表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/219

第4話-3  経年Ⅲ

 少年をビビらせるといけないので、俺達の食事の後にトゥエアルはいつもの処へ入ってもらった。


 今にも逃げ出しそうな程警戒していた少年は(ぬる)()ましたスープと服を出してやると危害は加えられないと理解したのか大人しくなった。


 孤児院のチビ共に服を寄付している俺はあらゆるサイズを保有している。


 少年は落ち着くとベッドに戻り気を失うように眠りについた。寝息さえ聞こえない程で、心配になり、何度か生存を確認しにいった。


 翌朝用意したのはミルクたっぷりの甘いフレンチトースト。どちらかというとパン粥に近い代物だ。それを食べきれなくなるまで食べさせた。


 まるであの日の邂逅の再現だね。自慢の(まじな)いは発動中だ。


 聞き取りの結果。少年は言葉がまったく話せないわけでも無く、だが片言だけだった。


 ぶたないで。わかった。できる。などだ。殺伐としているね。それに自分個人を認識する名前を理解していなかった。


 自分の事を『グィオァー』と名乗っている。発音が怪しくて初めは分からなかったが、それは共通語で『検体』を意味する単語だ。


 一〇歳程度の年齢で言葉を知らないという異常、当然、文字も理解していない。それが、何を示すかというと、今まで会話をしてこなかったという事だろう。


 少年の身に何があったのかは分からないが、取り敢えず街に連れ帰って教会で名前の確認からだな。後はおいおい教育をしてゆけばいいだろう。


 林の中の起動性を重視して俺はモトクロスバイク型ゴーレムを取り出し帰路についた。


 念のため背負い紐で少年は固定する。初めはモゾモゾしていた少年もやがて慣れたのか楽し気に歓声を上げた。


 そうだ。子供には笑顔が一番似合う。それを守る決意をして俺は教会へと向かった。


 教会の司祭にお布施を払い。職業診断をお願いする。


 少年の躰が啓示の光を放つと司祭は訝し気に眉を顰めた。


 渡された豪華な厚紙にはこう書いてあった。


 名前:検体(ロー)0126843

 年齢:一二歳



 そして、少年の職業は――――。


 俺はそれに深い(えにし)を感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