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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第十一章 真相編
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第207話 秘書と大男

 見知らぬ女性の名刺には「在ホノルル日本総領事館 総領事秘書」と肩書があった。総領事秘書?誰?名前を見てもわからない。イチカワ?まじでわかんねえ…

 名刺から視線を外し、誰だか当ててみろという顔をしている彼女をもう一度見ていると、なんか、うっすらどこかで会った気がしてくる。なにこれ新手の詐欺か?


「覚えていらっしゃらない?確かにあの時、私は紹介もありませんでしたね」


「えーと、ちょっと待ってくださいね。気持ち悪いかもしれないですけど、お顔をよく拝見させてください。いますぐ思い出しますから」


 そう言って彼女を見ると、じっと目を見られる。この目になんか記憶がある…


「あっ!キノコ!!」


 失礼にも程があるが口から出てしまったものは戻せない。失言をひとまず謝る。

 「ご、ごめんなさい。髪型がマッシュルームみたいだったので…」謝れているのかわからないがとにかく頭を下げた。

 髪が伸びていてわからなかった。というか離れて座っていたのでよく見えてなかった。向こうはそりゃ覚えてるだろうな。アサガオさんと雪合戦をして事務次官をケチョンケチョンにしたのだから。


「ああ、気にしないでください。当時は外国人のお客様からよくコケシのようだ言われていましたから。キノコと言われたことはありませんけど。ふふふ」


 もう一度とんだ無礼を詫びる。去年の春にDCの大使秘書からハワイの総領事秘書になり、年末休暇を終えて明日から仕事に戻ると教えてもらった。

 「ハナダさんはよくハワイに行かれるんですか?」と訊ねられ「いえ、初めてです」と答えると「ご旅行ですか?」と突っ込まれ、観光ですと答えそうになったけれど、別に嘘つく理由もないなと思い「人探しです」と答えた。

 さすがに「誰を?」とは訊かれなかった。それほど興味もなさそうだし。


 話をしているうちにベルトサインが点いて飛行機が動き始める。

 離陸の緊張は何回乗っても慣れられそうにない。イチカワさんは平気そうだった。


 機内はすぐに就寝モードになり、彼女はアイマスクをして寝に入る。

 おれも一度は寝ようと思ったが昼間ヒマすぎて疲れてないのでうまく眠れず小さなモニターで映画を観た。ハリソン・フォードがめっちゃ歳食ってた。

 そのうちに眠くなって目を瞑るとすんなり眠れた。


 がやがやする人の声で起きると朝食が配られ始めていた。

 「おはようございます」とイチカワさんに声を掛けられ「おはようございます」と返す。少しして客室乗務員に飲み物を尋ねられ答えると、パンと珈琲が提供された。


 「よく眠れましたか?」などとイチカワさんと話をしながら朝食を腹に納め、向こうに着いたらどうするのか訊かれる。到着ゲートに迎えがいるらしいので、全部お任せですと笑って答えた。「DCの大使館に行ったのも事前に聞いてなかった」と言うと「事務次官も大使もあなたの存在は知りませんでした」と教えてくれた。


「あの、失礼なことを聞くようで恐縮なのですが、ハナダさんて一体どういう方なのですか?アサガオさんのお知り合いで、超常的な能力の持ち主だということはあの場にいたのでわかってはいるのですけれど」


 彼女は声を落としてそう訊ねてきた。ここはなんと答えるべきなんだ?


「飲み屋の黒服でドライバーでしたね年末まで。あとは喫茶店のマスターとか店舗デザインもしてました。いまは全部辞めたんで晴れて無職です」


 彼女は「はあ」と言いつつ納得がいっていないようだ。だけどこの世界の人間じゃないと言ってもそれはそれで説明が難しい。ハナザワさんあたりに聞いて欲しい感じ。


 そんなこんなでホノルル空港に到着し、入国審査を通過してバゲッジのところで彼女と別れた。税関を通過し到着ゲートまで辿り着くとアロハシャツを着た懐かしい彼が待っていた。あんなにでかかったっけ?前より身長伸びてねえか?


「お久しぶりです、ハナダさん!」


 エルリカさんをNSAが監視していると聞いていたので、再会があると思っていた。

 相変わらず人懐っこい笑顔で両手を広げてこちらにやってくる。軽くハグをすると腕が使えないのをいいことに案の定唇を狙ってくるので首を捻って頭で顎のあたりを押しやった。腕を振り解いて安全距離を取る。


「久しぶりヨハンソン。すっかり元気そうだけど撃ち洩らしはなかったのかな?」


「お蔭様で病気はすっかり完治しています。ハナダさんも元気そうですね」


「ああ、いよいよって時に風邪ひいてる場合じゃないからな。ところでアドラさんは来てないの?てっきり一緒だと思ったのだけど」


「アドラはあれから失踪しました。いまはどこで何をしているのか…きっと私たちに気を遣って身を引いたのだと思います。いい奴でした」


 そんなわけねえだろと思いつつ、カウアイ島で合流するんだろうなと踏んで、それ以上のことは訊かなかった。もし本当に会えなかったら寂しいけれど。


「それで、これからどうするんだ?すぐにカウアイ島に移動するの?」


「2時間後にカウアイ島のリフエ空港行きの便が出るのでそれに乗ります」


 チケットを用意してくれていたので金を払おうとすると拒否された。


 次の飛行機もスーツケースを預けるのでチェックインカウンターへ。

 もう一度荷物を預けて保安検査場へ向かう。パスポートを見せて通過。

 搭乗ゲートが開くまで1時間ぐらいあるので、座ってお茶ができる店を探すことにする。スタバやバーガーキングがあるけれど、せっかくハワイまで来てるのだからそれっぽいところにと思っていたら店の中がカラフルな色に塗られた店があったのでそこにする。結局ハンバーガー屋だったのだけれど。

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