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同窓会

1.虚飾のステージ

土曜日の午後六時半。地方都市の駅前にそびえ立つ『グランドホテル鳳凰』の三階宴会場『翡翠の間』は、人工的な光と、安価な香水の匂いで満ちていた。

床に敷き詰められた赤絨毯はところどころが擦り切れ、天井のシャンデリアもバブル期の遺物のような、どこかくすんだ輝きを放っている。それでも、この閉鎖的な地方都市においては、ここが紛れもない「最高級の社交場」だった。

「いやー、みんな変わんねえな!」

「相沢、お前マジで社長の風格出てきたじゃん!」

会場のあちこちで、下品なほどに大きな笑い声が弾けていた。

中学を卒業して十年。二十五歳になった元3年2組の同級生たちは、思い思いの「一張羅」に身を包み、互いの現在地を値踏みし合っている。大半は地元に残り、代わり映えのしない中小企業や役所に勤め、早々に結婚して小さな平穏に収まった者たちだ。そんな彼らにとって、この同窓会は、自分が他者より少しでも「上」にいることを確認するための、醜悪なマウントの応酬の場にほかならなかった。

「おいおい、主役の登場だぜ!」

取り巻きの男たちが声を上げ、会場の中央へと道をあける。

そこに現れたのは、相沢拓海だった。

実家の小さな土木会社で、父親の威光を傘に着て専務の椅子に収まっている男は、いかにも高級そうな、だが体型に合っていないダブルのスーツを着こなしていた。丸みを帯びた腹を突き出し、腕にはこれ見よがしに金色の海外製高級腕時計がギラついている。その傲慢な歩き方は、中学時代のスクールカーストの頂点に君臨していた頃と、驚くほど何も変わっていない。

「相沢ー! こっちこっち!」

甲高い声で手を振ったのは、美咲だった。

彼女もまた、地元のスナックでチヤホヤされているプライドを誇示するように、過剰なほど露出の多いタイトなドレスを纏っている。ブランド物の小ぶりなバッグをこれ見よがしにテーブルに置き、香水をきつく漂わせながら相沢の隣に滑り込んだ。

「美咲、お前相変わらず派手だな。どっかのクラブのママかと思ったわ」

相沢が下卑た笑みを浮かべて美咲の腰に手を回す。

「失礼しちゃうわね。これでも今、地元の名士の人たちにすっごく気に入られてるんだから。相沢の会社だって、私の紹介で仕事回してあげてもいいんだよ?」

「ハハ、そいつは頼もしいねえ!」

二人が中身の薄い自慢話を始めると、周囲の取り巻きたちも「さすがカースト上位!」と言わんばかりに太鼓持ちの言葉を重ねる。狭い世界のなかで、彼らは未だに自分たちが世界の中心にいると盲信していた。

だが、彼らの会話の本質は、常に他者を見下すことでしか成り立たない。

「ところでさ、例の『芋女』はまだ来てないわけ?」

美咲がグラスの白ワインを口に含みながら、意地悪な目で周囲を見回した。

「ああ、佐藤優奈だろ? 受付のリストには名前があったぜ。本当に来るか半信半疑だったけどな」

相沢がポケットからスマートフォンを取り出し、画面にあの「十年前の動画」を表示させた。男子トイレで、泥水を飲まされてのたうち回るボロボロの少女の姿。

「ねえ、本当にあの格好のまま来たらウケるよね。生活保護受給者みたいなボロ服でさ、おどおどしながら『すみません……』って入ってくるの」

「間違いない。もしニートで金がねえなら、今日の会費、俺が払ってやってもいいぜ? ただし、ここで土下座して、昔みたいに俺の靴でも舐めたらな!」

相沢の言葉に、周囲の同級生たちがドッと下品に沸き立った。

彼らにとって、優奈は人間ではない。自分たちの自尊心を満たすために消費される、永遠の「オモチャ」なのだ。誰もが、あの可哀想な生贄が部屋に入ってきて、再び自分たちのカーストの最底辺を補強してくれる瞬間を、今か今かと待ち望んでいた。

