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一
私が幼稚園の年長だった冬のある日、父と母が別れた。春が近づく頃、母は私を連れて実家のある自然が多い町に引っ越した。母の実家には兄夫婦が祖父母と暮らしていて、私と母は実家近くのアパートに身を置いた。母と母の実家は仲が悪いのか、私が母の実家に預けられることはなかった。母は私を一人アパートに置いて働きに行っていた。
「さーちゃん、遊ぼうか」
私と遊んでくれるのは、まーくんというアパートの隣に住むお兄ちゃんだった。小学校に通うまーくんは学校が終わるといつも一緒に遊んでくれた。
私が小学校に入学し、まーくんは最高学年六年生になっていた。まーくんと学校に通うのは楽しかった。下校時間が違うのがとても嫌だったけど、アパートの玄関でまーくんをいつも待っていた。
「おかえり、まーくん!」
まーくんにそう言うのが好きだった。
「ただいま、さーちゃん
おかえり、さーちゃん」
「ただいま、まーくん」
私がそう言うとまーくんはいつもやさしく頭を撫でてくれる。それがとても嬉しい。
まーくんがランドセルを置くと二人で遊びに行った。
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