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北国王が出て行った軍幕の中で、残りの3国王たちは互いの顔を見合わせていた。
「おい...どうするよ?...俺達の計画はもうおじゃんだぜ?...」
「...まさか、北国王があれ程の遣り手とは思いもしなかったのである...」
「...二人とも、隣国に強国が隣り合わせな北国と我が国を甘く見過ぎではないかとおもいますぞ?」
「...なんだと?小心愚王が調子こいてんじゃ...」
そこまで言った所で、東国王が押し黙る。
いや、押し黙ったのではない。身体がうまく動かないのだ。
「はぁ...どうしてこうも簡単な手に引っかかるかねぇ...粗雑愚王が...」
「な...に...を...」
「他人に答えを求めずに、自分の状態から答えを導きだしてみてはどうですかねぇ?...」
「お主...」
西国王を諫めようと南国王が声を発するが、そこで違和感に気付く。
東国王と同じように、身体がうまく動かなくなっていた。
「南国王も...身体が大きいので薬の効きが遅いのは難点ですが、結局引っかかっていては、東国王と程度は同じですぞ?」
「...」
東国王も南国王も身動きできない状態で、もはや言葉を発することも難しい状態になっていた。
近衛騎士団長も同じく動くことも声を発することもできなくなっていた。
「はぁ...あなた方に少しでも期待した私が愚かであったのでしょう...
私にはない強さに期待していたのですが...結局、自分の事は自分でどうにかするしかないのでしょうねぇ...」
下を向いて目を閉じ、深いため息を吐いた後、西国王は立ち上がり、軍幕を出た。
「中央国王よ私はただただ愚かな王でした...
願わくば、貴方の再起を...」
西国王は自身も国も滅ぶ事を覚悟し、裏切ってしまつた中央国王への謝罪の言葉を空に向けて発した。