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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第二章 東京編
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第31話 包囲と電撃

 腹がぱつんぱつん過ぎたので少し店で食休みを取ってから店を出た。

 山下公園でも行くかと言われ、少し歩いたほうがいいかと思ってそうすることに。


 関帝廟通りをそのまま進み山下町公園を通り過ぎて南門シルクロードへ出る。

 サッカー選手のようにクスメギの首振りが激しくなっている。警戒レベルが高い。

 「マズいようなら車に戻るけど」と不安を漏らすと「この腹じゃ走れないから同じだ」と進路を変えるつもりはないようだった。


 開港通りに向かって歩いていると左手のコインパーキングからぞろぞろと男たちがこちらに向かってくるのが見えた。

 「チッ」とクスメギは舌打ちをしておれを庇うような格好で男たちに対峙するも、いかんせん向こうの人数が多く、壁のようにぐるりと囲まれてしまった。

 ただ、ISのように強引に掴みかかるようなことはなく、じりじりと詰め寄りながらサークルをコインパーキングの方へ移動させている。逃走車の近くで一斉に襲い掛かるつもりなのだろう。


 襲撃があったら全力で逃げると言っていたクスメギが盾になっている。

 いよいよとなればリクスを負ってでも時間を止めるつもりはあったが、やり方が見当もつかない。目を瞑って強めに「止まれ」と念じてみても何も起きなかった。


「たぶんこいつらは金で雇われただけの連中だ、雇い主は国家安全部だろうけど。見たところ武器は持ってなさそうだからなんとかなるかもな」


 クスメギは割と冷静に状況を把握しているようだった。

「おれはどうすれば?」と尋ねると「俺から離れるな」とイケメン台詞。

 次の瞬間、クスメギはジャケットをめくり脇から太めの特殊警棒を取り出した。

 よくあんなの脇に隠してたな、という程度にでかい。


 警棒を正面に構えると、スイッチを入れたのかバチッとやばい音が響いた。

 男たちはたじろいで後ずさりし、サークルの形がいびつな楕円形になる。

 が、狙いはあくまでもおれなわけで後方から二人襲いかかってきた。

 足音を聞いてすぐさまクスメギは反転し、最短距離の男の腿に電撃を食らわせる。

 バチンと音がしたと同時に悲鳴を上げて男が倒れる。

 もう一人がおれに掴みかかろうとしていたが、陣形が崩れていたおかげで避けるスペースがあり奴の腕は空振りする。手加減でもしてんのか。

 すると奴にもクスメギの電撃が炸裂して、二人目もその場に倒れた。


 コインパーキングからの脱出口が開いたので道に出て逃げるのかと思いきや、最初に倒した男に追撃を浴びせた。

 男は「ギャッ」と短い叫びをあげる。そしてもう一度。

 殺す気なのかと背筋に冷たい感覚が走る。男共からも怯える感情が伝わってくる。

 クスメギは小声で「背後関係を調べるために一人は残す」と教えてくれた。

 次に大声で男たちになにか告げた。無論中国語で。開放したら見逃す的な感じ?

 ビビって動けない男たちに「ア?」と叫ぶと、慌てて男たちは逃げ出した。

 二人目に倒された男は自力で起き上がれないようで、仲間に担がれて行った。


 男たちが霧散するとクスメギはどこかへ電話を掛け、確保した男を連行するよう要請していた。まるで警察みたいな立ち回りだけど、外事室ってなんなんだ。


「無事だよな?なんとかなってよかった。やっぱり中華街は危険だったか」


「どこに行ったって狙う奴らは狙ってくるだろ。それよりその警棒すごいな」


「警棒じゃなくてロングバトンスタンガンな。130万ボルトに耐える人間はいない」


 130万ボルトがいかほどの電撃なのか想像もできないが、試しに食らってみるには恐ろしすぎる威力だから「ちょっとやってみて」とは言えない。

 しかしあの威力は魅力的だ。外出のたびにびくびくする必要がなくなるだろう。


「すげえな、おれもそれ欲しい。支給してくれないのか?」


「自分を守る道具としては使い難いと思うぞ。先端を当てないといけないから掴まれるような距離だと当てにくくなる。普通のスタンガンが用意できるか聞いてみるよ」


 割と呑気な雰囲気で話すおれたちの足元には、呻き声を漏らす襲撃者一味の男が未だに動けないで倒れている。気の毒だけれど、まあ、自業自得ってやつだな。


 ほどなくしてスーツ姿の男性二名が現場に到着しクスメギから事情を聴き、起き上がることのできない襲撃者を担いで連行していった。

 その際に頭の先から足元まで、まるで値踏みでもされているような視線を向けられたがおれには話掛けてこなかった。なんか感じ悪いな。


 彼らの車を見送りながら「あの人たちは警察か?」と尋ねると「公安警察だよ」とクスメギが事もなげに言う。まじか、普通に警察みたいな感じだったけど。

 公安警察なんて同僚でもお互いにどんな捜査をしているのか知らない単独行動ばかりだと思っていたが、ツーマンセルで動くこともあるとクスメギが教えてくれた。


 見物人たちの好奇の目もあったので、山下公園に行くのは止めて帰ることにした。

 気分が落ち着いたので再び腹に重さを感じつつ、関帝廟通りを戻って駐車場へ戻る。

 一度散った奴らが再び待ち伏せしていたら面倒なので、足早に歩くせいで横腹が痛くなってくる。食い過ぎたおれも悪いが襲ってきた奴らを恨んだ。


 ―――――


 コインパーキングに着きクスメギのポンコツに乗り込み都内へ向かう。

 湾岸線は本牧埠頭で渋滞が始まり、ベイブリッジの上をじりじりと進んでいく。

 橋の上に長い時間滞在させられるのはどうも気分的に落ち着かない。パニック映画の影響だろうか。なにか災害が起きるにしても地上にいるときにしてほしい。


 ずっと続く赤いテールランプを眺めながらさっきの襲撃を思い返していた。

 相手がチンピラ風情だったせいで事なきを得たが、向こうも武器を持っていたり周到な作戦が用意されていたならスタンガンぐらいでは歯が立たなかったのではないか。


 ISの連中みたいにゴツいのが群れで襲ってきたらクスメギだけで捌けるのか?

 素手の殴り合いならおれといい勝負なぐらい弱そうだけどこいつ。

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