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想い出はゴミ箱へ   作者: 比我 鏡太朗
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白昼夢



 初めに、この小説は風化します。この小説は作者の意のままに変化するかもしれせん。正直、吐き気を催す部分があると作者自身が感じてしまう部分があります。其れを読みたいと思うかは貴方次第です。


 夢を見た。夢が叶った夢だ。夢を叶えた夢だ。願い事をする夢だ。

 其処で、夢の住人であり、夢の戦士でもあり、旅人でもある私は、チャレンジャーでもあり、ギャンブラーでもあった。

 

 走り回った。私は、大きな商品が棚にびっしりと並んでいる通路を走り回った。黒いラジコンカーに乗りながら駆け巡った。

 私は、黒いレースカーに乗っていた。夢の途中、旅の途中、冒険の途中。

 幸運だッた。たまたま、黒いラジコンカーが私の前にあった。

他のものが必死で走り回っている中、私は、其れを見付けて、嬉々として其れを走らせた。孫悟空に為った気分だった。何でもござれ!

天下無敵は我の事!そんな気分だった。爽快だった。

 

 障害物など何のその、ところ狭しと賞品棚に並べられた通路を走り回った。途中で、ヘンテコな卵に出会した。

 カラフルな見た事の無い卵だった。何の卵か分からぬ其れに近付くと、卵が私に向かってぴょんぴょん跳ねてきた。私は、其れを素早くキャッチした。


 その卵をポケットにしまって我先にと走る者を、へとへとに為って歩く者を追い越していく。

 開かずの扉があった。大きな赤い扉だ。取ってなど在りはしないし、あっても届く筈がない。どうしたものか?


 すると、ポケットにしまったカラフルな卵が1人でにポケットから出て来たではないか?私は、ぼけっと其れを見守る。

 すると、卵はきらびやかな光を発しながら扉の中央に跳ねていった。扉が七色に光った。ガタンと音をさせて扉がゆっくりと開いていく。眩しい白い光を射し込みながら。


 私は、テーブルに女性と向かい合っていた。回りには、沢山の観客が遠巻きに観ている。テーブルには、様々な品物が置かれている。

 傍らに、付添人の男がいる。男は

 『どれにしますか?』そう聞いてくる。

 私は、さっきまで私が乗っていたラジコンカーを指し示す。

 『お次はどれにしますか?』そう聞いてくる。

 私は、あのカラフルな卵を指し示す。

 『最後はどれにしますか?』そう聞いてくる。

 私は、バンカラな羽子板を指し示す。其れは、外国の男がカラフルに描かれた和洋折衷の羽子板だった。

 恐らく、レースの途中で、羽子板でもして遊んでいたのだろう。

其れも、私のお気に入りだった。


 結局、景品はどれも旅の途中で手に入れたものだった。


 目の前の麗しきディーラーが、その深淵に富んだ瞳で私に問いかけてきた。彼女は、占い師のようでもあった。若い美貌の中に、深い静寂を纏っていた。


 『願い事は何にしますか?』そう聞いてきた。

私は、大きなテーブルを見渡す。色とりどりの物が並べられていた。

 家族が傍らに寄り添って、私を見守る。

 私の目の前に、スナック菓子が並んだ。新品の未開封のかっぱえびせんや色んな味のポテトチップス。その中に食べ掛けのスナック菓子がぽつぽつと袋を開けて置かれているのが目に止まった。


 『食べ掛けのスナック菓子』其れが私の欲したものだった。

家族が見守る中、私はそう答えた。

 だって、可哀想じゃないか。食べ掛けのままにしておくのは。

そう思った。

 そう答えてから、叶えなかった夢に想いを馳せた。

 お金持ちと答えていたら、今頃はどんなだっただろう。

 絶世の美女出なくとも、彼女と答えていたら、今頃はどんなだっただろう。

 そんな、華々しい未来が儚く夢想された。

そんな思いを抱きながら、目の前の女性の話しを呆然と聞いていると、女性の後ろの隅に何かが反射しているように見えた。

 それは、古びた商店の軒先にほっぽりだされた雑貨の中にあった。

小さなガラスのような、ガラスの破片のような物が、電柱か何かの柱を背に置いてあった。


 其所に、白い物が写った。其れは、大きな目のように思えた。

 その異様に大きい眼が1つ、斜めに居り、其れが何かを見詰めている。

 ヤバい!じわじわとした寒気がその正体に気付き、恐怖へと変わっていた。

 

