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中央国前の軍幕の中で、隣国王達は再び集まって顔を突き合わせていた。
いや、南国王だけはは腕を組み、そっぽを向いていた。
「南国王よ!!何という浅はかなことをしたのだ!!」
「その通りですぞ!!これでは、悪しき中央国を誅する戦いではなく、ただの虐殺ですぞ!!」
「宰相達の首を落とすのはしょうがない!!それはお主に任せたのだから、お主の判断に任せる所だ!!
だが!!自身の溜飲を下げる為だけに無辜の民を傷つけるなど、あってはならぬことだ!!」
「...我は悪くないのである...悪いのは中央国の宰相達である...」
北国王と西国王に叱責され、南国王はばつの悪そうな顔をしながら、そう答えた。
「...聞き間違えかの?...もう一度言っていただけるかね?」
「...我は悪くないのである...悪いのは中央国の宰相達である...」
南国王の言葉に、流石の北国王も堪忍袋の緒が切れる。
「言うに事欠いて!!中央国の宰相達のせいにするなど!!」
「事実なのである!!連中が我を脳筋の自尊心愚王などと侮辱したのが悪いのである!!」
そこで初めて、南国王は北国王の顔を見る。
「...宰相達の首を刎ねた事はどうでもいい...お主に任せたのだからな...
しかしっ!!我等は!!無辜の民達を傷つける事まで!!任せた覚えはないっ!!」
「その通りです!!我々は、悪しき中央国を滅ぼす戦いをしていた筈なのに!!
これでは、悪人は我々ではないですか!!」
南国王は再びそっぽを向く。
「...はぁ...中央国の宰相達の言葉通りだの...」
「...そうですね...まさに、脳筋の自尊心愚王...貴方にぴったりの名前じゃないですか...」
「...言うに事欠いて、お主等も我を侮辱するか!!」
北国王と西国王の言葉に怒りを露わにして二人の王を睨みつける。
「事実でしょう?自身の立てた計画が上手く行かなかった事を中央国の宰相達のせいにし、
自身の溜飲を下げる為だけに中央国の無辜の民を虐殺...
ほら、貴方にぴったりですよ?」
「我慢ならんのである!!ここでお主達を...」
「できると思っているのかね?」
北国王が言葉を発すると同時に、南国王とその近衛騎士団長の首に暗殺者の刃が突き付けられる。
「動かない方がいいですよ?貴方に突き付けられた刃には、私の国で作られた、象でも1秒で亡くなる毒が塗られているのですからね。
少しでも傷が付けば、貴方は1秒と経たずに死んでしまいますよ?」
それでも動こうとしたのを西国王が制する。
「そのような...」
「無いとお思いで?先日、私が撒いた毒で動けなくなっていたのに?」
そこで、南国王の後ろから「どさっ」という音がする。
恐る恐る後ろを見ると、南国王の近衛騎士団長が紫色の顔をして目を見開き、泡を吹いて倒れているのが見えた。
そこで、自身の失態に気付いて青褪め、北国王達の方を見る。
「む...無体なのである!!卑怯なのである!!」
「...お主の中央国の無辜の民達への仕打ちよりはましだと思うがのぉ。」
「貴方の仲間であると思われる方が無体ですよ...」
ここに南国王の味方をするものは誰一人としてない。
流石の南国王ももう何も言えない。
「...さて...南国王はこのままひっ捕らえて、中央国王に差し出す事としましょうか...」
「...そうですな...本件は、東国王と南国王に唆された事によって起こった不幸である為、
南国王を捕えて差し出して謝罪し、賠償は後日話し合う...という感じでしょうか...」
「まっ...待つのである!!我は悪くないのである!!
東国王に全ての罪を着せて謝罪すればいいのである!!」
「...言うに事欠いてまだそんな妄言を言うのか...流石に呆れるのぉ...」
「...流石は脳筋の自尊心愚王ですね...
何れにしろ、中央国の無辜の民を傷つけたのは、東国王が亡くなった後です。
そんな世迷言が中央国王に通じる訳もないです。
観念して、自身の行ないを悔いて罰を受けて下さい。」
「いっ...嫌なのである!!我はまだ死にたくないのであるっ!!」
「貴方の言葉など、もうどうでもいいのですよ。」
西国王の近衛騎士団長が南国王の口を塞ぐ。
すると、南国王は身動き一つできなくなった。
「な...あ...」
「南国王に手枷と足枷をし、簡易牢に運びなさい。」
北国王がそう指示すると、暗殺者が南国王に手枷と足枷を掛け、南国王を運んでいった。
「...さて...明日は中央国王への謝罪をせねばならん...気が重いのぉ...」
「...そうですねぇ...我々の謝罪を受け入れていただければいいのですが...」
「駄目であったとしても...我が国の者達への無体はなさるまいよ。
我等の命だけで済むのであれば、安いものだ。」
南国王と違い、自身の命を以てしてでも自身の国の民を護ろうとする北国王と西国王。
北国王も西国王も、自身が王になった時、隣国の強国に攻め入られた場合は自身の命を以て民を護る覚悟をしていたのだ。
「何ともまぁ...とんでもない泥船であったのぉ...」
「そうですねぇ...」
北国王と西国王は互いに目を合わせた後、目を伏せて深いため息を吐いた。




