第23話 選んだ扉
第23話 選んだ扉
「どうしても解決策がわからない場合、正解を探すことを犠牲にするという選択肢があるんじゃないかしら」
「なんだって」
「それと、最後のメッセージ。本当に欲しいものは何か、目先の目的にとらわれるなというのもヒントになるんじゃないかしら。幸四郎の本当に欲しいものって何?落としたライターなの?」
「今となっては、ライターよりも春菜のことの方が大事だ。春菜を生け贄に差し出すぐらなら、ライターなんていらない」
二人は、しばしお互いをみつめ、沈黙が続いた。
「もしも…」
先に沈黙を破ったのは、春菜だった。
「なんだい、春菜」
「もしも、目先の目的がライターで本当に欲しいものが私だとしたら…」
幸四郎の瞳が輝いた。
「そうか。鬼は消せるな。だって、鬼は娘を差し出せと言っている。本当に欲しいものを差し出していいはずがない。やったぞ、春菜。正解は仙人の扉だ」
「だといいけど」
「おい、仙人。おまえの扉が正解だ。そこをどけ」
仙人はニヤリと笑った。
「よくぞ、たどり着いた。さあ、入るがよい」
仙人は扉の前から後ずさり、進むべき道を開けた。
「やったわね、幸四郎」
「ああ。こうなりゃ、罠じゃないことを祈るだけだ。行くぞ、春菜」
「ええ、行きましょう。死なば、もろともー」
二人は手をつなぎ、叫びながら仙人のいた扉を開けた。
「あっ」
「えっ、どうして」
幸四郎も春菜も、扉の向こうの景色に驚かざるをえなかった。
「ここは、部屋じゃないか」
「しかも、博士の部屋よね」
仙人が守っていた扉は、なんと博士の部屋へと続いていたのだ。
「そんな、バカな」
「どういうことなの、幸四郎」
驚く二人の前に、奥からゆっくりと博士が歩いてきた。
「あっ、それは」
「幸四郎が落としたライターじゃない!」
博士の手には、幸四郎が落としたライターが握られていた。