 恐怖によって、私の夢の夢は幕を閉じた。冷や汗と共に。

私は、こう溢していた。

 『程ほどにしないとなぁ』

 私の追っかけが私を追い回す未来を想像して、私は私の才能を隠さねば成らないことを知った。


  作者の見た夢である。


 誰もいない世界でケースケは、確かに音がするのを聞いた。

また、風のいたずらか遠い記憶の音だったのか、幻聴でも聞こえ出したのか。久しぶりに感じる微かな期待に心がざわついた。

 そんな自分を出来るだけ落ち着かせるために、大きく深呼吸していつものようにパッと思い付いた言葉を口にしようとしたが、

『するめー』という声は、躊躇いがちの弱々しいこ声になってしまい、ケースケは自嘲気味に笑った。

 その乾いた自分の笑い声から離れるように音のありかを確かめるため、建物の間の路地に入り込んだ。コンクリートの壁に挟まれたその狭い路地は、店先のゴミ箱から今にも猫が飛び出して来そうな気がしなくもなく、何の店かは分からぬその扉からは、今にも人が急に出てきそうでもある。

 狭い路地に逃げ込みたくなるときがケースケにはある。

逃げ込むという表現があっているどうかは分からぬが、大通りを歩いていて、向こうから小さな子供を連れた年の変わらぬ女性が歩いてきた時、意識しすぎないよう気をつけながら彼女らをチラと見て、その生活感に圧倒され、果たして自分は何者なのだろうかと、彼女達に映る自分を想像するが、所詮は只の変人か他人などなのだろう。

 そんなとき、道の先に人通りの少ない路地などかあれば誘われるように救いを求めるように入ってしまう。世捨て人のようなそんな自分に嫌悪感を持ちながらも、田舎町の昔は華やいだのかも知れないスナックや飲み屋がポツポツと並んだ『なんとか横町』などの名前がついてそうな通りをケースケは、店の名前やビルの看板に書かれた名前から少しでも情報を得ようとするようにキョロキョロと歩いていた。

まだ日がくれる前だが、人は歩いていないようだ。市役所が近くにあり、駅からもさほど遠くなく、普段は人が歩いてるのを其れほど見掛けない表の長い商店街からそれたその場所は、どこにでもあるような、ありふれた場所で、この町の中でさえ、似た景色の場所はありそうである。

 ケースケは、表の大通りからあまり離れないよう意識しながら、狭い路地を歩いていく。途中に十字路があり、人がぶつからない程度にすれ違える程の道が右側にあり、お店の看板がちらほら出ている。

 大通りの安心感とは、違う安心感と視ようによっては白昼夢のような場所にいるんだなとケースケは思う。こういった道を好むケースケは、地元でも裏道を見付けては歩いた。

 子供の頃、母や大人達や、友達が教えてくれた道を普段は使っていたが、冒険心なのか恐怖心なのか知らない道に引き込まれるような物を感じた。初めて歩くその道を歩いているときは不安である。帰れるだろうか、どこに続いているのだろうかと。余りに其れが長く続くと泣きそうになった。でも、基本的には歩き続けていたと思う。途中で何度振り向こうが。そして、いつも通る道や、見覚えのある景色が顔を出すと、プハッと安心して喜んだのだ。逆にその感覚が短いとチェッと舌打ちをするような気分になった。

 ケースケは、右側の更に狭くなる路地へとは進まずに、そのまま真っ直ぐに左手に小さいビルなどが並んだその通りを抜けて、小川が流れている道を見つけて小川沿いに歩き出した。左手に小川が続いており、間間にビルや民家が石橋で繋ぐように建っている。静かで落ち着く場所であった。


 ケースケが、音のした細道へと入り、丁字路の突き当たりへと胸がドキドキするのを抑えながら進んで、丁字路の手前で、どちらからも見えないであろう位置で息を殺して己を落ち着かせた。

 先ずは右側からとケースケは、頭だけを路地の壁に手を当てて出した。そこには、突き当たりのお店の裏口と地面にタバコの吸殻やゴミが捨てられてるだけで何も無くて、では反対はと見てみるが何も無かった。ドッと汗をかいていた。早く家に帰り、風呂に入り眠りたい気分である。期待したばかりに、虚しい気分になっていた。

 踵を返して大通りに戻ろうとしたとき、壁に貼られているポスターが目に飛び込んできた。

  『お前は一人だ』

 ドキッとして、ケースケは後退り、顔を背けたくなったが、目だけを伏せて、目眩が落ち着くのを待った。やっと気持ちが落ち着いて来て、視線をポスターへと遣る。ケースケが先程目にしたと思った言葉は、そのポスターのどこにも無かった。安堵と落胆が入り交じった顔でケースケは、その路地を後にした。言い知れぬ寂しさが襲って来る予感がした。


