↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結ぶと解く  作者: ながずぼん
第八章 逃亡編
PR
137/254

第136話 潜伏と祈願

 遠くで物音が聞こえて目が覚める。ソファで寝たからか身体がバキバキだ。こんなんで一週間も車中泊できるのだろうか。隣を見るとアサガオさんがいない。

 立ち上がって大きく伸びをすると「ちょんまげ起きた」と長男くんがキッチンの奥へ消えた。するとキッチンからウチヤマ先生が出てきて「おはようございます、眠れましたか?」と訊ねられ「おはようございます。一番遅い程度には」と笑って挨拶を返す。

 顔を洗ってくるよう言われ洗面所に行くとアサガオさんがいた。


「おはようございます。アサガオさんもいま起きたところですか?」


「あ、おはよう。あなた寝言言ってたわよ『もう我慢できないよアドラ』って」


「いま思いついただけですよね。頭覗けなくても嘘だってわかりますよ」


「なんだ、つまんないの」そう言って彼女はおれと入れ替わるように洗面所から去っていった。洗面台の上には歯ブラシが用意してくれてあった。


 歯を磨いて顔を洗ってリビングに戻ると朝食の用意ができていた。

 映画で見るやたら薄い食パンと目玉焼きと、なんかの葉っぱとカリフラワーとビーツのサラダ、あとハムもある。見た目がカラフルでおいしそうだ。


 全員テーブルについたところで「いただきます」と言って食べ始める。

「はい」といって長男くんがでかいピーナツバターの容器を渡してくれる。「ありがとう」と受け取り食パンに塗ると「あんまり塗っちゃダメなんだよ」と長男くんに言われる。「どうして?」と尋ねると「だってママが…」と口ごもった。


「けっこう甘いから、あまりたくさんはダメよって言っているだけなんです」


「うちの家内、健康に拘りすぎなところがあって一時期マクロビにもハマったりして。ケールは家族全員から不評だったのですぐに止めてくれましたけど」


「か、カオルさん!もう今はやってないんだから、言わなくていいじゃないですか!健康のためと思ってやっただけで…」


「食べたいものを好きに食べたほうが長生きできるわよ?私、1500年生きてるし」


 あんたのそれは違うだろ。ポンコツか、あんた本当はポンコツなのか。

 するとアサガオさんが小声で「あそこのぼんやりちゃん、後でちょっと覗いてみてくれないかしら」と小声で囁いて来る。ぼんやりちゃん?彼女の視線の先には三女ちゃんが子供用の椅子に座ってぼんやりしていた。

「覗くって?どこを?」と聞き返すと「免疫細胞のあたりかしら」と言う。まさか不老不死体?そう思って「テロメアは?」と訊ねると「それは違うとおもう」と言って彼女は目玉焼きにタバスコを4回振りかけた。


 朝ごはんをごちそうになった後、ウチヤマ夫妻が片付けのためにキッチンへ行っている隙に三女ちゃんの前に座る。彼女は「はあ?誰だおまえ」という顔をしている。「ちょっとごめんね」と言って小さな両手を掴んでトランス状態になって彼女の中へ入る。

 免疫細胞は…光る筋でできた網の…あった。あるけど、すげえな。ビカビカに光っている。アサガオさんの中で見たものとは光量が全然違う。試しに少しだけ触れると、パシンと弾けて薄暗くなる。その後、網はうねうねと激しく動き始めた。直感でここにいてはまずいと思い現実世界へと戻る。三女ちゃんは相変わらずぼんやりしていた。


 ソファで食後の珈琲を飲んでいるアサガオさんの近くに行って「なんかすごく元気でした」と言うと「そう」とだけしか返事がない。「あれは一体なんですか?」と答えを尋ねると「やっぱり彼女、そうみたいね」とキッチンの方を見て言う。

「で?奥さんに事情を聞くんですか?」と訊ねると「んー、いいんじゃない?」と言って彼女は立ち上り、飲み干したカップをキッチンへ下げに言ってしまった。

 なんかいいように使われたみたいで釈然としない。なにがしたかったんだ?


 朝ごはんの片づけが済んだらウチヤマ夫妻は子供たちを連れて買い出しに出掛けてしまった。念のため留守をカムフラージュするようカーテンは閉め切ったままの薄暗いリビングでアサガオさんと留守番している。


「さっきの三女ちゃんのあれ、なんだったんですか?教えてくださいよ」


「あなたなら言わなくてもわかると思うのだけど?わたしの中で見たのだし」


 わかんねえから聞いているのになんなんだ…そりゃ免疫細胞を作っている網みたいなのは見たけど。アサガオさんのときは火傷みたいに赤くなっていて、あれが過剰反応だってことは聞いたような聞かないような。で、あれがビカビカに光っていたってことはあそこに結ぶ素粒子の効果が?てことはなんだ?免疫がコントロールされてる?


 「病気しないってこと?」そう口に出すとアサガオさんは「ほらね、ちゃんと自分で考ればわかるじゃないの。この先助けてあげられないのよ?」と言われ反省する。

 「やっぱり奥さん保持者だったんですね」と言うと「たぶん、出産のたびに祈るように子供の健康を願ったのね」と彼女は慈愛に満ちた表情で言う。「彼女にミトコンドリアのこと言わなくていいんですか?娘さん3人もいるんですよ?」と問うと「平和な家庭に波風は立てたくないもの。奥ゆかしいの、私」と笑って言った。


―――――


 昼を少し過ぎたあたりでガヤガヤとウチヤマ一家が帰って来た。大荷物を運ぶのが大変なので表の車のトランクに荷物は積んだままにしてあるそうだ。「全く構わないです、お手間かけさせてすみません」と言うと「どうせ家の買い物もあったのでついでですよ」と先生は笑って答えた。すると長男くんが「ちょんまげ、ちゃんと留守番できたな、ママを守って偉いぞ」と褒めてくれた。たぶんいつもそう言われているんだろう。


 その後、長女と次女は最初に来たときと同じようにテーブルで何かの絵を描いている。ずいぶん熱心に描いてるけどと覗いてみると、漫画のキャラクターか何かのようだった。セーラームーンみたいなやつ。しかもめっちゃ上手い。

 長女ちゃんに「上手だね」と声を掛けると彼女は黙って頷いた。見られるのが恥ずかしいのか耳まで赤い。次女ちゃんに至っては描いていた紙を隠してしまった。悪いことしたなあと思い「ごめんね」と言ってテーブルから離れた。


 夕方になるとスーツケースを2つ抱えたアズマ教授がやってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。