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帝国の王太子が帝国と西国の国境にある城に到着する。
「国境騎士団団長!!状況はどうであるか?!」
「王太子殿下!早速のご来城恐れ入ります!
現在の所、西国側に集まっている兵達に動きはありません!」
「了解した!まずは私の目で状況を確かめさせてもらうとしよう!」
王太子は早速、城の城壁に登り、西国側の兵士を見る事とした。
城の城壁から見た、西国側の状況に、王太子は目を疑った。
そこに居たのは、整然と並ぶ鎧を着た骸骨と、その先頭に立つ、中央国将軍と思しき姿。
しかし、中央国将軍の肌の色は青白く、決して生きている人間のそれでは無かった。
それでも、中央国将軍とは何度も相見みえているのだ、あの顔と姿に見間違いはしない。
王太子と中央国将軍と思しき者との目が合うと、中央国将軍と思しき者が大声を上げる。
「帝国王太子と見受ける!!我は中央国将軍なり!!
我々は、中央国を身勝手な思いで侵略し、滅ぼそうとした西国へ復讐に来た者である!!
帝国が手出しをせねば、こちらから手出しはせぬ!!
しかし、こちらに手出しをするのであれば容赦しない事をご承知いただこう!!」
あれは、やはり中央国将軍であったか...
「中央国将軍に告げる!!できれば、1対1で話し合いの場を持ちたい!!
これから私がそちらに出向く!!話し合いに応じていただけるか?!」
「おっ!!王太子殿下!!」
いきなりの王太子の言葉に、傍に控えていた国境騎士団団長がたじろぐ。
「王太子自ら出向くのであれば否応はない!!私も帝国国境城城門前まで一人で出向く!!
止まれという場所まで歩く故、止まるべき場所の指示を願う!!」
「相分かった!!国境騎士団長!!指示を任せた!!」
直ぐに中央国将軍からの返答があった為、国境騎士達が止める間もなく、王太子と中央国将軍との話し合いが決まってしまった。
帝国国境城城門から現れた王太子は、立ち止まってこちらを見ている中央国将軍を見て、悠然と歩き出す。
そして、互いの剣の間合いにあと一歩という所で立ち止まった。
「帝国王太子である!!中央国将軍よ!!久しいな!!」
「待っておったぞ、帝国王太子!!我が前に立ち、尚動じぬ姿!!流石の武勇を誇る王族である!!」
「して...確認であるが...お主、死んだのではなかったかね?」
「うむ。一度死して生き返った。どうやら、吸血鬼となったようでな。
日の光の影響を受ける事もなく、吸血も必要とせんから、吸血鬼と言われても腑に落ちんのだがな。」
「...死者が生き返るとは...何事があったのだ?」
「先程申した通り、我が国を滅ぼそうとした4国とその仕打ちに怒り、己が身体から噴き出る憤怒の炎で自身を焼いた結果なのだ。
我が中央国国王陛下が、生きながらに不死王となった。
それに呼応するように、宰相はリッチに、近衛騎士団団長はデュラハンに、私は吸血鬼に、
そして、我が国の兵士はスケルトンに、無辜の民達はゾンビとレイスになった。」
「...そのような事が...起こりえるのか?いや...実際に起こったのだな...
目の前で見ていても俄かに信じられん...」
「生き返りこのような姿になった我ですら未だに信じられんのだ、無理もあるまい。」
そうして互いの顔を見て、互いに苦笑いした。
帝国王太子と中央国将軍は、互いの武勇を知る者であり、剣を交えた事もあるのだ。
互いを知るからこそ、敵であれ信頼関係はある。
だからこそ、王太子は1人だけでここに現れ、中央国将軍もそれに応じたのだ。
「して...今回の用向きを詳しく聞きたいのだが。」
「うむ。先程も申したが、我が中央国は、我が国を滅ぼそうとした4国を討ち滅ぼす為に出向いてきている。
これは復讐であり、私怨である。打ち滅ぼした後は、我々の兵は全て中央国へ帰る。
その後の4国については好きにすればいい...
