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...あれから、どれ程の月日が経ったであろうか...
我が国の民が隣国4国に惨殺され、復讐に隣国4国を滅ぼした。
その事に後悔はない。我が国の民達の無念を果たさずに何が王であるか...
しかし...時々考えてしまう、どうすれば、このような悲劇を防げたか...と...
そして、今日も庭園に供花を植える。
...更に時が過ぎた...
ゾンビ達は更に動かなくなり、レイスも消えていく。
最近は、スケルトン兵の中にも動かなくなる者が増えている。
時折、我が掌から噴き出る炎と共に、その中に現と見紛う程の光景を見る。
我が民達が追われ、焼かれる姿...我が国が侵略され、都市が焼かれる情景...
何故、あのような悲劇が起こったのか...掌から噴き出る炎を見ながら考える...
そして、今日も庭園に供花を植える。
...更に時が過ぎた...
少しずつ、自身の記憶が摩耗していく事に気付く。
宰相や将軍、近衛騎士団長はそのような気配がない為、自分だけなのだろう。
宰相に相談すると、我だけが生きたまま不死王となった為ではないかとの事だった。
何れはこの憤怒の炎も消え、我も朽ちるのかもしれない。
それまでは...と、今日も庭園に供花を植える。
...更に時が過ぎた...
先日、我が傍によく控えていたデュラハンが姿を消した。
どうやら、自身の責務を全うしたと判断したのであろう。
あの者は、何故、我の傍に控え、我を護ろうとしていたのか...
我の力はデュラハンに劣る事などありはしないのに...
それでも、彼がいなくなった事に少しの寂しさを覚え、彼の為に庭園に花を植える。
...更に時が過ぎた...
時々、我の前に姿を現す吸血鬼が、我に別れの言葉を告げ、そして灰となった。
あの吸血鬼は時折、この我が地に現れる人間達を、スケルトンを率いて排除しては報告をしてきていた。
そして、ここ数年はそのような人間達も居なくなった事で、自身の責務を全うしたと判断したのであろう。
豪快に笑う姿を思い出し、少しの寂しさを覚え、彼の為に庭園に花を植える。
...更に時が過ぎた...
玉座の間に我が居る時は必ず左に現れるリッチが、今日は現れない。
我が地に存在するゾンビやレイス、スケルトン達の様子をいつも我に報告していたが、先日、全てのゾンビ、レイス、スケルトンが消えたとの報告を受けたので、
自身の責務を全うしたと判断したのであろう。
何故かあのリッチに重なる人間の男の姿を思い出し、少しの寂しさを覚え、彼の為に庭園に花を植える。
...更に時が過ぎた...
朽ち果てたその中にあり、唯一朽ちる事なくある庭園。
そこには、数万の白い花が咲き誇っていた。
そこを歩く、漆黒の衣服を纏い頭に王冠を乗せた骸骨。
堂々と歩いているようで、どこか物悲しく、どこか滑稽な姿。
時折、立ち止まって呆けた様に空を見る。
視線を掌に向けると掌から噴き出る炎と共に、その中に現と見紛う程の光景を見る。
...逃げ惑う人々...
...焼かれる人々...
これは何の光景であろうか...思い出せない...何故であろうか...
...更に時が過ぎた...
数万の咲き誇る白い花の中央、古惚けた中にも威厳を感じさせる椅子に座る、漆黒の衣服を纏い頭に王冠を乗せた骸骨。
その骸骨は白い花を眺め、その一つ一つを見る度、何故か悲しい気持ちになる。
...ゾンビやスケルトンは朽ち、レイスは消えていった...
...デュラハンと吸血鬼、リッチは自身の責務を全うして消えていった...
...この地にはもう我しか存在しない....
その事に少しの寂しさを覚えながら、何故、我は寂しさを覚えるのかと疑問に思うが、何も思い出せない。
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隣国4国が中央国によって滅ぼされ、既に1000年の時が過ぎていた。
北国と東国は極北国によって、西国と南国は帝国によって、それぞれの王族によって新しい国として生まれ変わっていた。
それには理由があった。
中央国に、いや元中央国にあの憤怒炎王が今も存在しているのだ。
極北国と帝国は、新隣国4国を利用し、元中央国を監視している。
既に、元中央国には憤怒炎王以外のアンデットは存在していない。
現在の元中央国にあるのは、深い森と、元中央国王城跡に咲き誇る数万の白い花。
そして、その中央にある古惚けた玉座と思しき椅子に座り、時折、白い花の園を歩き回る憤怒炎王と思しき、漆黒の衣服を纏い頭に王冠を乗せた骸骨だけである。
憤怒炎王と思しき骸骨は、既に1000年の時を超えてここに存在しているのだ。
その他のアンデットが消えたとはいえ、憤怒炎王の恐怖は隣国4国が滅ぼされた時の事と共に、物語として伝えられている。
勿論、アンデットなど、そんなものは物語の中ものでしかないと笑う者もいたが、少なくとも、王族は、成人すると共に、一度は憤怒炎王の姿を見に行くのが通過儀礼となっており、あの姿を見た途端に泣き叫ぶ者も少なくはない。
時折、愚かな王族は憤怒炎王を討ち滅ぼさんと剣で切り掛かるが、憤怒炎王は何の手心を加える事もなく、一瞬にして焼き尽くしてしまう為、大きな諍いとなる事はなかった。
そもそも、あれに戦いを挑む事が愚かな行動なのだと、今も生きる王族は理解している。
その為、愚かな王族があれに戦いを挑み、焼き尽くされても、報復を行なうという考えを持は持たないのである。
下手を打てば、それこそ旧隣国4国の二の舞である。
千年の時が過ぎて尚、今も存在する者には敬意を払えど、戦いを挑んではならない、それが、極北国と帝国を含む、元中央国に隣接する国々の統一見解となった。
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...あれから、どれだけの刻が過ぎたのであろうか...
我は今も、白い花に囲まれたこの地に存在している。
我の前から消えた者達の姿ももう思い出すことはできない。
以前は時折、我を打ち滅ぼさんと戦いを挑む者もいたが、最近はそのような者も現れなくなった。
我が消える日は何時の事となるのか...我の使命は、未だ全うされていないという事であろうか...
消える事ができた者達を羨ましく思う時もある。
だが、我はこの土地に咲く白い花を護り続けなければ...
時折、白い花を眺めながらこの土地を歩く。
咲き誇る白い花を見て安堵する。
中央の古惚けた椅子に座り、掌を見ると、小さな炎が噴き出てくる。
その炎を見ていると、現と見紛う光景が頭の中に現れる。
...苦しみあえぐ人々...
...朽ち行くゾンビやスケルトン...
その光景を悲しく思いながらも、何故、我は悲しいのであろうか...と思い悩むのであった。