 


自分の傷みに逃げた者が、弱き者の代弁者のように傲慢な価値観を正義の鉄槌のように振り下ろす。笑って歩み寄りながら、心の何処かで許せないと思いながら。


 

 

ケースケが玄関の戸を開けると、ムワンとした熱気が外に漏れてきた。あおいがまたダイエットに精を出して変なダイエット機具を購入したのは知っているが、今回はかなり激しいものみたいだ。

 どうせすぐ飽きるのだろうと思いながら、スーパーの袋から買ってきた食材を出して、簡単な食事を作る。慣れた手付きで昆布を沸騰するお湯から出して、味噌汁に味噌を溶き入れる。その間に納豆を大きめのお椀に移して糸を引かせる。ネギと豆腐を切り、黒胡椒を添える、おかずは、いつも通りの「どんじゃん焼き」という我が家というより、ケースケ特製のもやしとキャベツとピーマンと玉ねぎと豚肉をコチュジャンと麻婆春雨の元と調味料で誤魔化した豚肉の野菜炒めである。

 まだ、あおいと暮らす前は、食事はコンビニエンスストアやスーパーマーケットで買った弁当やインスタント食品で済ましていたが、さすがに妹と暮らすようになり、最初のうちはお互い別々に食事をしていたが、自分の妹がカップ麺やコンビニ弁当にがっつくのを見ていたら、何ともやり切れない思いになり、何だかんだでケースケが食事を作ることになった。

 『あおい、ご飯たいてないじゃんかよ』とケースケはあおいの居る部屋に向かって言うが、返事はない。大きい声を出すのが苦手なケースケは、扉をノックして、『入るぞー』と声を掛けて部屋に入ると、

物が散乱して、壁にはケースケの知らない国籍不明の職業不詳の5人が肩を抱き合って思い思いの笑顔を向ける一応男性グループらしきポスターが目に入り、和室の部屋とは思えなくなるような、畳に引いた絨毯や散らかる二段ベッド、全身を写す化粧鏡、化粧台、様々な服や小物の中に、黒光りするスピーカー、そしてTVに映る筋肉質だか、ムキムキというよりアスリートのような5人の男達が爽やかに筋トレしながら歌っている、シュールな映像が流れていた。

 やはり、体をダイナミックに動かすその動きは結構しんどいらしく、其の二つを何故組み合わせようと思ったのか分からないが、大分辛そうである。爽やかな歌詞というか応援歌のような歌のようだが、途中で息が漏れたり、変にしなやかな声になったり途絶えたりしている。極め付けは、其の格好で、各々カラーが割当てられているようだが、皆何処かしら露出している。

 TVに映る男達の動きに合わせあおいも激しく体を動かしている。

確かにちょっとポッチャリはしているが、まるでチアリーダーのような溌剌とした姿や、この部屋の情報量の多さに一瞬クラっと来てしまい、ケースケは何をしにこの部屋に来たのかを失念していた。

 思い出して、何度も『あおい』と呼ぶが、あおいは一向に返事をしなく、此方に気付く素振りを見せない。

 仕方なく、躊躇われたが体に触れて気付かせようとあおいの腕に手を伸ばして、不思議な感覚にとらわれた。空気に触れているような、水の中に手を入れたような感触で、『あおい』と呼ぶ声も『あおいん』と変な感じになり、本人に聞こえていたら『キモいんだよ』とぶっばされそうな声になり、冷やっとすると同時に、あれ、いつから夢を見ていたんだっけという白昼夢を見てる感覚になった。 

 確かに、あおいは其処にいる。相変わらず、主張の強い部屋の中で、どぎつい部屋着なのか衣装なのかを来て。

 ケースケがあおいに触れたと思ったその手に視線を向けると、あおいの健康そうな腕とケースケの手には、まだ若干距離があった。

 ケースケは、目で見ながらも手探りで物を探しているときのような感覚であおいの腕に近づく。あおいの肌に触れた。ほんの僅か数秒が長く感じ、その暖かい感触が、とても懐かしく感じて、嬉しくて泣きそうになった。

 あおいの手をグッと掴むと、あおいが此方に顔を向けて、驚いた表情をすぐに不機嫌な顔にして、『何、離して』とあおいが言うとケースケは、『ごめん』と申し訳なさそうに謝った。

 あおいは、半透明というよりほぼ透明と言っていい宇宙服のようなものを顔だけ出して身に纏っていて、 あおいの顔だけが何のフィルターも無く存在していた。ケースケは、その顔の表情が変化する様を看取れるように眺めて、普段見せない表情に不思議な物を見た気分になった。


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