに連れ込んで襲うかもしれないじゃん」


「本気ならいいよ?でもわたし子供二人いるよ。お父さんになってくれる?」


「え?まじで?それも友達の作戦?」


「ううん、ほんとうにいるよ。写真見る?」


 そう言って彼女はスマホで子供たちの写真を見せてくれた。

 なぜかびしょびしょに濡れているお姉ちゃんと弟が全力で笑っている写真。お姉ちゃんは小学1年か2年生ぐらいか?弟は園児だろう。

 うちの子供たちにもこんな時代があったなあと何枚か画像を見て懐かしく思う。

 気付けば涙がこぼれていた。


「え?なんで?なんで泣いてるの?チョメれなくて悲しいの?」


「ああ、うん、なんでもない。仲良し親子でよかったなって」


「ちょっと、ハナちゃん大丈夫?えー、どうしよう…」


「ほら、歳取るとおしっこ漏れたり涙腺緩くなったりするやつじゃない?」


 メイさんはバッグの中からポケットティッシュを取り出して渡してくれた。

 遠慮なく鼻をかんで「さて帰るか」そう言って立ち上がりコンビニでゴミを捨てて車に戻る。メイさんが心配そうにしてくれているが、どう言ったものか。

 車を発進させて道順を尋ねるついでに気になったことを尋ねた。


「お店に出ている間、子供たちはどうしてるの?誰かに預けているの?」


「お母さんと4人暮らしだから、お母さんが面倒みてくれているよ」


「そうなんだ。じゃあ安心だね」


「そういえばお母さん、ハナちゃんとそんなに歳変わらないよ、ハナちゃん42でしょ?わたしが18のときの子だからお母さんは44だ。どう?わたしのお母さん?わたしでもいいけど。あ、二人とも付き合う?」


 どこの石油王だよ。めちゃくちゃすぎるだろ。

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