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⑱昼間と夜の違い

⑱昼間と夜の違い


「さあ、春菜。再度、挑戦だ」

「そうね。まずは、立ち入り禁止区域まで行かなくちゃ」

「ああ。行こうぜ」

 二人は、さっそく山道を登り始めた。登り始めること30分。

「おかしいわね、幸四郎」

「ああ。立ち入り禁止区域なんか出てこないな」

「道を間違えちゃったかしら」

「おいおい。1本道だったじゃないか。間違えようがないだろう」

 いくら夜の山道とはいえ、1本道では間違えようがない。

「じゃあ、あれかしら」

「何だよ、あれって」

「道が変わっているってこと」

「どういうことだよ」

「時間とともに、道が変化してるんじゃないかしら」

「だとしたら、大変だ。早く探さないと、入り口がどこかへ行っちゃうぞ」

 すると、二人の目に立ち入り禁止の標識が見えてきた。

「あっ、あれ、標識じゃない?きっと、まわりが暗いから時間の過ぎるのが遅く感じただけかもしれないわね」

「だといいけどな」

 二人は標識に近づいた。

「違うわね」

「ああ、違う。昼間見た標識とは違うな」

 ブルルル、ブルルル。ここで、春菜の携帯が振動した。

「あら、博士からよ」

「なんて書いてあるんだ」

「ちょっと待ってよ。『夜の景色は昼間とは違う。時間の流れも違うように感じるはずだ。きみたちは、おそらく戸惑っていることと思う。でも、そんな時こそメッセージを思い出すんだ。信じるべき人を見極め、信じるべき事を見極めるんだ』」

「そうか。ここは、博士を信じるしかないな」

「幸四郎はそう思うの」

「当たり前だろう。他に誰を信じるというんだ」

「じゃあ、私も信じるわ」

 春菜の信じる人は、どうやら博士ではないようだ。

「問題は、信じるべき事は何かってことだな」

「博士は言っていた。同じ道順で行けばたどり着けるはずだと。ここで、道は二手に分かれている。おい、春菜。どちらへ行ったか覚えているか」

「それが、不思議なんだけど、覚えていないのよね。そもそも、二手に分かれていたのかしら」

「だよな。1本はおそらく、幻覚。正解は1本しかないはずだ。おい、春菜。何してるんだよ」

「確か、メッセージにあったでしょ。迷ったときは心で感じろ、頭で考えるのではなく心の目を開けってね」

 春菜は目を閉じて、心で感じようとしていたようだ。

「で、見えたのか」

「ええ。間違いない、右よ」

「なぜだい」

「左にあるのは暗闇、右には光が見えるの」

「そうか、じゃあ右へ行こう」

「えっ、幸四郎も目を閉じて見ないの」

「ああ。信じるべき人は博士だけじゃない。俺は春菜を信じるよ。そして、信じるべき事は、春菜に見えた光さ。おそらく、そこに探しものはある」

「私もそう思うわ」

 二人の意見は一致した。信じるべき人、信じるべき事は遠くにあるとは限らない。もっとも信ずるべきは、身近にいる人。今この瞬間で言うならば、春菜と幸四郎がお互いを信じあうことなのではないかと悟ったのであった。



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