絵が好きな男の子
恋愛系です。
「なんかおすすめの本ある?」
学校の図書室で親友の七瀬に言われた。
「『面白いほど分かるアドラー心理学』とかいいんじゃない?」
「私、心理学とか興味ない。あっ、これにしよっと」
彼女の借りる本が決まったので、借りる場所に向かった。
その時、ある一人の男の子が目に映った。
あれって、渕くんだっけ?おとなしくて、いつも図書室でノートに絵を描いている人。
ほんとに絵が好きなんだなと思った。
帰り道。
「ねえ、七瀬。今日も図書室に渕くんいた」
「うん。あの子、ほんとに絵好きだよね。あと、あの子、性格めちゃくちゃ良いよ。この前、電車乗ってたとき、おばあさんに席譲ってたし」
「へえー。いい人なんだ」
渕くんを見る目が変わった。
「しかも、積極的に河川敷の清掃ボランティアに参加してるんだって。誰かから聞いた」
「すごいね」
かなり見る目が変わった。
その時、私の心の中の何かが変わり始めていた。
渕くんは夢に出てきた。
私と図書室でしゃべってる夢。
昨日の七瀬の話の中の彼の印象が強すぎたのかもしれない。
授業中も、彼のことを考えずにはいられなかった。
もしかして、私、恋してるのかな?
「……きもと!おい、秋元!」
先生の声で我に返った。
「はい」
「お前どこ見てるんだ。問3の答えは何だと聞いてるだろ」
私はすぐに問題文を見た。
うーん。わからん。
……。
先生が深くため息をついて、
「次、七瀬」
七瀬を指名した。
「ルート2です」
「正解だ」
すごいな。七瀬。
「次の本、これでいいや」
私たちは、七瀬が昨日借りた本に飽きたので、違う本を借りるために今日も図書室に来た。
例の人は今日もいた。
気になっていた私はちょくちょく彼のことを見ていた。
「あと一冊何にしよ……って、聞いてる?」
「あっ、ごめん。七瀬」
「また渕くんのこと見てる。授業中もずっと渕くんのこと見てたでしょ。もしかして、好きなの?」
「い、いや、そんなことないよ」
バレちゃった。七瀬の目は鋭いなぁ。
「しゃべってきなよ。私、先帰ってるね」
彼女は先に帰った。
七瀬が話すチャンスをくれた。このチャンスを無駄にはできない。
私は勇気を出して彼のところに向かった。
「渕くん」
私が話しかけると、彼はビクッとなった。
びっくりさせちゃったかな?
さりげなく、絵を見てみた。
それは、今人気のアニメのキャラクターだった。うまく描かれてある。確か、このキャラクターってたぶん……。
「モカちゃんだっけ?」
聞くと、彼は答えた。
「そうだべ。おいら、モカのことだいすーきなんだぁ」
話し方の癖がすごい。
「可愛いね」
「そうだーよ。可愛くて声も良くて元気いっぱいでだいすーきなんだぁ」
「点数をつけるとしたら?」
「もーちろん、100点満点だぁ」
そりゃそうだよね。大好きなキャラクターだったら100点つけるよね。
そこで気になった。
私は何点なんだろう。点数次第では彼と付き合えるかもしれない。
思い切って聞いてみた。
「私は?」
「ブハッ」
え?今、笑ったよね?
「30点であーるよぉ」
ズコーッ。私、そんな評価低いのか。
「採点厳しいね」
「採点はきーびしくしないとダメだぁよぉ」
なんとなく掛け時計を見ると、遅い時間帯になっていた。
「あっ、私、そろそろ帰らないと。じゃあね」
「うん。さよならでーす」
私の恋は片思いに終わったのであった。
恋愛系でした。