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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第十一章 真相編
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第214話 娘と諜報員

 なるべく身体を休めるために眠れないにしてもベッドに横になって目を瞑っていろんなことを考えていると、少しうとうとし始めた。そのタイミングで携帯の着信音が鳴りまた目が覚めてしまう。携帯の表示を見るとSMSメールが届いたようだ。

 それはパウラさんからだった。画像とメッセージと2通送られて来ていた。


 画像は、弾けるように笑うマリアちゃんが自撮りのアングルで嬉しそうに笑うパウラさんと一緒に映っているものだった。パウラさんの腕には赤ん坊が抱かれている。

 赤ん坊が着けているスタイ、ボルチモアで渡した風呂敷を裁縫したものだった。

 メッセージの方には『Un pl|acer conocerte, papá《はじめましてお父さん》. |Me llamo Sayokoわたしはサヨコです.』と書かれていた。パパって…サヨコって…


 すぐにモンテビデオの時刻を調べると6時過ぎだった。メッセージを送って来たということは起きているはず。二人を起こさないようにそっと別荘を抜け出し海沿いの道に出たらパウラさんに電話を掛けてみる。2コールぐらいですぐに繋がった。


『おはよう、パウラさん。メッセージ届いたよ』


『おはよう。そう… 黙って産んだから送ろうか迷ったのだけど、あなたがどこか遠くへ行ってしまう気がして伝えることにしたの』


『うん。ありがとう。あのときの子ってことなんだよね?』


『なに?疑ってるの?』


『違う違う。実感がなくて。言ってくれれば傍にいたのにって』


『ウフフ、大丈夫よ。マリアがいたし。それにサヨが私から離れてどこかへ行ってしまっていたから、あなたを独り占めするのは気が引けたの』


『じゃあ、サヨさんは今も傍にはいないんだ』


 自分の声が震えているのがわかった。ごめん、パウラさん、おれのせいで…


『そうね、あれ以来話し掛けて来ないわ。でもね、この子が産まれたときにサヨだって思ったの。サヨがこの子として私の元に戻って来たって。私にはもう不思議な力はないけれど、それだけは…母親の勘?かしらね』


『そうなんだ。それでサヨコちゃんなんだ』


『ええ。サヨの顔は見たことがなかったけれど、きっとこんな顔をしているはずよ。すごくかわいらしいのよ。残念だけどあなたの面影はどこにもないわ。ウフフ』


『父親に似なくてよかったよ。それでね、おれ明日の朝から元の世界に戻るために最後の仕上げに入るんだ。いますぐ会いに行きたいけれど、たぶん会えないと思う』


『やっぱり。そんな気がしてたわ。ねえ、一つ聞いてもいい?あのときあなたは、私とサヨとどちらを愛してくれたの?』


『そんなのどっちもだよ。サヨさんとパウラさんの二人で一人だったから。言葉にしたかったけれどパウラさんはおれのこと恋愛の相手じゃないって言うから』


『アハハ。そうね。そんなことも言ったかしらね。愛しているわ、ハナダミツル。サヨもあなたもいないけど、二人がこの子に宿っているから寂しくないわ』


『パウラさん、初めて病院で会ったときから今日まで、本当にありがとう。約束はできないけれどいつかまた。娘をよろしく頼むね。じゃあ元気で』


 通話を切って海沿いの道を歩きながらべっしょべしょに泣いていた。なんの涙かわからないけれど、嬉しいのやら寂しいのやらとにかく涙と鼻水が止まらなかった。

 出すものを出し切ったら寝巻のTシャツで顔を拭いて、そいつを脱いで丸めて半裸になって別荘に戻った。なんだか勝手に逞しくなった気分だった。


 別荘に戻るとエントランスの照明が点いていたけれど二人の姿はなかった。

 もしかして探しに出ちゃったのかと思いそっと二人の寝室の前で耳を澄ますと、ヨハンソンの部屋からはわざとらしい鼾声が聞こえてきて、アドラさんの寝室のドアは少し開いていて中にごろごろと寝がえるフリをする彼女の姿が確認できた。

 二人の気遣いに危うくもう一度泣きそうになったがぐっと堪えて寝室に戻った。


 ベッドに入り娘の写真を見てニヤニヤしているうちに眠りに落ちた。


―――――


 朝5時に携帯のアラームが鳴る。ひとまず止めて…スヌーズで再びアラームが鳴る。それも一旦止めて…三回目のアラームでようやく起床。めっちゃ眠かったけれど頑張って起きた。トイレへ行き、洗面所へ直行して顔を洗って歯を磨く。

 部屋で雨具の下に着るものに着替え、リビングへ顔を出すとヨハンソンがキッチンでなにか作っているので声を掛けると昼食のサンドイッチを作っているそうだ。

 車へ荷物を積み込んでいたらしいアドラさんがリビングにやってきたので「おはよう」と声を掛けるともじもじしながら「お、おはようミツル」と返してくれた。


 「もしかして、昨夜、後付けてた?」と訊ねると「さあ、寝てましたけど」と言うので「ヨハンソンは?」と彼に尋ねると「え、私も熟睡してました。何かあったのですか?」と言う。絶対に二人でついて来てるじゃん!全部聞かれてるじゃん!


 「怒ったりしないから、どこから聞いてたの?」とアドラさんに訊ねると「だいたい」と白状した。「最初から?」と言うと「最後まで?」と言われた。

 かぁーーー!これだからスパイって!頭覗かれなくても隠し事とか無理じゃん!


 知ってるならいいやと思い、娘の写真を二人に見せた。

 「彼女が思念体と融合してた方ですか?」とヨハンソンに訊かれ「そうだよ、あのときは助かった、ありがとう」と言うと「チッ、この女に心を奪われるぐらいなら協力するんじゃなかった」と妬いていた。

 アドラさんは「ミツルの娘、美人になりそうですね」と褒めてくれたので「お母さんが美人だからね」と言うと「は?その女は関係ないです」と冷たい声で言われた。

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