手出しをしなければ、こちらから仕掛ける事もないので、手出しは無用で願いたい。
これが、我が中央国国王陛下からのお言葉である。」
「...そうか、了解した。帝国は中央国の兵が中央国に引き揚げるまで手出ししない事をここに宣言しよう。
ただし、我が国の間者が様子を見る事だけが了承願いたい。」
「間者がいる事を手出ししてきていると認識はすまい。
但し、スケルトン兵達は細かい指示ができんのでな、間者が殺される可能性がある事はご了承願おう。」
「それは平時でも同じ事、間者が居た事で戦争にならないのであれば問題あるまい。
こうして、再び相見みえる事が出来た事を嬉しく思う。」
「我も、有意義な会談となった事を嬉しく思う。」
互いに握手を交わす為に一歩踏み出る。
こうして、帝国と中央国の話し合いが終わった。
...かに見えた。
「さぁ!!話し合いは終わった!!後は剣で語ろうではないか!!
お主と剣をまた交える事ができる喜びに、私は打ち震えているぞ!!」
王太子は剣を抜き、中央国将軍に剣先を向ける。
「...いやいや、話し合いは無事終わったのではなかったのかね?」
中央国将軍は一瞬呆気に取られたが、直ぐに冷静に戻る。
「勿論、無事に終わったとも!!
なればこそ!!後は武勇を競うだけであろう!!」
「...これ、戦争の火種にならんかね?」
「ならん!!これはあくまでも、互いの武勇を競うものである!!
例え一大事があったとしても、帝国は報復はしない!!
...一大事があったら、お主が私を吸血鬼にしてくれればよいではないかね?」
「...いやいや、吸血鬼って、我は日の光の影響を受ける事もなく、吸血も必要とせんが、
お前さんがそうなるとは限らんぞ?」
「むぅ...ままならんのぉ...
まぁよい!!とにかく、剣で語り合おうぞ!!
いざ尋常に!!勝負!!」
そうして、王太子と中央国将軍の一騎打ちが始まる事となった。
そして、数刻後、地面に仰向けで倒れ、荒い息をする王太子と、王太子に剣先を向ける中央国将軍がいた。
「はっはっは!!負けた負けた!!やはり強いな、中央国将軍!!」
「いや...お主も充分に強かったぞ、王太子。あれから更に腕を上げているようで何よりだ。」
「うむ。2年前であったか...あの時も今と同じようであるな。
そして、その剣筋、強さ、そして礼儀、まぎれもなく中央国将軍であると理解した!!」
そこではたと気付く、これは、我が中央国将軍に似た何かである可能性を払拭する為の戦いであったかと。
「...なるほど、その知力と武勇、お主もまぎれもない、帝国王太子よな。」
「ん?どういう事だ?」
「ぬ?これは、我が中央国将軍に似た何かである可能性を払拭する為の戦いではなかったのかね?」
「いや?私はただ中央国将軍と剣を交えたかっただけだが?」
帝国王太子の言葉に再び呆気に取られる。
そこに、帝国国境騎士団団長が現れる。
「中央国将軍!!我が国の馬鹿王太子が申し訳ない!!
また、王太子以外に私が現れた無礼をここに詫びる!!」
「...いや、構わない。王太子と敵国の将軍が一騎打ち始めたら流石に驚くだろうし、捨て置けんだろうからな。」
「寛大な心遣い、痛み入る!!
...我が帝国王族の血筋は、何でこうも血気盛んなのか...」
「...お主達も中々に苦労しておるのだな...」
「...分かっていただけるか...」
そして、国境騎士団団長が深いため息をついた。
「ほら!王太子殿下、そろそろ戻りましょう!」
動けるくらいには回復したでしょう?!」
「うむ。そうだな。」
そう言って、王太子は立ち上がる。
「中央国将軍よ!!いい戦いであった!!再び剣を交えようぞ!!
私はこれからも研鑽を積み、何れはお主に膝を着かせてみせるぞ!!」
そう言い、王太子は今度こそ、手を差し出した。
「うむ!!良い戦いであった!!また相見みえようぞ!!」
そうして、お互いに固い握手を交わし、今度こそ、会談は終了した。




