第12話-2 罪罰Ⅱ
9/19 11時 4章 第5話-1 聖森 へ一部加筆を加えています。読み返す程ではありませんが、クロヴィスの名をレオカディオが口にします。
王国からの度重なる降伏勧告にも、淀んだ瞳の帝国兵は不気味なほど静かに死の進軍をしてくる。戦争の趨勢は明らかだ。
その様子に王国軍にも混乱が見える。納得できる理由の見えない落ち着かない不安だ。
帝国軍の最奥に設営されている豪奢な陣の男が口を開く。
「――飽きた。もうそろそろ仕上げるか? 力も上がったしね」
副官も報告する。
「クロヴィス将軍閣下。王国軍より再三降伏勧告が届いております。軍の損耗は四割を超え撤退も視野に入れるべき頃合いかと……」
「くっ、くく。降伏ね。帝国は交渉の席に着かない。王国は兵をどうするのかな? 鉱山で使い潰すのかな? それに撤退ね。王国軍は背を向けた兵を見逃してくれるほど甘ちゃんなのかな? どう思う」
何の目標もない今回の侵攻は引くなら今しかない。少なくともこの瞬間ならば半分以上の兵を帝国へと連れて戻れる。
「今が決断の最後の機会かと。具申致します」
副官がそう答えた瞬間。鋭く光が煌めいた。
「それは俺様の考えとは違うなぁ」
クロヴィスの手には巨大なショーテル。鎌を思わせる半円型の剣だ。
副官は首を落とされてその場に倒れる。
「おーい! 誰か後片付け! 早くしろよ!」
楽しそうにシルバーブロンドをかき上げる。
「――女にも飢えた。そろそろ仕掛けようかな」
散歩にでも出かけるようにクロヴィスは軽やかに陣幕を後にする。
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前線で指揮を執るテオドルスの下にその報告が届く。
「――後方の陣に敵襲? それで、将軍は?」
それを見越して兵を配置していた策に頷きながら、備えを使うはめになった事に顔を曇らせる。
「今のところ将軍閣下は無事です。ですが、敵兵は単騎で味方を蹴散らしておりテオドルス様を名指しで叫んでおります」
少し思案しながら、右腕でもある妻のマリーヌへと問う。この奇妙な戦争については何度も議論を重ねていた。
「ただの自棄ならよいが、どう思う? マリーヌ」
「備えるべきかと。戦局を変え得る存在がいる以上。その可能性は捨てきれません。この場は部下に任せて、変局の場に向かうのが最適です」
その言葉に大きく頷き。テオドルスは指揮を部下に任せて将軍の下へ急いだ。
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血煙をまき散らし進む男を止められる者はいない。振るわれるのは巨大なショーテル。楯を構えた相手を突き殺すのに特化した剣だ。
「いぃっ、ひぃ、ひぃ。丁度いい強さの獲物が沢山だ。しっかりと刈り取ってやるから俺の踏み台になってくれ。――」
「――王国の大公将軍は小娘のように逃げ隠れるだけか? 辺境最強のテオドルスは何処だ。相手してやるよ!」
男が殺した精鋭の兵が三〇〇人を超えた頃。その場にテオドルスとマリーヌが到着する。
死屍累々のその場でも表情を変えず泰然と名を名乗る。
「我こそはテオドルス。私の相手をしてくれるのか?」




