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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第八章 逃亡編
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第153話 親切と乗継

 アドラさんと連れ立ってローハン王の元へ行く。

 彼女が英語でなにか喋りかけて頭を下げている。彼は片手を挙げてまあまあというポーズで苦笑いをしている。たまたまだから、とか言っているのだろう。


『お手柄だったね。一応休暇中ではあるけれど、この国に仕える身として礼を言わせてもらうよ、ありがとう、ミスター・ハナダ』


『おれはちょっと手伝っただけですよ。むしろあなたのおかげで彼らの動向がキャッチできたわけで。感謝するのはこちらです、ミスター・スミス』


『ハハハ、じゃあお互い様だな。君にひとつ忠告をしておこう。誰かからの感謝は素直に受け取るべきだよ。そして恩を返そうだなんて思わないことだ。誰かの感謝を本人に返してしまったら他人には渡らないだろう?感謝は受け取りまた別の誰かに渡す。それで世の中は良くなっていくはずだ。謙遜だけが美徳ではないよ』


 ペイ・フォワード。昔観た映画の少年が言っていたことをこの人は言っている。

 きっと彼も以前に誰かから無償の善意を与えられ、それをおれたちに回してくれたのだろう。別の誰かに渡せ、か。なかなか難しい宿題を出されてしまった。


「18時30分にタラハシー空港から飛ぶのでそろそろ支度をしないといけません」


 あまりのんびりしている暇はないとアドラさんに言われ、ローハン王に別れを告げようとすると、彼が『空港まで行くのかい?それなら送ってあげよう。君らの車は動かせないだろうから』と、親切な提案をしてきた。


『ありがとうございます。その親切、甘んじて受け取っておきます。誰かの為に』


『ハハハ、早速実践してくれてありがとう。僕はここで待っているから』


―――――


 非常線をくぐって車に行き荷物を持って行っていいかアドラさんに確認してもらい、パスポートと財布を取り出す。そしてスーツの入った袋を出して着替える。そこそこの人数の警官に見られていたがどうでもいい。堂島の龍なので気にしない。


 タラハシー国際空港まではローハン王改めスミス捜査官の車で送ってもらった。

 彼の言う通り今まで乗って来たバンは警察の現場検証で動かせる状態ではなかった。もし彼の提案がなければアドラさんはどうしていたのだろうか。パトカー拝借?

 とはいえ、走って逃げるところまで想定していたのかヨハンソンが用意してくれた倉庫は空港と目と鼻の先だったからすぐに到着した。

 南国っぽい素焼きタイルの色合いの空港で、国際空港という割にこじんまりとしている。エントランスの前で車を降りてスミスさんに礼を言う。


『ありがとうございました。せっかくの休暇だから自分のためにも使ってください』


『ハハハ、帰りはのんびり寄り道しながら帰ろうかな。無事の帰国を祈っているよ』


 アドラさんも何かお礼を言っている。その後、携帯の番号を交換していた。

 よくドラマとかの設定にある「昔世話になった」ってこういう感じなのかな。


 ローハンの王、ミスター・スミスと別れて空港の中へ入る。

 アドラさんにカウンターでチケットを買ってもらい渡される。そのままの流れで保安検査場へ。国内線だけどパスポートの提示を求められた。別に止められることもなかったのだが、アドラさんに理由を尋ねると2001年のテロ以来、国内線であっても外国人はチェックが入るそうだ。


 搭乗ゲートで再びパスポートの提示を求められ、飛行機に搭乗する。

 飛行機はLCCみたいな細長い小型機で2列+2列のレイアウト。真ん中のあたりにアドラさんと並んで座る。すぐに離陸してダラスのフォートワース空港まで1時間半ほど飛ぶ。

「現場を出る前にヨハンソンに連絡しそびれた」と言うと「ダラスに着いたら連絡しましょうか。連絡がないと私が嫉妬されます」とアドラさんは笑って言った。


 乗り継ぎの待ち時間は50分の予定だったが30分程度の遅延は日常茶飯事のようで、1時間以上かかった。でもその間にヨハンソンと話ができたのでよかった。

 「ヒューストンからカリフォルニアへ飛べば日本までの直行便があったんじゃないの?どうしてモンテレイなの?」と尋ねると「メキシコから帰りたいって言ったのはハナダさんじゃないですか!苦労したんですよ乗り継ぎが短いルート探すの」とプンスカしていた。「そうだった。ワガママ言ってごめん」と謝ると「じゃあ明日のチケットDC行きに変更しましょうか?」と言うので「あ、もう搭乗だ」と通話を終えた。


 乗り換えた飛行機はさっきのよりでかくて、3列+3列のレイアウトだった。

 1時間ほど飛んでヒューストンのインターコンチネンタル空港に到着。

 ダラスの待ち時間の間に夕食を摂ることができたので、あとはもう寝るだけだったが、タクシーで辿り着いたホテルが緑とピンクのネオンで彩られていたので、ラブホって日本だけじゃないの?とビビった。中は普通のモーテルで部屋も別々だった。


 1週間ぐらい夜間走行で寝るのは明け方という生活だったので部屋に入ってベッドに横になっても全然眠くならなかった。明日の出発も夜だし、すっかり昼夜逆転の身体になっているけれどこれは逆に日本に帰ってからの時差ボケが軽く済むかもしれない。無理に寝なくていいかと思ってぼんやりテレビを観ているうちに眠れた。


 10時すぎに目が覚めて、シャワーを浴びて身支度を整えているとドアがノックされた。「はい」と返事をすると「起きられてますね」とアドラさんの声が聞こえた。ドアを開けてもうすぐ出れると言い、堂島の龍になって部屋を出る。

 

 出発まで12時間ぐらいあるわけだが、土地勘もない中でどうやって時間を潰そうかアドラさんに相談しようと思いつつ外に出ると「夜までどうしますか」と尋ねられた。だよねえと思って「ヒューストンてロケット飛ばす街じゃなかったけ?」と言うと、宇宙センターまで車なら50分程度だというので迷わずレンタカー屋に向かう。


 どうせ空港に行くわけだからとタクシーで空港の目の前のレンタカー屋へ行き、車を借りる。TX-8で南南東に走り1時間もしないうちに、ヒューストン宇宙センターに到着する。カーナビってまじで人類の叡智の結晶だと思う。わかりやすい。

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