満月の子守唄
満月の夜だった。
銀色の光が、静かに森全体を包み込んでいた。僕は木の根元に腰を下ろし、その光に全身を委ねた。月の光は冷たくて、優しくて、まるで古い友だちのように僕を照らしてくれる。
「なんて、綺麗なんだろう……」
言葉が自然とこぼれた。今日あったこと、明日考えるべきこと、全部がふっと遠のいていく。大きな月は、ただそこに在るだけで、僕に不思議な力をくれる。胸の奥が、ふんわりと温かくなるような、そんな力だ。
遠くで、誰かが遠吠えを始めた。
俺たちオオカミの、子守唄だ。低く、長く、森の空気を震わせる歌。すると、梟が「ほーほー」と優しく応える。木々の茂みを草がそよぎ、風が葉を撫で、時折雨の記憶が遠くで小さな歌を奏でる。森は今夜、たくさんの子守唄で満ちていた。
僕は目を閉じて、耳を澄ませた。
この歌たちは、きっと月に届いている。月もまた、静かに微笑みながらそれを感じている。銀色の光が、まるで「よく頑張ったね」と囁いているように。
今日、一日、本当に頑張った。
自分を、そっと褒めてあげてもいい。完璧じゃなくたって、特別じゃなくたって、在り来りでも全然いい。月はそんな僕を、ちゃんと見ていてくれる。森の動物たちは、変わらず優しい歌を奏でてくれる。
体が重くなってきた。
いつでも眠れる準備は、できている。肩の力はすっかり抜けて、指先まで温かい。呼吸が、ゆっくりと深くなっていく。
無理をせず、明日も生きていこう。
ただ、今日と同じように、月がそこにいて、森が歌ってくれる。それだけで、十分だ。
……おやすみ。
月の光が、僕を優しく包み込む。森の子守唄が、ゆっくりと僕を夢の世界へ連れていってくれる。
静かに、深く、穏やかに——
(どうぞ、この物語を読みながら目を閉じてください。月と森が、あなたの眠りを優しく守ってくれますように。)




