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世界の終焉、ボクと行先  作者: ふとん
ハロー異世界!
5/7

四話「不穏も不穏な異世界の一歩」

晃瑠の叫び声が草原に響き渡った。レオはその大声に耳をやられてしまったらしいが、晃瑠は今それどころではなかった。


「おま、おま…!今なんて言った!?」


「に、2週間…早くても……」


「無理だろ…!?飯もないし寝床もないんだぞ!?」


晃瑠は温室育ちの現代っ子。毎日暖かい食事と風呂を無償で提供してもらい、ぬくぬくと布団の中で温まりながらゲームをするのが日常だった。

なのに2週間も野宿、風呂無し、更には食事さえもないときた。しかも2週間というのはズレるかもしれないただの推測された日数に過ぎない。道中で迷うことはレオの魔力探知があるのでないだろうが、ここは異世界。魔獣にでも襲われたら不老不死の能力のおかげで死ぬことはなくともタダでは済まないだろう。そうなるとアクシデントを含めれば1ヶ月程かかってもおかしくはない。晃瑠にはそれを耐えられる自信が全くと言っていいほどなかった。


「まぁまぁ、落ち着いてよ。ボクだってノープランって訳じゃないからさ」


「どこがだ!?どこに落ち着ける要素が入ってた!?俺の世界に危機感ってモノを置いてきちまったんじゃないか!?」


レオの落ち着きっぷりに晃瑠は逆に冷静さを失っていく。レオは元々晃瑠で言う異世界の出身だとはいえ、1000年もあの比較的に平和な世界で暮らしていれば平和ボケをしていてもおかしくはない。

だが、レオは平和ボケした訳でも、不老不死のスペックに頼ろうとも思ってはいない。


「魔獣を狩れば食料は問題ないし、寝床も水も魔法で何とかなるから大丈夫だよ。むしろ訛ってる魔法をじゃんじゃん使える良い機会だし!」


「ほ、本気か…?俺は戦えないし、足手まといだぞ……?」


「晃瑠、ボクは君と契約しているんだ。間違っても、君を置いてはいかないから安心して」


レオは真っ直ぐと芯のある眼差しで晃瑠を見据えてそう言った。

その眼差しが今の晃瑠の心に凄く突き刺さった。今までの取り乱しようがとてつもなく格好悪いことに気づいたのもそうだが、レオの存在がとても頼もしいものだと感じたのだ。


「……そうか。悪い、取り乱した」


「大丈夫だよ〜寧ろ、今までの晃瑠が落ち着きすぎなくらいだし」


「…ありがとうな」


晃瑠からはフォローをしてくれるレオに対し、感謝の気持ちが溢れ出る。確かにいきなり異世界に放り込まれ、喋って浮く黒猫と自身が不老不死となり、しかももう戻れないという事実を知った人間のわりには晃瑠は冷静だったと言えるだろう。

晃瑠はそこだけは誇っていいのかもしれない。

だが、そんな正の感情にばかり浸っているわけにもいかない。


「んじゃ、ここでうだうだ言ってても仕方ないしナビゲートをよろしく頼んます!」


晃瑠は気持ちを持ち直してレオにそう言うと、レオは「りょーかい」と返してから光を纏って再度集落の位置を軽くチェックをしだす。

すると、レオの表情に少しシワが寄った。


「あれ…?なんだろうこの魔力……」


「ん?どうしたんだ?」


レオはもう一度しっかりと確認をしだす。だが、レオの顔にはシワが寄ったまま変わらない。

晃瑠には何があっているのかが分からないが、まずいことだというのだけは分かる。


「マジでどうした…?まさか、集落の反応が無くなってるーなんてことないよな…?」


「そ、それはないんだけど、凄く大きい反応が一つ増えてるんだ…」


「え、それはつまり、魔獣に集落が襲われてるってことか……?」


晃瑠は恐る恐る尋ねるが、レオは首を横に振った。

レオはもう一度だけ魔力探知を発動させて確認をした。だが結果は変わらないらしい。


「けど、妙なんだ」


「妙?」


「うん、恐らく人間であろう魔力の反応の個数が変わっていないんだよ」


「じゃあ、たまたまめっちゃ強い魔法使いとかがついた可能性があるってことか?」


「うーん…分からない。とりあえず集落に向かうだけ向かってみる?万が一魔獣だったとしてもこれくらいなら普通に一撃で倒せるし」


レオは平然とそんなことを言うが、ゲームを基準とすると初期の森にいる魔獣だとしても最低二発は必要な魔獣が低確率でいるくらいなのだ。

レオはそのまぁまぁ大きい反応を示しているであろう魔獣をワンパン出来ると言った。姿のわりにとても恐ろしい。晃瑠はレオが敵出なでかったことに心からの安堵感を覚えた。


「マジでお前が敵じゃなくてよかった……」


「なはは〜。あ、それでどうする?野宿生活を続けながら集落を探すっていうのもいいけど……」


「……いや、行こう」


「え、本気?意外だなぁ」


「本気も本気だ。もし荒れてたとしてもどこかしらの地図はゲットできる可能性があるし、食料だって金だってあるかもしれない!おまけにこっちにはレオという心強すぎる味方がいるんだ!いける気しかしないね!」


晃瑠は自信満々に啖呵を切る。その言い分はなんともクズで他力本願なものであるが、合理的といえば合理的だ。


「そうだね、分かった。じゃあ行こう!」


「おー!!」


晃瑠は拳を握り天に高々と突き出した。レオもそれにつられて「おー!」といいながら真似をする。

そして二人はこの異世界に来てからの最初の一歩を踏み出した。


この選択が、後に災厄を招くこととなるとは知らずに─────────

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