時計の針が、開宴時刻である午後七時を指そうとしていた。

2.静寂のイントロダクション

その時だった。

宴会場の重厚なオーク材の二重扉が、外側から静かに押し開けられた。

スタッフが恭しく頭を下げるなか、一人の女性が会場へと足を踏み入れる。

「――え?」

誰かが、小さく声を漏らした。

居酒屋の延長のような騒がしさに包まれていた『翡翠の間』の空気が、まるで一瞬で凍結したかのように、端から順番に静まり返っていく。誰もが言葉を失い、ただその入り口に立つ人物へと視線を吸い寄せられていった。

そこに立っていたのは、まばゆいばかりのオーラを放つ、圧倒的な美女だった。

手入れの行き届いた黒髪は、照明の光を反射して夜の絹のように艶やかに輝き、完璧なカッティングのミディアムボブが、彼女の白磁のような首筋を際立たせている。

纏っているのは、一見するとシンプルでありながら、素人目にも「本物」と分かる、最高級のシルクで作られた漆黒のイブニングドレス。タイトなシルエットは、彼女の驚くほど細いウエストと、出るところが出た完璧な黄金比率のボディラインを容赦なく強調していた。

背筋をピンと伸ばした非の打ち所のない立ち居振る舞い。

一歩歩くたびに、ドレスの裾から覗く最高級ブランドのヒールが、絨毯の上でかすかな、しかし確かな存在感を放つ。

「おい……誰だ、あの美人……」

「新しく入ったホテルのコンパニオンか?」

「いや、そんなレベルじゃねえだろ。どっかのモデルか、それとも財閥の令嬢か……?」

男子生徒たちの目が、完全に釘付けになっていた。彼らが地元で目にするどの女性とも違う、文字通り「次元の違う」美貌と気品。

女子生徒たちからは、羨望と、あまりの格差に対する恐怖を孕んだ溜息が漏れる。美咲が着ている安物のドレスや、過剰なアクセサリーが、その本物の輝きの前では、まるで子供のおもちゃのように色褪せて見えた。

美女は、周囲の視線やざわめきなど、最初から風景の一部としてしか認識していない様子で、静かに会場の中央へと歩みを進める。

その進路にいる同級生たちが、圧倒的な威圧感に押されるようにして、本能的に左右へ道をあけていく。

そして、彼女は迷いのない足取りで、相沢と美咲が陣取る中央のテーブルの前で足を止めた。

「な、なんだよ……あんた、誰?」

相沢が、ドギマギしながらも、男としての本能的な下心を隠しきれない締まりのない顔で問いかけた。美咲は、自分から完全に主役の座を奪い去った美女を、激しい嫉妬の目で睨みつけている。

