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男は焦土となったその地に呆然と立ち尽くしていた。
何故、何故、このような仕打ちを受けなければならなかったのだ...
男は小国の国王であった。
前国王が病気により崩御し、齢32歳と若くして王となったが、前国王の遺志を継ぎ、民の為に尽くす彼は、紛れもない賢王であった。
即位から3年、未来永劫の民の幸せを思う王は、国を発展させる事に尽力してきた。
善政を敷いて尚、国を発展させてきた王は、誰が言うでもなく賢王と呼ばれ、民にも配下の者達にも慕われた。
それでも腐敗する貴族は居たが、そのような者達は民や配下の者達、他の貴族が許す訳もなく、自浄作用により没落していき、最終的には腐敗した貴族よりも、善政を以て土地を治めた貴族の方が発展し、国は更に裕福となっていった。
隣国とは友好な関係を築いていた。
築いていた筈であった。
お互いの国を行き来し、お互いの国を支え合い、共に発展していく事で信頼関係を築いてきた。
国境はあれど、身分証明さえできれば自由に行き来でき、国を護る軍はあれど、有事の際にお互いの国が連携して国を護る為のものであり、隣国同士で争う為ものではなかった。
なのに...なのに...