表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王道楽土  作者: Gie
22/23

22

...あれから、どれ程の月日が経ったであろうか...

我が国の民が隣国4国に惨殺され、復讐に隣国4国を滅ぼした。

その事に後悔はない。我が国の民達の無念を果たさずに何が王であるか...

しかし...時々考えてしまう、どうすれば、このような悲劇を防げたか...と...

そして、今日も庭園に供花を植える。


...更に時が過ぎた...

ゾンビ達は更に動かなくなり、レイスも消えていく。

最近は、スケルトン兵の中にも動かなくなる者が増えている。

時折、我が掌から噴き出る炎と共に、その中に現と見紛う程の光景を見る。

我が民達が追われ、焼かれる姿...我が国が侵略され、都市が焼かれる情景...

何故、あのような悲劇が起こったのか...掌から噴き出る炎を見ながら考える...

そして、今日も庭園に供花を植える。


...更に時が過ぎた...

少しずつ、自身の記憶が摩耗していく事に気付く。

宰相や将軍、近衛騎士団長はそのような気配がない為、自分だけなのだろう。

宰相に相談すると、我だけが生きたまま不死王となった為ではないかとの事だった。

何れはこの憤怒の炎も消え、我も朽ちるのかもしれない。

それまでは...と、今日も庭園に供花を植える。


...更に時が過ぎた...

先日、我が傍によく控えていたデュラハンが姿を消した。

どうやら、自身の責務を全うしたと判断したのであろう。

あの者は、何故、我の傍に控え、我を護ろうとしていたのか...

我の力はデュラハンに劣る事などありはしないのに...

それでも、彼がいなくなった事に少しの寂しさを覚え、彼の為に庭園に花を植える。


...更に時が過ぎた...

時々、我の前に姿を現す吸血鬼が、我に別れの言葉を告げ、そして灰となった。

あの吸血鬼は時折、この我が地に現れる人間達を、スケルトンを率いて排除しては報告をしてきていた。

そして、ここ数年はそのような人間達も居なくなった事で、自身の責務を全うしたと判断したのであろう。

豪快に笑う姿を思い出し、少しの寂しさを覚え、彼の為に庭園に花を植える。


...更に時が過ぎた...

玉座の間に我が居る時は必ず左に現れるリッチが、今日は現れない。

我が地に存在するゾンビやレイス、スケルトン達の様子をいつも我に報告していたが、先日、全てのゾンビ、レイス、スケルトンが消えたとの報告を受けたので、

自身の責務を全うしたと判断したのであろう。

何故かあのリッチに重なる人間の男の姿を思い出し、少しの寂しさを覚え、彼の為に庭園に花を植える。


...更に時が過ぎた...

朽ち果てたその中にあり、唯一朽ちる事なくある庭園。

そこには、数万の白い花が咲き誇っていた。

そこを歩く、漆黒の衣服を纏い頭に王冠を乗せた骸骨。

堂々と歩いているようで、どこか物悲しく、どこか滑稽な姿。

時折、立ち止まって呆けた様に空を見る。

視線を掌に向けると掌から噴き出る炎と共に、その中に現と見紛う程の光景を見る。

...逃げ惑う人々...

...焼かれる人々...

これは何の光景であろうか...思い出せない...何故であろうか...


...更に時が過ぎた...

数万の咲き誇る白い花の中央、古惚けた中にも威厳を感じさせる椅子に座る、漆黒の衣服を纏い頭に王冠を乗せた骸骨。

その骸骨は白い花を眺め、その一つ一つを見る度、何故か悲しい気持ちになる。

...ゾンビやスケルトンは朽ち、レイスは消えていった...

...デュラハンと吸血鬼、リッチは自身の責務を全うして消えていった...

...この地にはもう我しか存在しない....

その事に少しの寂しさを覚えながら、何故、我は寂しさを覚えるのかと疑問に思うが、何も思い出せない。


---


隣国4国が中央国によって滅ぼされ、既に1000年の時が過ぎていた。

北国と東国は極北国によって、西国と南国は帝国によって、それぞれの王族によって新しい国として生まれ変わっていた。

それには理由があった。

中央国に、いや元中央国にあの憤怒炎王が今も存在しているのだ。

極北国と帝国は、新隣国4国を利用し、元中央国を監視している。

既に、元中央国には憤怒炎王以外のアンデットは存在していない。

現在の元中央国にあるのは、深い森と、元中央国王城跡に咲き誇る数万の白い花。

そして、その中央にある古惚けた玉座と思しき椅子に座り、時折、白い花の園を歩き回る憤怒炎王と思しき、漆黒の衣服を纏い頭に王冠を乗せた骸骨だけである。


憤怒炎王と思しき骸骨は、既に1000年の時を超えてここに存在しているのだ。

その他のアンデットが消えたとはいえ、憤怒炎王の恐怖は隣国4国が滅ぼされた時の事と共に、物語として伝えられている。

勿論、アンデットなど、そんなものは物語の中ものでしかないと笑う者もいたが、少なくとも、王族は、成人すると共に、一度は憤怒炎王の姿を見に行くのが通過儀礼となっており、あの姿を見た途端に泣き叫ぶ者も少なくはない。

時折、愚かな王族は憤怒炎王を討ち滅ぼさんと剣で切り掛かるが、憤怒炎王は何の手心を加える事もなく、一瞬にして焼き尽くしてしまう為、大きな諍いとなる事はなかった。

そもそも、あれに戦いを挑む事が愚かな行動なのだと、今も生きる王族は理解している。

その為、愚かな王族があれに戦いを挑み、焼き尽くされても、報復を行なうという考えを持は持たないのである。

下手を打てば、それこそ旧隣国4国の二の舞である。


千年の時が過ぎて尚、今も存在する者には敬意を払えど、戦いを挑んではならない、それが、極北国と帝国を含む、元中央国に隣接する国々の統一見解となった。


---


...あれから、どれだけの刻が過ぎたのであろうか...

我は今も、白い花に囲まれたこの地に存在している。

我の前から消えた者達の姿ももう思い出すことはできない。

以前は時折、我を打ち滅ぼさんと戦いを挑む者もいたが、最近はそのような者も現れなくなった。

我が消える日は何時の事となるのか...我の使命は、未だ全うされていないという事であろうか...

消える事ができた者達を羨ましく思う時もある。

だが、我はこの土地に咲く白い花を護り続けなければ...


時折、白い花を眺めながらこの土地を歩く。

咲き誇る白い花を見て安堵する。

中央の古惚けた椅子に座り、掌を見ると、小さな炎が噴き出てくる。

その炎を見ていると、現と見紛う光景が頭の中に現れる。

...苦しみあえぐ人々...

...朽ち行くゾンビやスケルトン...

その光景を悲しく思いながらも、何故、我は悲しいのであろうか...と思い悩むのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