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悪代官は憂鬱、江戸時代のブラック中間管理職  作者: 林和志
3章 白い繭
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9.尾張大納言

尾張中納言を、尾張大納言に変更します。尾張藩主は、権大納言になれるんですね。水戸藩は中納言。

舞台をわからなくしてかったので、徳川中納言という言い方で書いたのですが、尾張藩と書いてしまったので大納言します。(実際は、権大納言までしか昇進できない。わかりにくいので、大納言にします)


 翌朝、三人で食事を取っていると、昨晩、美雪に紋付を用意するように言われたので、同心の羽田が紋付を持ってきた。

 竹三郎が紋付の羽織袴に着替えると、

 「なかなか、似合うではないか」

 茶化すように美雪が笑った。

 それから、美雪は駕籠に乗り、乗平と竹三郎は歩いてついていく。10人ほどの侍が駕籠の回りで美雪の護衛の任にあたる。

天領の境にある松平ゆかりの寺まで、その御仁はわざわざ出向いてきた。

 「美雪殿には引っ張りまわされるばかりじゃな」

 大柄な恰幅の良い侍は愉快そうに笑った。

 乗平に寺の玄関で待つように言われ、竹三郎は待っている。

 「叔父上もご健勝で」

 「乗平も面白い友が出来たようじゃな。大学頭に名前は聞いたことがある。目通りを許す」

 竹三郎は、事情を説明されぬまま寺にあがるように言われた。警備の侍が数十名いることから、相手の身分が高いことだけは想像がついた。

 「先に名乗れ」

 「水梨代官の鈴木竹三郎でございます」

 「乗平、林大学の弟子の学者じゃな」

 「はい。代官ではなく。林大学頭の弟子の学者でございます。なかなか、優秀ゆえ美雪殿もご興味をお持ちのようです」

 代官ごときが口を聞くことができない相手らしい。一学者として目通りするということらしい。美雪は策士であった。

 「うむ、面をあげよ」

 恰幅の良い老人は、葵紋の羽織を着ているが、乗平の松平の葵紋とは違う。 

 葵紋は、将軍家、御三家、松平家、全ての家で異なった葵紋を使っていた。老人の葵紋は、御三家の1家を表す葵紋である。尾張大納言、相手はお忍びの身、世事に疎い竹三郎もかのお方が老中達に煙たがられていることを知っている。天領の年貢の減免に関われば、立場を悪くするだけである。

 「徳川大納言である。元藩主ゆえ、乗平、美雪殿の学友として気楽に話せ」

 前御三家当主の徳川大納言は竹三郎に話しかける。

 「美雪殿から大体のことは聞いておる。天領の検地のやり直しとは酔狂なことを考える。わしから口添えをしてやりたいが、わしも上様には好かれておらんので逆効果じゃろう。それから、蚕を育てたいという話じゃが、個人的に金を貸そう」

 徳川大納言は、それで良いかと美雪の顔を見る。

 「差し上げるのではなく、貸すのですか。60万国の太守ですのに」

 「もう、藩主ではない」

 美雪とのやりとりは慣れているらしい。徳川大納言が呟いた。

 「水梨の領民だけであれば、御三家の領民に組み込めるのだが・・・。同じ 問題が日本中で起こっているはずじゃ。日本中で年貢の問題が起こっておるから、そなたのいうことを幕閣も聞きたくないのであろう。水梨だけではなく、日の本全体の問題ゆえ、老中や上様でもなにも出来まい」

 辛辣な批評であった。このお方が、幕閣に疎まれ、藩主の座を降りさせられたのも納得がいく。

 「竹三郎、死ぬなよ。犬死になる。乗平から聞いた甘藷なるものは余でも手に入らぬ。なかなか薩摩のものを手に入れるのは難しくてな。だが、生糸はお主も知っておろうが、日の本では不足しておる。唐の国から買っておるのだ。良い産業になるかもしれんぞ」

 徳川大納言は、竹三郎に言った。

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