美女は、そんな二人を、まるで路傍の石ころでも見るかのような冷ややかな瞳で見下ろした。

そして、朱色に彩られた美しい唇を、わずかに動かす。

「お久しぶりね。相沢くん、美咲さん」

鈴の音のように澄んでいながら、同時に凍りつくほどに冷徹な声が、静まり返った宴会場に響き渡った。

「――は?」

美咲が、間の抜けた声を上げる。

「何言ってるの? 私、あんたみたいな綺麗な友達、知らないんだけど……」

「そうよ。あなたたちが忘れるはずがないわ。十年前、この手で徹底的に踏みにじった人間の顔を」

美女は静かに、だが優雅な仕草で、ハンドバッグから一枚の案内状を取り出し、テーブルの上に置いた。そこには、はっきりと彼女の名前が記されている。

「佐藤……優奈……?」

相沢がその名前を読み上げた瞬間、会場全体に、まるで爆弾が落ちたかのような衝撃が走った。

「う、嘘だろ……!? あの、優奈!?」

「あの地味で、ボロボロで、おどおどしてた芋女が……こんな、嘘だろ、あり得ねえ!」

誰もが、目の前の現実を拒絶するように目を見開いた。

十年前、ボサボサの黒髪に歪んだ眼鏡をかけ、毎日クラスの連中に殴られ、最後には男子トイレの便器に顔を突っ込まれて泣き叫んでいた、あの最底辺の少女。

その面影など、どこを探しても見当たらなかった。目の前にいるのは、誰もが触れることすら躊躇うような、完璧な「本物のレディ」なのだから。

3.格差という名の暴力

「冗談、でしょ……?」

美咲の顔から、完全に血の気が引いていた。

彼女が想像していた「引きこもりのデブなニート」という醜悪な妄想は、完璧な美貌によって粉々に粉砕された。美咲が必死に化粧で隠している肌の衰えや、地元の狭いコミュニティで培った安っぽいプライドが、優奈の前に並んだ瞬間、見るに堪えない「偽物」として炙り出されていく。

「何よ、その格好……! 整形!? 整形したんでしょ、あんた!」

美咲が、ヒステリックに声を荒らげた。そう思わなければ、自分の貧相な現実を保てなかったのだ。

しかし、優奈は眉一つ動かさない。

「整形? 必要ないわ。私は、あなたたちに奪われた自分の人生と、本来あるべき姿を取り戻すために、死に物狂いで努力をしただけ。あなたたちが地元の狭い世界で、過去の栄光カーストにしがみついて怠惰に溺れている間にね」

「て、てめえ……!」

相沢が、優奈の冷徹な言葉にプライドを傷つけられ、顔を真っ赤にして立ち上がった。

「ちょっと見た目が変わったからって、調子に乗ってんじゃねえぞ、芋女が! 中身はおどおどしたクソ女のままだろ! ほら、座れよ! ここはお前みたいな底辺が、俺たち勝ち組に酌をする場所なんだよ!」

相沢は中学時代と同じように、暴力的な威圧感で優奈を従えようと、彼女の腕を掴もうと手を伸ばした。

だが、優奈はその手を、実に見事な、流れるような動作で軽々とかわした。

それどころか、彼女はテーブルの上に置かれた未開封のウイスキーのボトルを静かに手に取ると、相沢の目の前にあるグラスへと、一滴の無駄もなく、完璧なマナーで注いでみせた。

その一連の動作のあまりの美しさと気品に、相沢は思わず動きを止め、圧倒されてしまった。

「お酌なら、いくらでもしてあげるわ。それが『レディのマナー』ですから」

優奈は、大人の色気と、計算し尽くされた蠱惑的な微笑――かつておどおどしていた頃の天然の愛らしさが、今や極上の武器となった『計算された美しさ』を浮かべて相沢を見つめた。

「な、なんだよ、その態度……」

相沢は、優奈のあまりの美しさと、自分とは完全に違う「高貴な世界の住人」としてのオーラに、完全に気圧されていた。怒鳴り散らそうにも、彼女の前に立つと、自分がどれだけ卑屈で、教養のない、泥臭い人間に見えるかを自覚させられてしまうのだ。

「相沢くん。あなた、父親の会社の『専務』だそうね。地元の小さな土木会社で、年商は数億円といったところかしら?」

優奈が、グラスを揺らしながら淡々と告げた。

「お、おうよ! 年商三億だ! 地元じゃ誰もが知ってる優良企業だぜ! どうだ、お前なんかの一生かかっても稼げない金だろ!」

相沢は、唯一の心の拠り所である「会社のステータス」を盾にして、必死に吠えた。

しかし、優奈の口から漏れたのは、クスリという、憐れみに満ちた小さな笑い声だった。

「年商、わずか三億。……ええ、地元の『井の中の蛙』としては、立派な数字なんじゃないかしら」

「何だと……!?」

「私が現在、籍を置いている外資系投資銀行のチームが、先月動かしたM&A(企業の合併・買収)の案件の規模は、二千億よ。私の個人としての年間インセンティブだけでも、あなたの一族の会社の純利益を遥かに超えているわ」

