②秘密基地にて
② 秘密基地にて
「やっぱり、暗いわねえ」
「しかたねえだろ。電気は来ていないんだから。ローソクで我慢しな」
昼間とはいえ秘密基地には窓がない。締め切った空間は薄暗かった。幸四郎がローソクに灯をともしたときである。
「やだ、幸四郎。あなた、懐中電灯でも持ってるの」
「学校へ行くのに、懐中電灯を持っていく奴はいないだろう」
「でも、今ポケットの中で何か光ったわよ」
「そんなはずないだろ」
幸四郎はポケットの中に手を入れた。
「ほら、ポケットの中には何にも…」
幸四郎の手に何かが触れた。
「ああ、封筒が入ってた」
「えっ。何それ」
「何か知らないけど、今朝起きたら枕元にあったんだ」
「うそー。これ見て」
春菜もかばんの中から、封筒を出して見せた。
「何でおまえも持ってんだよ」
「今朝起きたら、目覚まし時計の横に置いてあったの」
「怪しいなあ」
二人は、しばし2通の封筒を眺めていた。
「やだっ」
「おまえも見たよな」
春菜が出した封筒も一瞬光ったようだ。
「とにかく、開けてみましょうよ」
「そうだな。たちの悪いイタズラかもしれないしな」
「幸四郎の封筒から開けてよ」
「何言ってんだ。春菜の封筒が先だ」
実際のところ、順番はどちらでも良かった。お互い自分が開けたくなかっただけだ。
「男のくせに、意気地無しなんだから。いいわよ、私が開けるから」
意気地無しと言う言葉に幸四郎が反応した。
「何だと。誰が意気地無しだって」
「本当は怖いんでしょ」
「こんなもの怖いわけないだろう」
「無理しなくてもいいわ、私が開けてあげるから」
「いや、俺が開ける」
「私が開けるわよ」
「俺だ」
「私よ」
「両方とも俺が開けてやる」
「じゃあお願い。さすが、男の子」
駆け引きは春菜の方が一枚上手のようだ。
「いいか、開けるぞ」
幸四郎は春菜の封筒から開けることに決めた。
「それっ。なんだなんだ」
「たいしたものじゃないわね」
中には、一枚の紙切れが入っているだけだった。
「何も書いてないな」
「あぶり出しじゃないの」
「そんなバカな」
冗談半分で、紙をローソクにかざして見た。
「あら、色が変わってきたわ」
「何か書いてあるぞ」
紙から文字が浮かびあがった。
*** あなたを戒律メッセンジャーに任命する *****
「なに、どういうこと。ずいぶん古風な方法を使ってるじゃない」
「わかんねえな。俺の封筒はどうなんだ」
幸四郎も自分の封筒を開けてみた。
「幸四郎の封筒にも紙切れが入っているわね」
「これもあぶり出しか」
こちらの紙もあぶってみた。
「あっ。出てきた、出てきた」
*** あなたを術メッセンジャーに任命する *****
「私のが戒律で、幸四郎のは術ね。なんのことかしら」
「しかも、メッセンジャーに任命ってどういうことなんだ」
どうやら二人は、何か良からぬものに選ばれたようであった。