⑭博士の生い立ち
⑭博士の生い立ち
「ところで、博士もそのことは知ってるんですか」
「誰だい、博士って」
「ああ、すみません。俺たち勝手に教授の息子さんに博士っていうあだ名をつけちゃったんです」
「ははは。かけるのことか。確かに年の割には老けて見えるし、風貌からいくと私よりも博士っぽいな」
「かけるくんって言うんですか」
「そう、土岐かける。いい名前だろ。本人は気に入っていないみたいだが」
「時を駆けるなんて、素敵ね」
「自己紹介がまだだったね。私は土岐学。よろしくね」
「こちらこそ。私は椎名春菜。春菜って呼んでね」
「俺は吉幸四郎。幸四郎でいいよ」
「さて、今までのメッセンジャーの共通する点を整理しておこう」
「そうよね。ちょっと、気になるわ。年齢は?性別は?どんなメッセージを受け取っていたのかしら」
「そうだな。俺も気になるな。教授、知っていることを教えてください」
「メッセンジャーは、いずれも男女一組。年の頃は15~16歳。受け取ったメッセージは、気味悪がって捨ててしまっている。だから、私が見た手紙はきみたちの手紙が初めてということになる」
「そして、メッセンジャーを放棄した人たちは」
「闇に葬られるってことだな」
「そうなんだ。いずれにせよ、手がかりが少なすぎて研究が進まない。そこで、第五のメッセンジャーを見つけようと、この町に来たってわけだ。この裏山は、ちょうど約1200年前の地層でできているんだ」
「そうだったの」
「会うべくして、出会ったって感じですね」
「ああ、きみたちとも。そして、かけるともね」
「えっ。息子さんとも?」
「どういうことですか」
「実は、かけるは私の息子ではない」
「何ですって?」
「そういえば、教授の奥さんのことは話に出てこないけど、何か関係があるんですか」
聞いてはいけないことを聞いてしまったかもしれないと、幸四郎は少し後悔した。
「嫁さんか。いずれは、欲しいものだな」
「まさか、教授は独身ってわけじゃないでしょう。お亡くなりにでも…」
春菜も立ち入ったことを聞いてしまったと後悔した。
「心配はいらないよ。私は結婚をしたことはないからね。かけるは5年ぐらいまえに、発掘現場で記憶喪失の状態で見つかったんだ。まだ、小学生5年生だった」
「記憶喪失なのに、年齢はわかったんですか」
「変だろ。でも、かけるはランドセルをしょっていた。中身は、小学5年生の教科書。名前は不思議なことに、土岐かけるって書いてあったんだ」
「同じ苗字だったのね」
「偶然にしちゃ、できすぎている気もするけど」
「そのまま、施設に預かってもらうこともできたんだけど、何か気になる子どもでねえ。私に着いて来るかって聞いたら、一緒に行きたいっていうんだよ」
もともと教授は子どもが好きであった。かけるのことを不憫に思った教授は、引き取ることにしたのだ。仕事がら、いつもそばにいてやることはできなかったが、かけるはさびしがることはなかった。教授の仕事は発掘現場であるため、転校も多かった。そのためか、かけるは特定の友達を作ることがなかった。友達といえば、もっぱらパソコンである。外で遊ぶこともなく、いつもパソコンとにらめっこをしていた。この5年間で集積した知識は相当なものだ。今や、教授よりも詳しい分野も多いという。
「まったく、変な子でね」
「あら。頼りになるわよねえ、幸四郎」
「そうさ。今となっては、強力な協力者だよな」
「そうか。それは良かった。あの子にも、やっと友達ができたんだな」
*** ブルルル、ブルルル *****
「春菜。携帯ブルってるぞ」
「噂をすれば何とやら。きっと、博士よ」
予想通り、博士からメールであった。元の世界に戻れた安堵感と二人めの協力者に出会い、つかの間の安らぎを覚えていた春菜と幸四郎であった。しかし、メールの内容は風雲急を告げるものであり、またしても時空の旅に出かけるはめになろうとは、この時の二人には知る由もなかった。