優奈は、スマートフォンの画面をスッと相沢の前に差し出した。

そこに表示されていたのは、世界的な経済誌に掲載された彼女のインタビュー記事と、信じられないような数字が並ぶ、彼女個人の公式なキャリアデータだった。

「二、二千、億……?」

相沢の思考が、完全に停止した。

地元で「専務」と持ち上げられ、小金を稼いで威張っていた自分の世界が、優奈の住む「地球規模のマネーゲーム」の前では、ただの砂上の楼閣に過ぎないことを突きつけられたのだ。

会場の他の同級生たちも、その桁違いの現実に息を呑んだ。

「おい、マジかよ……佐藤って、そんな雲の上の存在になってんのか……?」

「二千億って、俺たちの生涯賃金を全員合わせても届かないじゃん……」

カーストの序列が、見た目だけでなく、社会的ステータスという圧倒的な「暴力」によって、完全に逆転した瞬間だった。

4.這い寄る毒牙

プライドを完膚なきまでに叩き潰された相沢と美咲は、怒りと、それ以上の恐怖で身体を震わせていた。

だが、美咲の醜い嫉妬心は、まだ諦めていなかった。彼女は隣に座る取り巻きの女子に目配せをし、ワイングラスを手に取った。

「ふ、ふん! 金を持ってるからって、何よ! 中身が汚いのは変わらないじゃない! あんたが中学の時、どんなに惨めで、汚い虫みたいだったか、みんな知ってるんだから!」

美咲が叫ぶと同時に、取り巻きの女子が、優奈の漆黒のドレスに向けて、意図的に真っ赤な赤ワインをぶちまけようと手を滑らせた。

「あ、手が滑っちゃったー!」

わざとらしい声が響く。誰もが、あの美しいドレスが真っ赤に汚れる凄惨な瞬間を予感した。

しかし、優奈の運動神経と冷静さは、彼らの浅はかな嫌がらせを遥かに凌駕していた。

優奈は、ワインが迫る瞬間を完全に予見していたかのように、半歩だけ優雅に身を引いた。赤い液体は、優奈のドレスに一滴も触れることなく、空を切り、そのまま相沢の着ていたお気に入りの白いワイシャツへと、派手にぶちまけられた。

「ぶほっ!? な、何すんだよ、お前!」

相沢の胸元が、ドロドロとした赤ワインで真っ赤に染まる。

「キャアア!? ご、ごめんなさい、相沢くん! 狙ったのは優奈だったのに!」

取り巻きの女子が慌ててナプキンで拭こうとするが、ワインのシミは無残に広がっていく。

「ふふ、相変わらずお上手ね。十年前と、やることも、その程度の浅はかな知恵も、何一つ進歩していない」

優奈は、慌てふためく彼らを見つめながら、冷たい目を向けた。

「佐藤優奈……! お前、昔の動画、ここにいる全員に見せられても、そんな大きな顔ができると思ってんのか!」

相沢が、シミだらけのシャツのまま、狂ったようにスマートフォンを掲げた。

「お前がトイレで泥水すすって、泣き叫んでる動画だよ! これを今から、この会場の巨大スクリーンに映してやる! そうすれば、お前のその気取ったメッキも剥がれるだろ!」

「ええ、いいわよ。やりたければ、どうぞ?」

優奈は止めるどころか、優雅に腕を組み、挑発するように顎をしゃくった。

「な……?」

相沢は、優奈の全く動じない態度に一瞬怯んだが、後に引けなくなり、会場の音響・映像スタッフの席に向かって怒鳴り散らした。

「おい! 俺のスマホをそこのプロジェクターに繋げ! 今すぐ大画面で流せ!」

スタッフは、地元の有力者の息子である相沢の剣幕に押され、言われるがままにスマートフォンを機材に接続した。

会場の照明が落とされ、ステージの巨大なスクリーンに、スマートフォンの画面がミラーリングされる。

同級生たちは、固唾を呑んでスクリーンを見つめた。十年前の、あの凄惨な地獄の映像が流れるのだと、誰もが確信していた。美咲は、優奈の過去の恥部が晒される瞬間を想像し、醜い歪んだ笑顔を浮かべていた。

