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軍幕に残された、東国王は南国王を見たり軍幕の天井を見たり、所在無さげにし、
南国王は、ただただ、腕を組んで目を閉じていた。
「...おい...南国の、どうするよ?」
「...」
「...おいってば...」
「なぁ、聞こえてんだろ?返事しろよ?」
南国王は目を開き、ギロリと東国王を睨みつける。
「...全く以て、いい恥さらしである...」
再び、目を閉じながらごちる。
「...何だよ、何か文句でもあるのかよ?」
「...いや、文句はないのである。お主の計画に最初に乗り、西国王と北国王を説得する事に加担したのは我なのである。
しかし、ここまで考えなしの行動を取られると、流石に呆れてものも言えんのである。」
「...何だよ!!結局、オレのせいだって言いたいのかよ!!」
「当初の計画の立案者はお主である。それは間違いないであろう?」
「それはっ!!...まぁ...そうだけどよぉ...」
南国王は自分にはさも責任はないかのように東国王に言うが、南国王に責任が無いなどと言うことは決してないのだ。
しかし、年若く粗雑な東国王は、南国王に言いくるめられている事に気付かない。
「まぁ...ネズミ一匹逃さないと豪語したのはお主である。
責任を持って、中央国王を捕らえ、再度我らを招集するがよかろう。」
そう言うと、南国王は立ち上がり、悠然と軍幕を出て行った。
「...小僧の尻馬に乗り、手柄を掠め取って宗主国となる我が野望も潰えたのである...
早く中央国王を探して保護し、東国王を討つのが得策と考えるのである。」
西国王を小心愚王と子馬鹿にしながら、考えている対策は西国王と変わらない。
いや、西国王は北国王に諫められ、そのような手が通じる訳もないと、早々に諦め、
中央国王に謝罪をする考えを持つだけマシだ。
このような手が中央国王に通じると信じて疑わない思考回路こそ、南国王の脳筋愚王たる所以なのだろう。