表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/25

⑲見覚えのある部屋

⑲見覚えのある部屋


 迷わず右の道を選んだ二人であったが、自信があるわけではなかった。とはいえ、左の道を選択する気はさらさらなく、良くても悪くても選択肢は一つしかないのであった。

「そろそろかな」

「ええ。頂上付近まで来ているはずよ」

 あたりは暗闇に包まれており遠くまでは見通せないが、まもなく頂上に着くはずである。二人はそう信じていた。

「やっかいなことに、霧がでてきやがった」

「見てっ、幸四郎。頂上よ」

 二人の眼前に頂上が見えてきた。

「急ぐぞ、春菜。霧がどんどん深くなってきた」

「そうね。前来た時に避難した小屋はどこかしら」

「確かこちらの方だったぞ。あっ」

「どうしたの、幸四郎。やだ、うそ」

 避難しようとしていた小屋の方角に、小屋は3軒建っていた。

「春菜、もう一度心の目で見てくれないか」

「それがおかしいの」

「どうおかしいんだい」

「3つとも光っているのよ」

「3つともだって」

「ええ。幸四郎も、目を閉じてみて」

「どれどれ」

 幸四郎も目を閉じてみた。

「本当だ。どれも光っているな」

「でしょ。どれが本物かしら」

「やばいぞ、雨がふってきやがった」

「どうしよう。博士、助けて!」

■ □■□■ よく見ろ ■□■□■

「あれ」

「聞こえたわよね」

「ああ、よく見ろって」

「これ以上、何を見ろって言うの」

 じっくり考えている暇はない。しばらくの静寂の後、幸四郎の顔に微笑みが浮かんだ。何かひらめいたようである。

「そうか、右だ。春菜、一番右の小屋に入るぞ」

「わかったわ。そうしましょう」

 春菜に理由はわからなかったが、こうなれば死なばもろともである。二人は、一番右の小屋に入った。

「どうやら…」

「当たりのようね」

 二人が入った小屋は、明らかに見覚えのある部屋であった。

「問題はここからだな」

「ええ。選択肢がどんどん広がっていくわ。それにしても、よくわかったわね。一番右が正解だって」

「ああ。どこからともなく、よく見ろって聞こえただろ」

「確かに聞こえたわね」

「3軒の小屋をよく見たら、雨をはじいている屋根が一つだけあったんだ」

「そうだったの。残りの二つは幻というわけね」

「そうさ。しかし、どんどん手がこんできたな」

「そうね。まるで、試されているみたい」

「そう。おそらく、奴らは俺たちを試しているんだ」

「そうかもしれないわね。やだ、光ったわよ」

「俺の封筒もだ」

 次なる試練へのメッセージ。メッセージの謎をすべて解き明かした時、彼らは正式にメッセンジャーとして認められるのだろう。

「もしかしたら、幸四郎がライターを落としたのも偶然じゃないのかもしれないわね」

「俺も、そんな気がしてきた。再びこの小屋へ訪れたのも、すべては計算されたものかもしれないな」

「とにかく、封筒の中身をみてみましょう」

「そうだな。何をすれば良いかがわかりそうだ」

 二人の行動は、何者かによって計算されている。今までのところ、計算どおりに事がすすんでいるようだ。しかし、二人はその計算されたシナリオに反抗しようとは思っていない。ただ、純粋にその謎を知りたいという好奇心が、二人の行動の原動力なのであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