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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第十章 継承編
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第199話 移植と報告

 さっさとミャンマーの話を聞きたかったのだけどそれを聞く前にここで話ができるのかはっきりさせた方がいいと思って「アヤさんになんて言われて来たんですか」とアオイさんに尋ねると「ハナさんの夜伽のお相手を…」と言うので「そういうのもういいですから」と遮った。

 アサガオさんとアヤさんが内緒話するから立場がわからん。


「次の期から先生たちには会社の顧問になってもらう予定なんだよ。非常勤の社外取締役ってやつだな。実は新年度から外事室は文科省から内閣直轄になる予定でな。下請けの調査会社を立ち上げて俺がそこの代表になるんだ。

 いまの会社の下に入る格好になるから役員のアオイさんにはだいたいのことを知っておいてもらおうと思ってな」


 さっき重大発表とか言ってたけどアサガオさんたちがここに住むの知らなかったのおれだけじゃん。つうか飲み屋の会社って調査会社の隠れ蓑的な存在に思える。


「じゃあ今からアオイさんに全部説明するわけ?めっちゃめちゃ時間かかんない?」


「そうね、基本的な情報だけなら2,3分てところかしらね。アオイちゃん、心の準備はいいかしら?怖かったら正直に言ってちょうだいね」


 ああそうか。アサガオさんが植え付けたら喋らなくていいのか。便利すぎるな。


「はい。大丈夫です。よろしくお願いします」


「じゃあ、いくわね。ゆっくり息をしてリラックスしていてちょうだい」


 アサガオさんがアオイさんの手を握って二人が目を閉じた。どのくらいの情報が流れ込んでいるのかわからないけれど、傍目には何もしていないように見える。


 「師匠のときもあんな感じだったんですか?」と訊ねると「私のときは頭を掴まれていましたね」と言っていた。身体の動きはイメージでしかないと思うけれど、それだけの情報量が多かったのかもしれない。手の動きと集中する向きは重なるし。


 二人が目を開けて手を離したとき、アオイさんはここがどこかわからないような顔をしていた。が、すぐに現在を認識してみんなの顔を一人ずつ眺めていった。

 「気分はどう?」とアヤさんが訪ねるとアオイさんは「はい。いつ知ったのかわからない記憶があって、それが正しいって思える奇妙な感じです」とちょっと気味が悪そうに言っている。ただ、苦しそうな感じはしないので大丈夫なのだろう。

 「この街や日本に関係ないことは省いたからすぐに馴染むと思うわ」とアサガオさんが言った。新しい情報と既知の情報の擦り合わせが終われば違和感はなくなるのだろう。


「記憶といえばあなた、このまえ東京に行ってお医者さんと治療してきたのでしょう?上手くいったのかしら?」


「は?あんたまた医療行為に手を出してきたのか?」


「今回のは勝手にやったんじゃないんだよ。サクラさんに頼まれて精神科医のお医者さんと連携して強烈な自己嫌悪で生きる気力を失った人がリハビリできるように手伝ってきた。アサガオさんは簡単にやってるけど人間の脳の仕組みってまじ難しいよ」


「最初から詳しく聞かせてちょうだい。わかってると思うけど全部よ?全部!」


「じゃあまずは彼女の酷い話からしますね。まじで酷いから覚悟してくださいよ」


 そう言って高校教師だった彼女が生きる意味を見失いサクラさんに保護されるところまでを話し、初めて見た時、全身の力が抜けていて目が怯えていたと言った。

 みな難しい顔になってしまったので「でもサクラさんに見つけられたのは彼女が真っ当に生きてきた証だと思う」と希望を添えて、脳内の操作の話を続けた。

 長期強化を起こしている負の感情のループを解いてリハビリの猶予を作ったことを説明した。シナプス領域という本当に小さい部分で操作したから疲れたと言った。


「それでさ、彼女自身が私はダメな人間だって自分に言い聞かせていたわけだけど、それって彼女の中から生まれた言葉じゃなくて、他人からぶつけられた悪意だと思ったんだよね。だってそこまで自分自身を追い込むのって息止めて自殺するようなものじゃん。それは無理だよ。だから心が弱い人を嘲笑するのをやめようと思ったし、なるべく人には優しくしようと思ったんだよね。そしたら店のみんなから気味悪がられて。ははは」


「上手くいったならよかったわ。ところでそのサクラさんてお嬢さんとはどうなの?それをキッカケに燃え上ったりしないのかしら?」


「言うと思いました。サクラさんはその先生のことが好きなんですよ。スタッフにもバレバレなのに隠してる感じだったからリバビリ中に彼女に取られるぞって脅しておきました。先生、シュッとしてて格好いいし頭いいし金あるし声がエロいし」


「ハナちゃんは人のことは背中押すくせに、自分のことには気付かないフリして決して踏み込まないものね。メイちゃんだって…」


「ああ、昨夜メイさんとリョウ君がここに来て付き合うことにしたって報告してくれましたよ。社長と専務が夫婦なんだから社内恋愛禁止じゃないですよね?」


「ふふふ、そんなルール作ったらどの口が!って怒られちゃうもの。そう、メイちゃんとリョウ君が。ちゃんと食べてる?って訊ねたら送迎でコンビニ寄って夜食も食べてるって言ってたから、メイちゃんにはその時間が大事だったのかもしれないわね」


「ねえねえ、そのメイさんてお嬢さんとは何かがあったのかしら?アオイちゃんはそのコのことご存じなの?」


「はい。メイちゃんはハナさんの心を唯一動かしたお店のコです。そのコもちょっと心が弱いところがあってハナさんがいなくなることで悩んでいたときに別々のお店で働くようにしたら、ハナさん荒れちゃって。すっごい怖かったんですよ」


「その頃、俺も殴られました」


 おいまてクスメギよ。先に殴ってきたのはおまえじゃねえか。

 つうか荒れた原因をメイさんと引き離れたのが原因みたくミスリードすんの酷い。

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