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結ぶと解く  作者: ながずぼん
第七章 米国編
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第126話 空想と面談

 鋭い追及でひた隠しにしてきた事実をハナダ容疑者が遂に自白する。

 たった一つの真実を見抜く、見た目はおばさん、頭脳は仙人、名探偵アサガオ!


 サヨさんと離れて元に戻ったパウラさんに「恋愛対象ではない」とあしらわれたのは、どうやら紳士協定というか淑女協定のようなものだったらしい。それを聞かされて嬉しくはあるけれど彼女たちのこれからに関わることはないと自覚している。


「どちらか片方だけってことはなくて共生していた彼女たちに惹かれたんだと思います。だから分離するって覚悟決めたときか、元に戻るって彼女が思ったときにはもう既に終わっていたんだと思います」


「あら、二人一緒じゃないと嫌だなんて意外と欲張りな男なのね。うふふ」


「ああ、そうだ、アサガオさんは『ゲンゾウ』っていう侍が主人公のマンガ、読んだことありますか?日本のものらしいからドイツでは読めなかったのかな」


「ゲンゾウ?ごめんなさい知らないわ。そのマンガがどうかしたの?」


「どうもそのゲンゾウっていうのに格好が似てるらしいんですよ。髪型もこんなで。だからゲンゾウ大好きっ子だったサヨさんはおれに好意を持ったんじゃないかって」


「なるほど、空想の初恋相手だったのね。だからパウラって子と相性が良かったのかもしれないわね。思念体が自我のある人間と共生するのって本当に難しい話だもの」


 あの二人は脳の使い方が似ているから初期から拒否反応が起きなかったのか。


 そろそろ夜も更けてきたので解散することに。

 話を聞いてくれてありがとうとアサガオさんと教授に言って部屋を出た。

 窓の外は雪が降っていた。外国で雪が降っているのを見るのは初めてだ。


 翌朝、迎えに来たヨハンソンたちは緊張した面持ちだった。いつもどこか人を舐めている感じのヨハンソンがクスメギ以上にガチガチになっているのが面白い。

 そこにアズマ教授とアサガオさんがやってくる。また例の飛べない豚は~の格好にしか見えない装いで。それ絶対コスプレだよね?知っててやってるよね?


 「おはようございます、ミセス・アサガオ」そういってヨハンソンは深々と頭を下げた。隣のアドラさんも「オハヨウゴザイマス」と頭を下げている。

 なんか噂が独り歩きしてみんな恐縮しすぎなんじゃないのか?それとも話好きでめっちゃ物知りなおばちゃん扱いしているおれが異常なのか?

 「それじゃ行きましょうか」とアズマ教授の号令で一同は車に向かう。

 ホテルの前に停まっているのはいつもセダンじゃなくて、でかいバンだった。

 雪はまだ降っていて、アサガオさんがきゃあきゃあ言いながら車に乗り込む。


 NSAの二人が前列に座るのは当然として2列目のキャプテンシートに教授とアサガオさんが座りおれは3列目に座る。日本のミニバンの3列目とは違ってめちゃ広い。

 でけえ車だなあと感心していると「すごいわねこの車!飛行機みたいよね!」とアサガオさんが興奮している。ほらな、やっぱり普通の人なんだよこの人は。


 5車線もある高速道路をずいずい走っていくがまだ目的地には着かないみたいだ。面談についてこいとしか言われていないので、どこに向かっているのか知らない。

 教授に「これどこまで行くんですか?」と訊ねると「DCの日本大使館ですよ」と事もなげに言われた。そんなところで何をするんだろう?日本国籍を取得したことに対するあれこれだとしたらわざわざアメリカでやることもないだろうし。


 高速道路を降りて4車線もある幹線道路っぽいところを進む。とにかくアメリカはでかいと感じる。やがて郊外の住宅地のようなところに差し掛かると車線が3つに減る。やがて真ん中に噴水のあるロータリーに出て時計と反対周りに回って通過。すると建物にビルが混ざり始める。6階7階建てぐらいか。

 そこを過ぎると対面通行の住宅街に入る。なんかもっと官庁街みたいなところに出ると思ってたけど、大丈夫なのこれ?本当に大使館に向かってる?


 さらに進むと三叉路に出る。突き当りは「U.S. NAVAL」と看板がある。海軍の施設のようだ。三叉路を左に曲がって道は2車線になる。家がでかめになったなと思ったら、他の国の大使館らしい。なんか想像と違う感じだった。

 そして日本大使館に到着。四角くて一昔前のモダン建築って感じの建物だった。ていうか窓に鉄格子が嵌めてあってまるで刑務所かなにかのようだった。


 教授、アサガオさん、おれに続いてNSA側の二人。人払いがしてあるのか職員の姿が見えない。とはいえ入館直後にセキュリティチェックがあり、金属探知機と手荷物のX線検査がある。モンテビデオの時は入院着一枚だったから素通りさせてくれたのかな。

 ロビーに見知った顔が来た。東京で最初に案内をしてくれたマツモトさんだ。

 きょうの彼は言葉少なに「こちらへ」と言うだけでおれたちを先導していく。

 しばらく廊下を進むと大きい応接室に通された。窓にはふりふりのカーテンが掛けられその先に雪で真っ白に覆われた庭が見える。けっこう積もってる感じ。


 日本vsアメリカというような構図で着席する。ヨハンソンはいつもの感じに戻っているように見える。日本の外交官なんかより、よっぽどアサガオさんに畏怖を感じていたのかもしれない。アドラさんはアサガオさんの顔をじっと見ている。アサガオさんもまた彼女を見ている。まさかテレパシーで会話しているなんてことはないよね?

 すると隣に座るアサガオさんが「あなた、いいお友達に恵まれたわね」と小声で言ってきた。おいおい、いま覗いてたのかよ?ここでやるかふつう?


 マツモトさんが出て行ってから少しするとドアがノックされ、おっさん、おっさん、おっさん、キノコが入室してきた。最初のおっさんはテカテカのおっさんで、次のおっさんはイワシの丸干しみたいなおっさんで、次のおっさんは爽やかイケメンのハナザワ室長だった。で、最後に秘書なのかキノコみたいなボフの女性。

 テカテカのおっさんはヨハンソンたちには目もくれず真っすぐアサガオさんのところへ行き「ご足労ありがとうございます、お会いできて光栄です」と言って恭しく頭を垂れた。次の丸干しおじさんも似たようなことを言って頭を下げた。ハナザワ室長は「お久しぶりです。足元の悪い中お越しいただき感謝します」と爽やかに挨拶をしていた。

 キノコは端っこのほうに立っていた。生えていたのかもしれない。


 おっさんたちが席に着くと日本7名vsアメリカ2名の構図になった。

 特に理由はないのだけれど、なんか居心地が悪いので席を立ってテーブルをぐるりと回りアドラさんの隣に座った。ヨハンソンとアドラさんは目を丸くしている。

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