表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/219

第1話-2  秘密

 この世界で俺が始まった場所を辿っていたら、いつの間にか旅立ちの季節になっていた。何か知らんがエステラはどこのギルドでも大人気だ。


 連れの俺は何故か睨まれることが多い。面倒くさいので俺だけは、ギルドに必要最低限しか顔をださないようにしている。


 真面目なエステラは世話になったギルドに律儀に挨拶をしながら、俺の拠点の都市を目指している。その時は悪いが別行動だ。


 俺だけならテントでも良いが、クラーラもいるし女性には必要なものもあるだろうと、なるべく都市があれば泊まるようにしている。口には出さないが紳士の嗜みだぞ。


 今日も今日とて宿に引っ込んでいたらギルドから呼び出しがあった。エステラだけじゃなく俺もらしい。


 そう言えばこのギルドにはお使いで手紙を届けたっけ。その時にギルド長とも顔を合せた。


 トゥエアルとクラーラは界域異空(エスパシオ)でお留守番だ。トゥエアルはまだ子供だが、体は大型犬位に育った。遊びたい盛りなので全力で走り回るか寝るか食べるかしている。


 正直面倒だが、無視する程でもないので、エステラと連れ立ってギルドに顔をだした。


「ご足労ありがとうございます。エステラ様。ノア様。――ご案内致します」


 ひっつめ髪の綺麗なお姉さんに三階へと案内される。


 白髪の老齢の女性がギルド長だ。


「エステラ。わざわざすまないね。――ノアの坊主。あんたは都市に寄ったらギルドに顔を出しな! 何だいその面倒くさそうな(つら)は! このティラナータのギルドにも挨拶せず通り過ぎるつもりだっただろ。まったく。礼儀がなってないね」


「――で用とは?」


 最短ルートを選択したら、うちのばーさまを彷彿とさせる鋭い眼光で睨まれた。


「――まったく。そういうところがそっくりだよ。エイルミィのユストゥスの処にも顔をだしな。分かったね?」


 エイルミィが何処か分からんが処世術で応える。帰りのルート上になければ無視すればいいか。


「前向きに検討します」


「決定事項だよ。いいかい? それとここのダンジョンを攻略していっておくれ。そうさね。二〇階層までで良かろうか。エステラもね。もしパーティを組むなら斡旋もするよ」


 面倒だな。拠点のダンジョンより弱いここに魅力を感じない。


「断った場合の罰則はありますか?」


「まったく。罰則はないがやっておくれ。そうせね。ズラトロクの金のツノをギルドに収めてくれれば座りがいいね。分かったね? 坊主? エステラ。坊主を頼んだよ。紐付けてでも連れて行っておくれ」


「――はい。分かりました。ね。ノア」


 真面目なエステラは陥落か。こういう強制には俺の天邪鬼心がザワザワするんだよね。拠点のギルド長の耳障りなでかい声の所為かな? そのツノが売ってたら買うのでもいいな。


「一度持ちかえって検討しても?」


「……強制依頼に変更するよ? 階層も増やそうかね」


 おっとと。藪蛇だ。


「はい。謹んで承ります」


 わざとらしい長いため息が聞こえた。



§



 部屋を出て行ったノアとエステラを見送り、もう一度深いため息を吐く。


(まったく。世話を焼いてやっているというのに、面倒くさそうにして、絶界の坊主にそっくりだよ。……ユストィスの言う通り。マティアスの坊主が何かしでかしたのかね?)


 A級に上がるには複数のギルド長の推薦と共に複数のダンジョンでの実績が必要となる。


 ノルトライブのギルド長。マティアスの根回しでギルド長へ推薦依頼の手紙は届いている。後は対外的な実績が必要なのだ。


 エステラに関してはスタンピード制圧の実績によりそれすら必要ないのだが、対外。つまり貴族に公開する情報を整える必要がある。


(さて、何日で達成するかね。最高傑(ワンズ)作達は)


 彼女の思惑は覆される。面倒を嫌ったノアが本気を出した為に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