だが。

スクリーンに映し出されたのは、男子トイレの映像ではなかった。

5.化けの皮の剥離

「……え? 何これ……」

美咲の笑顔が、凍りついた。

スクリーンに映し出されたのは、どこかのオフィス、あるいは役所の内部書類のような、膨大な文字と数字が並んだスキャンデータだった。そしてその最上部には、大きな赤文字で、こう記されていた。

『相沢土木株式会社・裏帳簿および不正入札疑惑に関する報告書』

「な、何だこれ……!? なんで、俺の親父の会社の書類が……!」

相沢が、目を見開いて絶叫した。

画面は、優奈の手元のスマートフォンによって、次々とスクロールされていく。そこには、相沢の父親の会社が、地元の公共事業を受注するために行っていた、悪質な談合の証拠。さらには、専務である相沢拓海個人が、会社の公金を数百万円にわたって私的に流用し、高級時計の購入や、ホステスへの貢ぎ物に充てていた詳細な領収書のデータが、これでもかと鮮明に映し出されていた。

「これ……全部、あなたたちの『現在の現実』よ、相沢くん」

優奈の声が、暗転した会場に冷酷に響く。

「な、なんで……なんでお前が、こんなものを持ってるんだ!?」

「言ったはずよ。私は外資系投資銀行で、企業の買収やデューデリジェンス(資産査定)の専門家として働いている、と。地元の小さな土木会社の隠し口座や、杜撰な裏帳簿を暴くことなんて、私にとっては赤子の手をひねるより簡単な仕事だわ」

優奈はさらに、画面を切り替えた。

次に映し出されたのは、美咲の顔写真と、何通ものメッセージのスクリーンショットだった。

「ひっ……!?」

美咲が、短い悲鳴を上げて口を押さえた。

そこに表示されていたのは、美咲が地元のスナックの既婚者の客たちと行っていた、生々しい不倫の証拠。さらには、その男たちの妻から、合計で一千万円を超える慰謝料を請求されているという、弁護士からの正式な受任通知書の書面データだった。

「美咲さん。あなた、地元の名士に気に入られていると言っていたけれど、それは単に、都合のいい玩具として消費され、奥様方に完全に監視されていたというだけのことよ。あなたの現在の銀行口座の残高、マイナスよね? 複数の消費者金融からの督促状も、すべてここに揃っているわ」

「やめて……! 消して! 今すぐ消してよお!」

美咲が、狂ったようにスクリーンに向かって手を伸ばし、涙を流して叫んだ。

会場の同級生たちは、あまりにも生々しい「本物のスキャンダル」を前に、完全にドン引きしていた。中学時代のカースト上位の二人が、実は社会の底辺で、犯罪まがいの行為と借金に塗れて生きているという事実が、完全に白日の下に晒されたのだ。

「十年前、あなたたちは私を『芋女』と呼び、泥水を飲ませて笑ったわね」

優奈は、照明が消えた暗闇のなかで、ただ一人、月の光を浴びる女神のように美しく佇んでいた。

「でも、今のあなたたちはどうかしら? 法律を犯し、他人の家庭を壊し、借金に追われ、過去の小さな栄光にしがみついて他者を見下すだけの、本物の『社会のゴミ』。……ねえ、相沢くん、美咲さん。今、どんな気分?」

優奈の冷徹な問いかけに、二人は言葉を返すことすらできなかった。

会場全体が、二人を蔑むような、冷ややかな視線で満たされていく。中学時代、優奈をいじめる彼らを恐れ、あるいは同調して笑っていた同級生たちも、今や「犯罪者一歩手前の負け組」となった二人から、完全に距離を置こうと冷たい目を向けていた。

形勢は、完全に、そして永遠に逆転した。

だが、優奈の復讐は、単に彼らの恥部を晒すだけでは終わらない。これはまだ、彼らを底なしの絶望へと叩き落とすための、ほんの「前哨戦」に過ぎなかった。

(第2話・了)

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