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第15話 幸せのその蒼き檻の中のイソラ 最終話

お目をとめていただき、本当にありがとうございます。

「あたりまえだ。生命があるだけ喜べ。こう見えて私は歴戦の猛者だぞ。十二の初陣以来、誰にも負けたことはない」

 ふっ、とイソラは笑う。

「いや、一度負けたな」

「え?そんな強いひとがいたんだね」

 目を丸くしたイオスを、イソラが包む。


「ーー生まれてはじめて組み敷かれたからな」

「!」

 ぼんっ、と弾けそうなぐらい赤面したイオスが、そのまま気を失った。


「ーーなんと愛らしい旦那様であろうか……」


「イ、イソラ、息子をあまりからかうなーー」


 どう見ても子犬と飼い主だ。

 ウルスが息子の将来を(うれ)いた。




「ーー存外、兄上はわかっていたのかーー。私が星藍国ではどうにもならんことをーー」

 イソラはつぶやく。


 もっとあのひとの胸の内を考えればよかったーー。なぜ、自分を国から放り出したか、イグニスに行かせたか、スズハをつけたのかーー。


 いつかは兄の心がわかるだろうかーー。











「あーあ、王妃にしてやろうなんて、くだらない口車にのって、バカしたわ」

 ウェルが離縁して王宮から出ていくと言った。

「あのまま、イオス様と結婚していたらよかったのに、わたしったら大バカね」

 未練たらしくイオスの顔を見るウェルに、イソラは言う。


「私は心が広いから二番手にしてやってもいいぞ」

「あら、どうせわたしのところには通わせないつもりでしょ?」

「そうだな。名だけで充分だろう」



 ーー嫉妬深い男。ふふっ、イオスもお気の毒にね……。

 

 去りゆくウェルに、ラディウスは何も言わなかった。



「さあ、イオス帰ろう」

「うん。あっ、スズハも迎えに行かないと!」

「ーーその前に私を愛さないのか?」

「する!します!させてくださいっ!」


 必死すぎる息子を複雑な顔で見ながら、ウルスがフランマを見た。


「ラディウス王子はきっと変わる」

「ーーそうだといいがな……。まさか、竜に価値がないとは思ってもみなかったーー」

 威厳ある顔を曇らせ、王は嘆く。


「考えてみれば我々は竜など見た事がなかった。建国神話を信じていただけだ。ーーこれからはラディウスも厳しくしないとな」

「兄上ーー。我々がやらずとも、あれはやる気ですよーー」


 ふたりの視線に気づき、イソラは皮肉げに笑った。












 あの後、イオスはエンシスに事の顛末を話した。

 明日からラディウス達を新兵として軍に加えることを告げると、表情を崩さない男エンシスが、イオスの前ではじめて目を見開いた。


 しばらくは軍の中が騒がしいだろう。


















 屋敷に帰ると、イオスはすぐにイソラに襲いかかった。イソラもすぐに身体を開き、彼を受け入れる。

「ぁあっ!」

 息が乱れていく。

「うんっ!うっ!うっ!~~~ううん~~~!」

 熱く身体を重ね、幸せを噛み締める。

「はあー、いいーー!すごく、あぁ、愛してるっ!」

「ーーあぁ。とても、いい……」

「あぁっ!イソラ!好きだぁ!あっ~~~!ナカが気持ち良すぎて~~~!!もう、やばいっ~~~!」


 行為はいいのだがーー。


 イオスがあげる嬌声に、イソラは、少しうるさい、と思っていたそうだーー。









「イソラ……。本当に好きだよ」

「ああ。私もだ……」

 胸に抱いたイソラを離さないように、イオスはきつく抱きしめる。

「出会ったばっかりで、嘘くさく聞こえるかもしれないけど、一生大切にしたいんだーー」

 心からの言葉を伝えるーー、でも、こんなんじゃ伝えきれない、イオスはもどかしさにため息をついた。


「わかっている、イオス」

 薄い傷がある頬を撫でて、イソラが答える。

「私がほしくて仕方がないのだろう?」

「……」

「何だ?」

「その通りだよーーーーーーー!!」
















 





 ラディウスが今までの態度を改めたかといえば、そんな訳はなかった。すぐに訓練をサボり、陰で他の兵士をいじめようとするので、何度もイソラに殺されかける。

 やがて軍では、ラディウスがイソラにぼこぼこにやられているのが日常風景になった。




「まったく弱すぎる奴だ」

 蹴りをくらわせ、ラディウスを地面に叩きつける。苦しそうだが、何とか受け身は取れてきた。ウォロとアモルはすでに伸びているーー、情けない男共だと、イソラはため息をつく。


「るせー!」

「王族の男は一騎当千でなければ意味がない。さっさと立つがよい」

「黙れーー!」


「ふん。大方、私の首にあるイオスの印が気になっているのだろう?」

「!」

「きすまーく、というものらしいなーー。私がおまえ達で遊ぶと言ったから心配しているのだろう」

 可愛い奴だ、とイソラがほくそ笑む。


「ーーいつか、ーーーーー奪ってやる……」

 真面目な顔でラディウスが言うと、イソラは花が開くように笑んだ。


「望むところだーー。私は譲らん」


 ふたりは睨み合ったーー。






「イソラーー!」

 イオスが走ってくる。

「どうした?」

「モンスター討伐だよ!でてみる?」

「もちろん。強いもんすたあなのだろうな?」

「どうだろ?凶悪種ではあるけどね」

 イソラには物足りないかもーー、イオスが眉根を寄せた。


「では、ラディウス。さぼるなよ」

「サボるにきまってんだろ!おれは自由にするのが合ってるんだよ!」


「そうか?私は囚われるのも悪くはないと思うがな」

「……」

「自由など、秩序がないものが容易く制御できるものではないーー。檻の中にいるほうが安全なときもある」

「ふん!言いたいことはわかったぜ、クソイソラ」

「そうだ。いまの私はイオスの檻の中に、いつまでも飼われていたいと思っているからなーー」

「けっ!」


 

「えっ?えーと、なんかふたり仲良くなってる?」

 やめてよー、とイオスが頬を膨らませた。


 それを見たイソラとラディウスは、そのあまりの可愛さに、呼吸を忘れたそうだーー。

 

 



 ーーなにはともあれ、物語は幕を閉じる。

 きっとふたりはこれからも仲良く暮らしていくことだろうーー。



「ーーイオス、ひとつ頼みがある」

「なに?ぼくにできることかな?」

「将来、スズハが星藍国に行きたいと言ったときのために、陽白国か、連緑国と国交を結んでほしい」



 イオスの表情が曇る。

 現状ではとてもじゃないが実現できそうもないことだがーー。


「ーーわかった。なんとかするよ」

「ふふっ、男らしい旦那様だな」

「スズハが大きくなる前には、実現できるようにするよーー」

「ああ、頼むぞーー」


 その、願いは叶うのかーー、それはまた別の話だーー。







            終わり




ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。


『蒼き檻の中』ってタイトルですが、イソラはイオスの瞳につかまっちゃった♡、ってことです。わかりにくくてすみません。


 お付き合いいただき、本当にありがとうございました。

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